過去の過ちと約束
「本当にターミナルに入ってもいいの?」
「はい、もちろんでございます。エレン殿下だけに特別な許可をいただきました。ただし、このことは他言無用、誰かに知られた時点で許可は取り消されますから、こっそりと城を抜け出して、飛翔の魔法を使い塀を乗り越えて入ってください。もう一度言います。誰にも言ってはいけませんよ」
「うん、分かった。ありがとう、ボールドウィン侯爵!」
幼き日のエレンにボールドウィン侯爵はターミナルに入る方法を伝えた。
少し考えればおかしいことに気付けただろう。
けれどエレンは、決して立ち入ることの許されないターミナルに入れること、特別な許可が自分にだけ下りたことに浮かれ、ボールドウィン侯爵の言葉を疑うことはなかった。
もちろんそのような方法でターミナルに立ち入ることは決して許されない。不法侵入の罪で捕らえられても文句は言えない方法だ。
しかしこの時のボールドウィン侯爵にとってはこの方法が最善だった。ガルシア国側の者に気付かれずに任務を遂行するために。
ーー飛翔の魔法を使える者を連れて来い
それは突然目の前に現れた男がボールドウィン侯爵に命じたものだった。
ボールドウィン侯爵家は代々神聖国との国交を担ってきた家門。
当代のボールドウィン侯爵が国交を任されてからは、ネリネが国交の窓口だった。
ネリネは魅了の魔法を使うことができない。それに愛嬌もあって友好的だった。だからなのか、油断が生まれてしまったのかもしれない。
ある日突然、国交の場にネリネが姿を見せなくなり、代わりに手紙が届けられた。
神聖国王が病に倒れたので、落ち着くまでは文書での国交を願いたい、と。
その手紙を信じるしかなかった。例え嘘だと分かっていたとしても、神聖国との唯一の国交の手段を途絶えさせるわけにはいかなかったから。
そしてその日は数年ぶりにネリネが直接会って対応すると伝えられた。おかしいと思う間もなく、男が目の前に姿を現した。
その瞬間から魅了の魔法が使われていたのだ。
心配ない、と思ったのはほんの一瞬で、その異変に気付いた時にはすでに手遅れだった。
遥か昔から魅了の魔法を無力化してきたボールドウィン侯爵家に伝わる無力化の魔法石。不運にも、残された力はごく僅かしかなかった。
そして不運は重なる。あろうことかその男は魔力増幅薬を服用し魅了の魔法を使ってきたのだ。
増幅した魔力で繰り出された魅了の魔法の力は強大で、抗い切れず無力化の魔法石の効力が潰えてしまった。
不幸中の幸いは、セレスティアが熱を出し、療養するためにこの時の国交の場に同伴していなかったこと。
もしもその場にセレスティアがいたら、間違いなくそのまま神聖国に連れてかれてしまっただろう。
そして、魅了の魔法にかかったボールドウィン侯爵は、神聖国王オークリーの命令に忠実に従ってしまう。
飛翔の魔法が使える者、つまり王家の者で、ターミナルに連れ出せそうな者ーーエレンに、ボールドウィン侯爵は声を掛けてしまった。
そして……
「あれ? アイツ、こんな時間に何してんだ?」
飛翔の魔法で王城を抜け出すエレンを偶然目にしたイアンは胸騒ぎを覚える。
「……まさかな」
けれどその不安は拭えず、こっそりとエレンの後をつけることにした。
不安は的中し、エレンはターミナルの塀を乗り越えて中へと入って行った。
「ボールドウィン侯爵、お待たせ!」
「エレン殿下。よくお越しくださいました。誰にも見られてはいませんよね?」
「もちろんだよ!」
「間もなく準備が整いますので、もう少々お待ちください」
「うん! 分かった。できるだけ早くしてね」
何も知らないで心躍らせるエレン。そんな二人の前にその人は現れた。
「どうしてお前がここに!?」
ボールドウィン侯爵はその女性を見て驚き声を荒げた。その女性とは、イアンから話を聞きつけたアリシアだった。
