明かされる真実
「セレスティア、これで俺様とお前は夫婦だ」
ここは玉座の間。
正装したオークと、純白のウエディングドレスに身を包んだ美しいセレスティア様の姿があった。
ここで結婚の儀を執り行い、そのままバルコニーに出て広場に集まった国民に向け、セレスティア様は王妃としてお披露目される。
婚約などの手続きを全てすっ飛ばしての結婚。そんなのは絶対に許されないと異議を唱えたいけれど、ここが神聖国である以上、オークの言うことが絶対だ。
ましてや、当事者のセレスティア様は今、愛おしそうにオークを見つめている。側から見れば相思相愛のカップルにしか見えない。
本来なら、その瞳の先には本物のイアン王子がいるはずなのに。
唯一オークに対抗できそうなシアちゃん様は、この会場に入ることさえもできなかった。
この結婚式に参列が許されたのは、宝飾品の類を持たない人に限定されたからだ。
全ては、無力化の魔法石を持つ者を排除するため。
絶対に指輪やネックレスを外したくないと拒んだシアちゃん様は、参列を許可されることはなかった。
万が一にでも魅了の魔法をかけられたくないという理由もあるのだけれど、本当は王城の広場に集まった人たちにプチギフトを確実に配らなければならないから。
ちなみにそのプチギフトは私も持っている。特別にシアちゃん様自らが飛翔の魔法を魔法石に込めてくれた代物だ。とは言っても、普段は全く魔力のない私がこの魔法石を持っていても宝の持ち腐れなのだけれど。
ちなみに、国民全員に配るプチギフトのお守りの中に魔法石が入っているとは思わなかったらしく、所持品検査ではお守りの中まで見られることはなかった。
そして、無情にも結婚式は進んでいき、山場を迎える。
「では、誓いのキスを……」
だめ、絶対にだめ!! セレスティア様のファーストキスだけは絶対に死守したい! けれど私にはなす術がなかった。
必死の思いで周りを見回すも、この会場にいるのはオーク直々に結婚式への参列を許された私とイアン。そして……ダーリン!?
「あれ!? 施設長ったらいつの間に来てたんですか?」
「さっきヒュンと魔法でな」
「空間移動! だったら、今度はヒュンとセレスティア様を掻っ攫って来てくださいよ!!」
「リリーちゃん、わしの空間移動はわし一人だけしか無理だって教えたじゃないか。わしの息子ならできるだろうけど。そうそう、わしのあの小袋を見て、息子も負けじと新技を生み出しおった。我が息子は天才かもしれん」
施設長は突然親ばかぶりを発揮し始めた。
シアちゃん様と施設長の息子ということは、今度こそ幻の王子様のことだろう。
飛翔の魔法だけでなく空間魔法も使えるなんてスペックが高すぎる。
「だったら、せめてキスだけでも阻止してください。キスの瞬間にセレスティア様の前にヒュンと移動して、セレスティア様のファーストキスを守ってあげてください!!」
「絶対に嫌だ。わしはワイフ意外とはキスしたくない、絶対に、絶対に嫌だ!!」
「別に施設長が代わりにオークとキスしろって言ってるわけじゃないですから! 邪魔をしろって言ってるんです!!」
そうこうしている間に、今まさにセレスティア様の唇にオークの唇が近づこうとしていた。
「だめー!!」
思わず叫んでしまったその瞬間、セレスティア様の前にある人物が立ち塞がった。それは本当に突然で。
空間移動でもしない限り無理なタイミングだ。
「えっ、さすが施設長、嫌だと言いつつも、体を張ってセレスティア様を助けてくれるなんて、惚れる!!」
嫌だ嫌だと言いつつも、いざとなったらやる男。シアちゃん様も施設長のそんなところに惚れたのかもしれない。
「惚れるだなんて、リリーちゃん、わしにはヤングでビューティフルなワイフがいるって言っているじゃないか。モテる男は辛いのう」
「えっ!? どうしてまだ私の隣にいるの!? じゃあ、あれは誰?」
施設長でなかったことに驚いていると同時に、オークは後方に吹っ飛んでいた。どうやら強烈な一発がお見舞いされたらしい。
一体誰がやったのかと、その人物に目を向ける。
「嘘……」
セレスティア様の前に立つ人物を見て、私は驚き目を疑った。
「誰?」
はっきり言って知らない人だった。
この超重要な場面で、私の知らない人がセレスティア様を救い出すというこの状況。ぶっちゃけそれはないでしょ。
呆気に取られていると、今度はセレスティア様と一緒に消えて、私たちの目の前に姿を現した。空間移動だ。
「おい、お前、早くティアの魅了を無くせ」
「は、はいっ」
そう命令口調で頼まれたのは、イアンだった。
イアンが魅了の魔法を解くことができるかもしれないことにも驚いたけれど、それよりもやっぱりこの男の方が気になってしまう。
この偉そうな男は誰だろうかと、もう一度よく考えてみる。空間魔法を使うから……
「もしかして、施設長の息子さん?」
「その通り。わしに似てイケメンだろう? でもリリーちゃんは初対面じゃないはずだが?」
「いや、初対面のはずですよ」
けれど、何となく見たことがある気もした。
どこで見たんだっけ? と思い出している間に、イアンはセレスティア様にかけられていた魅了の魔法を解くことに成功していた。
無力だからと言っていたけれど、イアンの魔法ってすごいじゃん!!
