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hana,s__失われた少女と選び続ける少年の物語――  作者: ぼぅちゃん
第二章 紫月花の非情

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紫月花の非情――33

カチカチと響くのはいつもと同じ、俺のキューブの音だった。

でも、今日は違った。


「おかしい……」


第2エリアの核を順番に破壊してた俺は、

4つ目の核の破壊に取り掛かった所で、ようやく違和感に気づいた。

いつもなら、キューブの回転と共に頭を回して核を解く。

それが俺のやり方。


核独自の複雑な構造体から法則性を探って、理論立て、演算――

そして、核の構造自体をショートさせる。

処理する度に色んな方程式の発見があって、未知の構造体に出会えるのが楽しくて仕方ないんだけど………


今日は最悪――

たったさっきまで処理した核が全部同じ構造をしている。

しかも前に解いたやつ。


理論はもう立ててあるし、答えが完全に同じ演算をずっと繰り返すのは、

方程式オタクの俺も全然楽しくなくて、ただの作業と同じだった。

まぁ、仕事なんだから仕方ないんだけどさ、

ここまで同じってことは、確実に裏がある。


「なーんか、嫌な感じするなぁ〜」



***



「よしっ、ベストタイム更新〜!」


結局、その後も処理した核の構造は全部同じで、

つまんなくなった俺はタイムアタックゲームをしながら処理して回った。

あらかた片付け終えた所で、俺はレイに電話を掛けた。


『なんだ』


電話の向こうから聞こえてくるのはいつもと変わらない声。


「ちょっと、気になる事があってさぁ、今どこ?」


『本庁だ』


「へぇ〜?もう終わった感じ?」


『当たり前だ。手が空いてるなら第3に回れ』


第2エリアを1人で片付けた俺に他のエリアに行けとか言うの!?


今日のMVP俺だよね!?


人使い荒くない!?


まぁ、いつものことだけどね?


「いや、それは良いんだけどね?この霊災おかしくない?なんか仕組まれてるっていうかさぁー」


『分かってる。もう犯人も特定して、今身柄の移送中だ』


「………。オーケー。じゃぁ、後は片付けだけってことね」


『ああ、早く終わらせてこい』


「了解」


電話を切って俺は走り出した。


本当にレイは全く読めない。

俺が第2の処理をしてる間に、あいつは第1を1人で片付けて、

犯人見つけて、現場に指示出しながら、

関係各所と連絡取り合って、報道規制掛けて――


ほんと、頭の中、高性能CPUでも突っ込んでんのか?

いや、外付けしないと収まり切らないレベルだ……。


なんにせよ、レイの頭の中はおかしい。

超怖いし、人使い荒いし、ハレに溺愛してて、色々とぶっ飛んでる。

でも、強くて、ちょっと容赦無いけど、結構誠実な奴。


真面目に働いて、ハレに手を出さなければ基本は無害。

それがうちの激重王子、現場対策部門総監のレイ。



***



第3エリアに入ると、状況はまぁまぁ最悪だった。

核の回収はいいとこ終わってはいたものの、代償はデカかった。


街中のそこら中に遺体が転がってる。

一般人も、うちの隊員達も。

核エネルギーそのものに当てられたり、核の爆発の衝撃だったり、

最悪なのは、避難中に人の波に押しつぶされる圧迫死パターンだ。


「お兄ちゃんっ、ママがっ、助けてっ………」


庁の制服を着ている俺に助けを求める子供。

隣には、母親であろう人物が息絶えてる。


こういうデカイ霊災の時は大抵、こういう場面に出くわす。

ちゃんと指示通りに逃げてればこうにはならないんだけど、

そう上手くはいかない。

どんなに訓練を積んで強くなっても、

研究開発が進んで安全が保たれたとしても、

人の恐怖心をコントロールするのは本当に難しい。


俺は無線を飛ばした。

「第3エリア区画A、要救助の子供が1名――C級以下、対応頼む。」


「了解ッ!すぐ向かいます!」


応答はすぐに返ってくる。


俺はしゃがみ込んで、子供の頭を撫でた。

「もうすぐ別の隊員が来るから、ちょっと待てるか?」


「………ママっ、は?」


「…………っ」


言葉が詰まる。


もう死んでる。

だからこそ、大丈夫なんて簡単には言えない。


けど、事実を落ち着いて伝える程、俺も暇じゃない。

だから、あえて、ずらす――


「もし、君が一人になったとしても、霊対庁はずっと君の味方だよ」


守るとは言えない。

大丈夫だとも言えない。

それでも見捨てはしないと言い切る。


「じゃぁ、俺行くわ。すぐに別の隊員が来て助けてくれるから」


子供はぽかんとして、黙り込んだ。

俺はそのまま背を向けて歩き出した。


あ、勘違いすんなよ?


俺は別に子供に優しいわけじゃない。

好きか嫌いかと聞かれれば、間違いなく嫌いだ。

でも、霊対庁の規則で決まってるわけ。


『子供には優しく、誠実に。』


これからの未来。

人口を保っていかなきゃいけないこの国にとって、


彼等は――


「財産なんだってさ………」



***


 

「カイさんッ!!こちらですッ!!」


それは第3エリア区画Dに入った時だった。


B級の隊員が俺を見るなり走って来て、なにかと思えば、

C級の小隊一つが、Aランクの霊災処理の際に人間と戦ったらしい。

しかもその人間は、霊災を止める隊員の妨害――

隊員数名が負傷したとのことだった。


現場に到着すると、そこには何もなかった。


霊災は勿論。

その人物達も、

処理後特有の残り香もない。


「間違いないな………」


霊災を神の怒りだとか言って、信仰する人間は一定数存在する。

特務中の霊対庁への妨害は立派な公務執行妨害になる。

こういう場合、大体は警察に回して取り締まるのが一般的だが、

今回は違った。


負傷した隊員達は揃って、

俺等、S級と同じタイプだったと主張している。


つまり、霊力を操れる存在。


民間の協力者にも俺達と同じ毛並みの奴はいる。

でも、そいつらは霊対庁の妨害=反逆だってことは十分に理解してる。


つまり、未登録の処理者。

しかも、霊災を信仰するタイプ………。


頭に浮かんだのは、少し前に会った――

未登録の処理者3人組。


俺等と同年代で、もしかしたらって思ってはいたけどさ………。


俺は僅かに空を睨んだ。


「残念だな」








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