王族であるアリシアを見て「お前」と呼んできたことで、アリシアはボールドウィン侯爵が魅了の魔法にかけられている事を確信する。
一方、アリシアに向かって剣を振りあげたボールドウィン侯爵の姿を目にしたエレンは、得体の知れない恐怖に襲われる。
僕はとんでもないことをしてしまったのではないか、と。
エレンの知る「いつも優しくて王家に忠実なボールドウィン侯爵」の姿はそこにはなかった。そうさせた“誰か”が、このターミナルに存在するのだと。
アリシアはその剣を躱し、すぐさまボールドウィン侯爵に無力化の魔法石を使う。
無力化の魔法石は辺境の地に身を隠すパパが用意してくれていたものだった。
魅了の魔法が無力化され、正気を取り戻したボールドウィン侯爵は一瞬にして青褪めた。自分のしてしまったことは、記憶にしっかりと残っていたから。
「アリシア王女殿下に何て無礼な事を……エレン殿下をこのような危険な目に合わせるなんて……誠に申し訳ありません。死んで償えるとは思いませんが、どうか私の命だけでお許しください」
「いえ、謝罪よりも先に覚えている限りのことを教えなさい。誰に命じられたの?」
「現神聖国王のオークリー陛下です。無力化の魔法石を持っているから大丈夫だと慢心して、アリシア王女の忠言を無下にしなければ此度のことは回避できたはず。現に王女殿下は無力化の魔法石を所持している。全て私の不徳の致すところ。誠に申し訳ありません」
ボールドウィン侯爵自身、代々伝わる無力化の魔法石は唯一無二の自慢の品だった。
無力化の魔法使いはこの世にはもういないと言われている。ゆえに新しく無力化の魔法石を作り出すことは不可能だからだ。
だからこそ、表向きには鑑定の魔法が使えることを理由に、その裏では、無力化の魔法石を持ち神聖国の魅了の魔法に抗うことができるボールドウィン侯爵家だけが、国交を担うことができていたのだ。
そのボールドウィン侯爵に、アリシアは無力化の魔法石を新たに持つことを提案していた。
ボールドウィン侯爵はそれは不可能なことだと信じて疑わない。何も知らない王女の戯言と一蹴し、王家のはみ出し者である王女の提案に耳を貸すことはなかった。
「私が無理矢理にでも持たせれば良かったことだわ」
だから責めるつもりはない。不運だっただけ、とアリシアは言う。
アリシアも無力化の魔法が使えるパパの存在を知られることは避けたかった。だから無理に無力化の魔法石を渡すことはしなかったのだから。
「それで、どのような命令を受けたの?」
「飛翔の魔法が使える者を連れて来いと……それが無理ならお前の娘を差し出せと……」
オークリーは万が一の時のことを考え、代替え案を出していたのだ。鑑定の魔法が使えるセレスティアを妃候補として差し出すようにと。
セレスティアは幼いながらも絶世の美少女だ。ターミナルで遠目から見かけただけのセレスティアに、オークリーは強く惹かれていたのだ。今は幼くとも将来有望だと。
「そんなの絶対にダメだ! それなら俺が行く! 俺も飛翔の魔法が使えるからいいだろっ! だから今回のことはなかったことにしよう。ティアに悲しい思いをさせたくないから!!」
反対の声を上げたのはイアンだった。
イアンの存在を知る者は王城でも限られている。もしもガルシア国からイアンがいなくなったとしても、初めからいなかったことにすればいいだけだと、イアンは主張した。
それを聞いたアリシアの心が痛む。いつか絶対にこの世界中の者たちにイアンという存在を認めさせたいと強く思った。
しかし、今はまだ空間魔法も使えるイアンの存在を知られるわけにはいかなかった。特に神聖国側に。
「イアン、あなたは残りなさい。私が行くわ」
「母様!?」
「あら? 私だって飛翔の魔法が使えるもの」
