31 この世界の事(4)
「さぁ着いたぞ、此処が今住処にしている洞窟だ。
一応だけど出入り口も作ってあるから、外で寝るよりは暖かいと思う」
俺は、入り口に立て掛けてある板を横へ避けた。
「中は暗いから、今明るくするよ」
近くに置いてあったLEDライトを取りに行こうとした所
「火を熾さなくても、大丈夫ですよ」
ナターシャが指を立てると、その先に明るい光が灯った。
「それも魔法なのか?」
「えぇ、そうですよ」
ナターシャが、微笑みながら言った。
「魔法って言うのは便利なものだな」
「そうですね。
便利ではあるのですが、何時でも使えると言う訳ではありません」
「何か制限があるのか?」
「体内にある魔力が尽きると、魔法を使えなくなります。
魔力が無くなってしまうと、私は何もできなくなります」
「それなら、今すぐ魔法を止めた方が良いんじゃないか?」
「これ位の魔力消費なら、明日の朝までだって問題ありませんよ。
それに、魔力は大人しくしていれば自然に回復します。
これ位ならば、自然に回復する量の方が多いくらいです」
「それなら良いのだけど、安心したよ」
「ご心配、お掛けいたしました」
「いや、問題無いのなら良いんだ。
でも、今の口調だと他の魔法も使えるって事なんだろ?」
「えぇ、私は回復魔法と聖魔法を得意としております」
聖女だから聖魔法が得意なのか、聖魔法が得意だから聖女に選ばれたのか分からない。
だけど、ナターシャの微笑みには聖なる力が宿っている様に感じるので、聖女の肩書がぴったり合っている様に思う。
「他の皆にも得意な魔法ってあるんだよな? さっきの話だと」
魔法を使えない者は居ないって言っていた。
それならば、得意な魔法の1つや2つあるだろう。
「そうだね、リーナが強化魔法全般、レオンが探索魔法全般、ザガンがストレージって所だね」
ザガンはストレージだけらしいが、他の2人は全般って言っていた。
全般ってことは、1つや2つと言う話ではない、それに属する魔法全部って事だ。
どれだけ類する魔法があるのか分からないが、少ない数ではないと言うのは間違いないだろう。
「ザガンは1つだけなのか?」
「だけど、その1つが凄いんだ。
他のストレージ使いの、何倍も容量があるんだ」
勇者が誇らし気にザガンの事を讃えた。
勇者や聖女だって人間だ。
食べなければ飢えるし、水分だって生きていく上では必要になる。
魔王を倒しに行くと言っても、日帰りできる様なところに魔王が居る訳がない。
そうなると、相当量の武器や食料が必要になる。
ポーターであるため戦闘には参加しないだろうザガンの影は薄いかもしれないが、ザガンの存在無くして魔王を倒すことは不可能だろう。
「ザガンには、沢山の剣を預けてあるからね。
戦闘中には直ぐに代わりの剣が必要になるから、普通のポーターだったら入りきらないんだよ」
「そう思っているのならば、すぐに手を出さないようにしてくれ。
こっちは、お前さんと違って繊細に出来ているのだからな」
「繊細って、どの面下げて言ってるんだよ」
「何だ? お前さんの剣を、今ここで全部出してしまおうか?」
「そうなったら、誰があんたを守るって言うんだい?」
「止めるっすよ、全く……」
2人のやり取りをレオンが止め、勇者と聖女の2人が微笑みながら見ている。
うん、良いパーティーだと思う。




