表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
hana,s__失われた少女と選び続ける少年の物語――  作者: ぼぅちゃん
第二章 紫月花の非情

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/52

紫月花の非情――47

目の前には例の三人組。


「………花っ」


武道祭がハレを花と呼ぶ。


震える声。

縋るみたいな呼び方。


まぁ、この状況なら呼ぶよな。

レイは僅かに苛立ってる。

ハレは一瞬だけ、首を傾げた。


「またそれ〜?何回言えばわかるの?」


その言葉と同時にハレは刀を抜いた。


あーあ、終わった。


呆気なく、一人瞬殺。


そう思ったが……

武道祭は意外にも刃から逃れた。


「へぇ〜、反応マシなんだぁ」


そう笑いながらハレは柄に指を掛けて刀を回す。

まるで、どう遊ぶか考える子供の様に。

 

――ドガッ!!!


ハレの足が武道祭の腹に食い込み、吹っ飛ぶ。

それを追い掛けるハレ。


俺は見逃さなかった。


一瞬だけ、ハレはレイの表情を伺った。


レイは笑ってた。


その顔を見たハレは満面の笑みでレイに告げる。


「レイ〜!私、コレにする!」


さて、俺も片付けるか。




***

  


さっさと終わらせよう。

そう思ったんだけど……。


「……祭がっ」


目の前の桃崎円は、ビビり散らかしてた。

目の前に怪物が現れたような顔して、

ハレにやられてる武道祭を見て、

喚くわけでもなく、加勢するわけでもない。

立ってるのも、やっとって感じ。


「祭っ……!」


もうやっちゃっても良いかな?

俺なら、扉開かせるまでも無く殺れるけど。

でも、ただ殺してもレイに怒られるだけだしな……。


格下相手。

しかもビビって、もう終わりだとか思ってる様子。

ここからヨイショして、扉開かせるまで持ってかないといけない。


つーか、敵のメンケアまでやらせるとかどんだけだよ。

あー、マジでダルい。


勝ちゲーが、ただの作業と化した。


その瞬間――


女の空気が変わった。


深く息を吐いて、覚悟が決まった目。

背筋が伸びて、型を組む。


「へぇ~、やるじゃん。」


女が叫ぶ。


「——地獄門っ!!!!」


すると、地面からジワジワと這い出る黒い鉄の柱。

名前通り地獄の門にピッタリなソレ。


俺は一気に距離を詰める。


——ドスッ!!


「……は? 軽っ」


思った以上に飛んでった女。

生成されていた門は一気に崩壊した。


直ぐに俺はカウントを取り始める。


「なーにやってんの?邪魔すんなよ~」


声を掛ければ、女は俺を睨みあげた。


――ちゃんとデータ取ってよね?

リオに言われたことを思い出す。


「うちのお姫、機嫌悪くなると色々面倒なんだよねぇ?」


門の崩壊から、どれだけ生き延びれるか。

今後の研究の参考にしたいんだってさ。


吊り上がる口が、押さえきれない。

笑いが込み上げてくる。


ほんと、アイツって頭やべぇよな?

まぁ、でも。


「だからさ、ほら——」


俺もそこそこやべぇんだわ。


「俺とか、どう?」


***


「ハレ〜!!」


ハレに手を振ってはみるものの、

振り返してくることは無い。

一度も。

それだけ集中しているってことだ。


私はポテチを摘みながら、下の状況を眺めていた。


「てかハレ、祭って子、選んじゃったよ。当たり引いたね〜、流石うちのお姫!」


1人だけ何もしないで見学って言うのもつまんなくて、

誰に聞かせるわけでも無く言葉を発す。


――ただの処理。

負けるわけない相手。


現場の準備だけ整えて帰っても良かったんだけど、

ハレの戦いは見たいし、万が一のことも考えて屋上で観戦中。


「カイ、めっちゃテンション下がってる〜。

わかるよー、もう決着ついちゃったもんねー?」


あ、万が一って負けるって意味じゃないからね?

万が一、カイがデータ取り忘れた時の保険ってこと。


パリッと乾いた音が響く。


「円ちゃんだっけ?あれじゃあダメだよ〜。

今から扉開きますって、思いっきりアピールしてるじゃん。勿体無いね〜」


研究者として、門崩壊から死に至るまでの時間は重要。


そもそも、地獄門は私達霊対庁にとっては結構身近なもので、

霊核回収装置のハチマルは地獄門を応用して作っている。


霊力で変化させられる合金で作られた八角形の箱に、

特殊な素材が電池として組み込まれてる。

設置してボタンを押せば、投射される八角形。

回収完了までは絶対に跨いではいけない、死の枠。

その枠こそが、地獄門と同じ役割を果たしてるってこと。


「はぁ……でも壊れていくのって、なんか綺麗だよねぇ」


いち研究者として。

隊員の危険を少しでも減らしたい身として。

こんな都合の良い実験は、絶対見逃すわけにはいかない。



***

 

……綺麗だ。


思考が一瞬、止まる。

本来なら、視線を外すべき場面。


——だが、それが出来ない。


理解している。

理解しているはずなのに。

視線が、どうしても逸れない。


「……ああ」


やはり、ハレは美しい。


――踊っている。


いや、違う。

駆け回っていると言うほうが正しい。

 

風を裂くように舞う刃。

無駄のない動き。

迷いのない踏み込みも。


脳裏に情景が浮かび上がり、

軽快な三拍子が、脳内で再生された。


……成程。


ほんの一瞬だけ、視線を巡らせる。


倒れかけている男。

崩壊しかけた術。

揺らぐ空気の流れ。


どれも不完全。


精度は悪くない。

だが、決定的に足りていない。


「……惜しいな」


結論に至ったその時。


「お前……おかしいんじゃないか?」


目の前で立ち尽くす、竹中集が俺に問い掛けた。


思わず笑みが溢れる。


この状況でハレに見惚れていると言うことは、

傍から見れば間違っている。


「こんな状況で笑ってられるやつなんて、普通いねぇだろ!」


敵に指摘される。

だが、そこまで不快でもない。


そろそろ切り替えるか。

まだ回さなければいけない仕事が溜まっている。


「そうか? これが俺の平常運転だが」


俺は一歩、踏み出す。


距離も、呼吸も、間合いも。


全て、既に把握している。


君は、よく考えている。

 

だが、


わずかに、口元が緩んだ。


――俺には、届かない。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