正気に戻ったセレスティア様は、魅了されていた時のことを覚えてなのか、泣き出しそうな表情でふるふると震えていた。
「ティア、もう大丈夫だから」
先ほどまでの横柄な態度とは打って変わって、施設長の息子さんはセレスティア様にだけは優しく声をかける。
その声に導かれるように視線を向けたセレスティア様はとうとう泣き出してしまった。
「……アン!?」
「助けるのが遅くなってごめん」
「アン! 本物のアンだわ。ずっと会いたかったんだから」
ぎゅっと抱きつくセレスティア様。
アン、ということは、本物の幻の王子様、イアン王子のことだろう。
この男がイアン王子で間違いないのなら、やっぱり私は会ったことはない。
そう思っていたら、イアン王子はセレスティア様を抱きしめながら、今度は私に問いかける。
「おい、お前。ここが小説と同じ世界ならお前がどうにかしろ。ティアまで巻き込むな」
その一言で気付いてしまった。
「えぇっ!? セレスティア様のお屋敷にいた護衛の人!!」
私に前世の記憶があることを知っているのはセレスティア様とセレスティア様のお屋敷のあの護衛の男だけだ。
「私の、お屋敷の護衛?」
「ば、ばか、ティアには言うなって」
言うなと言われると言いたくなってしまう不思議。これ見よがしに全て言ってしまおう。
「セレスティア様は知らなかったんですか? この人、セレスティア様のお屋敷の天井裏に隠れていたんですよ」
「アン、まさか、それ本当?」
「ごめん。ティアのことが心配で、ティアと離れたくなくて、俺だけガルシア国に残ったんだ。でも、もちろん節度は守って護衛していたから!!」
着替えなどは見てないよ、と言いたいらしい。私だったらこっそりと見張られていた事実自体が嫌だけど、恋は盲目なのかセレスティア様は違った。
「じゃあ、ずっと私のそばにいてくれていたの?」
「ああ」
「早く教えてくれればよかったのに。ずっと会いたかったんだから」
側から見れば、涙が出るほど感動的な場面だろう。
けれど、相手があの失礼な護衛の男だと知ってしまった今、素直に良かったねと思えない私は心が狭いのかもしれない。
そしてもう一人、私以外にもこの感動的な場面を不服に思っている者がいた。
「お前ら、俺様を無視して何をしてる。ティア、早く俺様のところへ戻って来い」
オークだ。吹っ飛んだ時に見事にころころと転がっていたけれど、とうとう復活してしまったらしい。
魅了の魔法が解かれたセレスティア様はもちろんオークの方に目を向けることはない。
「嫌です。絶対に嫌!」
「ティア! こいつらにバラしてやってもいいんだぞ。お前が今までやってきたことを知ってもお前を許すと思うか!?」
「それは……」
「そうだよな。知られたくないよな。ガルシア国の魔法使いを神聖国に売っていたなんてな。なあ、セレスティアよ」
「やめてください!!」
セレスティア様が制止しようと叫ぶも、オーク言葉を止めない。
「鑑定の魔法を使ってわしの望む魔法使いを見つけては神聖国に送る。代々お前の家はそうやって神聖国と国交を結んできたガルシア国の裏切り者だ。もちろんリリーのこともわしが頼んだんだ」
「えっ、私?」
「お願いだから、もうやめて。リリー様には知られたくないの」
私の名前が上がり、咄嗟にセレスティア様に目を向けると、今にも泣き崩れてしまいそうだった。
「侯爵に、今度は聖女を探してこいと言ったら、すでにガルシア国で保護されているから難しいと言われ諦めていたのに、セレスティアが交換条件を出して来てな」
「ちょっと待って。セレスティア様、まさか、神聖国王との取引って」
「ああ、セレスティアの方から持ちかけてきたんだ。魔力増幅薬を用意することと、廃嫡寸前の王子を国交の窓口に加えることを約束すれば、聖女は自ら望んで移住してくるってな。リリー、お前はこの女に嵌められたんだよ」
オークの言葉にセレスティア様は肯定も否定もせずに、もう何も言えなくなっていた。
「セレスティア様、本当ですか? しかも、今までガルシア国の魔法使いたちを神聖国に送っていたって、それって……」