一番効率の良い国交の手段は政略結婚よ、とアリシアは茶化すように笑う。
「だからって、母様を一人で行かせるわけにはいかないだろ? 本当に結婚ってなったらどうするんだよ!? やっぱり俺も行くよ。子連れの未亡人ならそう簡単に手を出そうとは思わないだろ?」
「子連れの未亡人って、勝手にダーリンを殺さないでよ!! それにダーリンの情報だと、魅了の魔法を使っておイタはするみたいだけど、結婚には夢見てるらしいから……あら? 結婚に夢見てるのなら未亡人という設定はいいアイデアかもしれないわね」
「そうだろ! だから俺も一緒に行く!!」
けれど、アリシアは頷くことはなかった。
「イアン、あなたはここに残ってやるべきことがあるわ」
「それって、王になることか?」
「もちろんそうなってくれたら嬉しいわ。でも一番は、あなたにも素敵な恋を成就させてほしいの。神聖国に行ってしまったら簡単にはガルシア国に戻って来られない。もしかしたら二度とティアちゃんに会えなくなるかもしれないのよ? そんなのは嫌でしょ?」
「それは、もちろん嫌だけど……」
「あら? それとも私がいなくなったら寂しいのかしら?」
「違うしっ!! 俺は母様が一人で生活できるとは思ってないから言っているだけだし!!」
必死で否定するも、アリシアのにやにやは止まらない。我が子が可愛すぎる、とイアンを抱きしめる。
「僕のせいで、僕の……ごめんなさい」
エレンは、自分のせいで仲の良い母子アリシアとイアンが離れ離れになってしまうことを理解した。
泣きながら謝るエレンに、先ほどまでのにやけ顔を封印したアリシアが、真剣にエレンに向き合って言葉を紡ぐ。
「確かに、今回のエレンの行動は王族としてあるまじき浅はかな行為ね。ガルシア国にとって神聖国がどういう国かは知っているはずよね?」
「はい……」
「ターミナルがどういうところなのか知りたくなる気持ちも分かるわ」
だって、アリシアも塀を乗り越えて不法侵入した前科持ちだから。
「でも、自分のその行動が与える影響を考えなさい。一歩間違えれば国交は断絶、戦争だって起こりかねないわ」
「はい……」
「エレン、あなたにはまだ時間はたくさんあるわ。焦る必要はないの。自分がどうしたいか、この国にとってどう在りたいか、きちんとよく考えなさい」
諭すアリシアの言葉に、エレンは大きく頷いた。
「それと、ボールドウィン侯爵、イアンと同い年くらいの無力化の魔法が使える男の子を連れてきなさい。貧民街にいるはずだから。それにその子にはもう一つ珍しい魔法が使えると言っていたわ。それは……」
それは以前魔力測定に来た少年のことだった。神聖国では無力化の魔法は禁忌の魔法だ。
イアンという息子を持つ親となった施設長は、本来殺すべきその少年を手にかけることができず、こっそりと逃していたのだ。
ただし、その少年は今にも死にそうな様相だったのだけれど。
その少年が今も生きていることを願いながら、アリシアは命令を下した。
「そんな、無力化の魔法を使える少年を探せだなんて、私にそんな事ができるわけがない」
「ティアちゃんに探させなさい。ティアちゃんなら見れば分かるのでしょう? それしかあなたたちが生き残る道はないわ。それにきっとこれから神聖国からの要求は厳しいものになるわ」
王族であるエレンを危険に晒し、さらには神聖国と手を組むという国家反逆。いくら魅了の魔法にかけられていたとしても、決して許されることではない。
それからすぐに、ボールドウィン侯爵はセレスティアを連れて貧民街に赴きその少年を探し出した。
余談ではあるが、その後も定期的に貧民街から生活苦の魔法使いを探してはターミナルに送った。
ターミナルでは、入国審査と称してオークリーがその者たちに魅了の魔法を使う。神聖国で暮らしたいと暗示をかけるのだ。
