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32 この世界の事(5)

「さっきの話にアレスが出て来なかったけど、アレスには得意な魔法は無いのか?」


「アレスさんには、得意な魔法と言うものはありませんが、苦手な魔法も無いです」


 ナターシャがアレスの代わりに答えた。

 その表情は、何処か誇らし気であった。


「所謂、オールラウンダーってやつだな」


 勇者でイケメンでオールラウンダーって、神はイケメンにはとことん甘いらしい。

 そう言う奴が居るのなら、魔法の1つ位こっちに分けて貰いたいものだ。


「オールラウンダー? と言うのは良く分かりませんが、そうだと思います」


 首を傾げながら、ナターシャが答えた。


(今の所作は、ヤバいって……)


 傍から見ると小聡明い所作かもしれないが、聖女の肩書がある為かその様には全く見えなかった。

 油断すると心を持って行かれそうになる。


 深呼吸して心を落ち着かせる。

 落ち着いたところで、話を戻そう。


「洞窟の中を確認してくれ。

 皆が寝られろうだったら、全員で使おう。

 無理そうだったら女性陣は中で寝て、男は洞窟の前で寝ようか」


「良いよ、そうしようか」


「ありがとうございます」

「ありがとうな」


 アレスに続いて、ナターシャ、リーナに感謝の言葉を送られた。


「これ位、大したことないって。

 それで、どうだ?」


「そうだね……全員で寝られない事も、無いとは思うよ」


 アレスの目算では、全員が洞窟の中で寝られると判断したようだ。


 良かった。

 これで夜露に身体を濡らされる事なく、朝を迎えられるだろう。


「これは何でしょうか? この様な物、今まで見たことが無いのですが……」


 ナターシャが、インナーテントを指していた。


「これはテントと言って、持ち運べる小さな部屋みたいなものだな。

 これを持って行って、この中に入って寝るんだ」


「どの様にして、中に入るのでしょうか?」


「ここをこうすると、入り口が開くんだ」


 ファスナーを引き、テントを開いた。


「へぇ、小さいけどちゃんと部屋になってるんだな」

「小さくて可愛いです」


「そうだ、皆洞窟で寝るのなら、女性陣はこの中で寝た方が良いだろ。

 2人位なら十分に寝られると思うから」


「宜しいのですか?」


「俺も、その方が気分的には楽だから。

 俺だけその中に入って寝るって言うのも、寝覚めが悪いしな」


「何から何まで、ありがとうございます」

「ありがたく、使わせてもらうぜ」


「気にしなくて良いよ」


 ここまで感謝されると、悪い気はしない。


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