その後、自らの足で入国したその者たちを生活支援と称してシアハウスに招く。
そこで魅了の魔法を解除し、このまま神聖国で暮らすか、一時的に魔力を無力化してガルシア国に戻るかという選択をさせる。
ガルシア国にとっても魔法使いは貴重だ。けれど定期的に手に入るようになった魔法石のおかげで、魔法使いが直に繰り出す魔法だけに頼らずとも生活は成り立つように急激に発展を遂げている。
それこそ癒しの魔法のように特別な魔法でなければ生活の全てを保証するには至らない。
だからこそこのアリシア式移住システムは、ガルシア国で飢えて命を落とす者を救うことができる上に神聖国の要求にも応えられるという、お互いにウィンーウィンな超画期的な計画だった。
併せて、鑑定の魔法が使えるという貴重な、というよりイアンの想い人であるセレスティアに、オークリーが手出しできないよう、“王太子”と婚約させることにした。
それはアリシアが国王に頼んだ事。
存在を公にできないでいるイアンと婚約させることは難しい。だからといって、イアンのためにもエレンと婚約させるわけにはいかない。
考えた結果、王太子になった方と結婚をする、という形を取ることにした。
セレスティア自身侯爵家の娘であり、幼いながらも聡明であることは周知の事実。王太子妃として申し分なかった。
「イアン、私が居なくなった王城では居心地が悪いでしょうから、時が来るまでどこかに身を隠しておきなさい」
「どこかって、そんな都合の良い場所なんてないだろ?」
「辺境の地、とかはどうかしら?」
「……それだけは絶対に嫌だ」
辺境のあの地も嫌だけど、何よりあの騎士と毎日稽古することになるだろうことは目に見えている。
剣を持たせた時の豹変具合は思い出しただけでも悪寒がするし、準備運動と称して魔物の群れに突っ込むという荒行。魔法石を受け取りに行く時だけで十分だと心底思った。
「あの、もしよろしかったら私が責任を持ってイアン殿下をお預かりいたします。もちろん殿下の将来に不安を来さないよう尽力もいたします」
「えっ!?」
「まあ! 素敵な提案ね」
ボールドウィン侯爵の提案に顔を真っ赤に染めたイアンに向かって、アリシアは「ひとつ屋根の下よ」と追い打ちをかける。
セレスティアには秘密にするとの約束で、イアンはボールドウィン侯爵家に身を寄せることになった。
たまには会いにきてね、と笑うアリシアに、イアンは意のままに空間転移できるよう訓練することを誓った。
「あ、あの、僕は何をすればいいのでしょうか?」
「エレンができることひとつだけよ。ここで見たこと起きたことは誰にも言ってはなりません」
「……はい」
当事者でありながら蚊帳の外に置かれる。足手纏いだから何もやるなと暗に言われたことに自分の無力さを痛感させられた。
「イアン、エレンを送ってあげて」
「了解。行くぞ、エレン」
「は、はい!!」
そしてイアンが向かったのは庭園だった。生い茂る草花をかき分け進んでいく。
壁にたどり着くと手を翳し、その壁が動き出した。
「ここは?」
「さあな。お前は知らなくていいよ」
またか、とエレンは肩を落とす。そんなエレンに気付きながらも、イアンは気にする素振りも見せず通路を進んでいく。
残念ながら今のエレンにはそれに必死でついていくことしかできなかった。
「さあ、ここに立て」
言われた通りに立つと、突然床が動き出し上昇し始めた。そこまでは良かった。
てっぺんと思われる地点に到達した瞬間、イアンは笑った。
「そのまま帰れると思うなよ」
瞬間、床が落ちる。ヒュッと息を飲み込むことしかできなかった。
自分が飛翔の魔法が使えることさえも失念して、ただ、愚かな自分はやはり死ぬべきなのだなと、それだけが頭を支配した。
気付けば知らない部屋の中にいた。死んだのではなく意識を失っていたこと、怪我ひとつない自分の姿にイアンの飛翔の魔法で地面に打ち付けられることを逃れたことを知る。
意識を取り戻したエレンに気付いたイアンは落ち着いた声で淡々と宣言する。
「俺は国王になるからな」
「……うん、イアン兄様の方が相応しいと思う」
「えっ!?」
「えっ?」
思わぬ肯定にイアンは驚く。対するエレンはどうしてイアンが驚いたのか分からなかった。
「いや、お前はなりたくないのか?」
「なりた……くない。うん、僕よりイアン兄様になってほしい」
「どうして?」
「どうしてって、今、そう思ったから。じゃあさ、イアン兄様はどうして国王になりたいの?」
「そりゃ、王位継承権がある者として当然だろう? ……と言いたいところだけど、ぶっちゃけていうとティアを幸せにしてやりたいからかな」
「ティアって、ボールドウィン侯爵の?」
「ああ、ティアはとても可愛いくて頭も良くて優しいんだ。エレン、お前は絶対に好きになるなよ」
キッと鋭い視線がエレンを突き刺す。
「もしかして、ティアって子のために自分の人生を決めたの?」
「おかしいか? ティアは王妃になりたいって言っていたんだ。だったら俺が国王にならなきゃ。で、みんなが幸せだと思える国にする。そうすればティアも幸せだってことだろ?」
王族として生まれたのだから、王位を継ぐために生きることは当たり前だと言われるのは理解できる。エレン自身が散々言われてきたことだから。
けれど、好きな人のために王位を継ぐ、ということは理解し難かった。
理解し難いけれど、ストンと腑に落ちた気がした。
「仕方がないから、俺が国王になったらお前のことも面倒見てやるよ」
「じゃあ、僕はイアン兄様を一生懸命支えられるようになるね」
「お前、本当に自分は国王にならなくてもいいのか?」
「うん。イアン兄様になってほしい。幸せだと思える国にしてくれるんでしょ?」
エレンは笑った。そんなエレンを見てイアンはため息を吐く。
「……お前は人を信じすぎるんだよ。ボールドウィン侯爵にも騙されて連れてこられるし。もう少し危機感を持て。ほら、これをやるよ」
イアンは片方の耳からピアスを外しエレンに差し出した。
「無力化の魔法石だ」
「無力化の?」
「これが必要な理由は自分で調べろ。って、お前もピアスホールがないのか」
じゃあ、いらないか。そう言おうとするもエレンが待ったをかける。
「いる!! ピアスホールくらい開ける!!」
従兄弟でありながら、お互いに接触を図るのを避けてきた。けれど、やはりずっとお互いのことが気になっていたのだ。兄弟のように仲良く遊んでみたいと。
「次に会う時までに成長してろよ。好きな女でもできて、本気でその女のために何かしたいって思えるようになったら、遠慮なく国王の座を狙ってもいいからな」
もちろん譲る気はないけどな、とイアンは笑った。それからすぐにイアンは王城から姿を消した。
誰しもがエレンが王太子になると決定付けて、その重圧が一身に向いた。
イアンが戻ってくるまでは精一杯代わりを努めようと必死で頑張った。けれど、どうしてもイアンと自身を比べてしまう。
婚約者(候補)のセレスティアとは必要最小限の親交のみで、その仲を深めるようなことはもちろんなかった。
それから何年経っても一向にイアンは姿を見せる気配はない。とうとうイアンの名を口にする者はいなくなっていた。
せめてイアンが帰ってきた時に、速やかに王太子になってもらえるように、エレンは少しでも発言力を手に入れようと、国をも滅ぼしかねない強大な力、竜を統べるための唯一の手段ーー竜の涙を探しに行く決意を固めた。
竜が卵から孵化する前兆として、突如として現れる虹色の結晶。しかも、それはお伽噺のような古の噂話。
この決意が、己の命を差し出せるほどの存在との運命の出会いに繋がるとは知る由もない。