魔法が使える者はガルシア国にとっても貴重な存在だ。魔法が使える者を見つけたらまずは国に報告する。それをせずに、神聖国に送るということは国を裏切る行為。
セレスティア様は私が言わんとしていることが分かってなのか、泣きながらこくりと頷く。間違いない。
私はわなわなと震えだして止まらなくなった。だって、だって……
「うっそ!? セレスティア様って、めっちゃ悪女じゃないですか! えっ、まじで!? ウケるんですけど!!」
「えっ?」
私の言葉にセレスティア様はあっけにとられる。セレスティア様以外の人たちも。
けれど、テンションが上がってしまった私は止まらなかった。
「うっわ、まじか! でも、そうですよね。セレスティアってあの小説では悪役令嬢だもの。おかしいと思っていたんですよ。小説でも現実でも、私は魅了の魔法を使いまくるヒドインなのに、かたや現実のセレスティア様は令嬢の中の令嬢だなんて。めちゃくちゃ不公平だと思っていたんですよ。それが国家反逆! 学園内でのいじめとは悪事のレベル違うし!」
どこからか「やっぱりアイツはおかしい」と聞こえてきた気もするけれど気にしない。
「怒ってないの?」
「怒る? どうしてですか? 見ての通りめっちゃくちゃテンション上がってますよ!! やばいっ、やっぱり私の推しが一番最高!! 最後の最後にやってくれますね!!」
私の推しは最初から『悪役令嬢のセレスティア』だ。実はガルシア国を裏切っていただなんて、私的にはいい意味で裏切られた!! 幻滅どころか、マジで推せる!!
「私にはリリー様の言っていることが分からないわ……」
「セレスティア様が私の最推しだってことですよ!」
「ティア、ティアにしかできないことがあるから今すぐ広場に行くぞ。あとはこの意味の分からない女に任せておけ」
そう言うのと同時にイアン王子は私に触れた。瞬間、私はオークに目の前に移動していた。まさかこれが新技!?
驚いてイアン王子の方を振り返るも、セレスティア様とイアン王子の姿はすでになかった。
「何だリリー、お前はそんなに俺様のことが好きなのか? 色々と足りないが仕方があるまい。さあ、共に国民の前で結婚を宣言するんだ」
「えぇっ!? 絶対に嫌だし!!」
思わず本音が漏れてしまった。だって嫌なものは嫌。
「魅了の魔法が切れたのか?」
そう言いながらオークは私に向かってウインクをしてくる。うげっ。
「あれ? おかしい、どうして魅了の魔法が効かないんだ? あぁっ、もういいっ、早く来い。さもないと今すぐ広場に集まった国民同士殺し合いをさせる」
「へ?」
突然物騒なことを言い出したオークに思わず聞き返してしまう。
「あの時もそうだった。子供のお披露目だって集まった国民たちに、俺様は魅了の魔法を使って殺し合いを命じた」
「まさか、それって?」
「あの男はバルコニーに備え付けてあった魔力増幅薬を飲んで魅了の魔法を使い、俺様の魅了の魔法を打ち消した。それこそが俺様の狙い、魔力増幅薬の中に魔力の実を削って入れておいたことも知らずにな」
高笑いをするオークに、絶対に許せないという気持ちが込み上げてきた。
魅了の魔法を人の命を奪うために使うなんて絶対に許されることではない。
もちろん悪戯に精神を操作すること自体許されないことだけれど、魅了の魔法だってうまく使えばあの幽閉塔の時のように人の命を助けることだってできるのに。
「……やっぱりそうだったのね」
怒り叫びそうになる私の前に、突然姿を現したのはネリネ様だった。
ネリネ様の登場に驚いていると、いつの間にかシアちゃん様も施設長の隣にいてイチャついているではないか。
「ネリネ、お前、竜神様は?」
「もうすぐ竜神様は結界を解きます。この国は地上に戻るべきです」
「地上に戻るだと? どうやって? 竜神様の力が弱っていることくらい俺様だって気付いている。この国を安全に地上に戻す力など残っているはずがない」
「竜神様のお力に頼るだけが地上に戻る術ではないわ。この国と人を守るために私たちがやるのよ。だから広場に集まった人々に魔法石を待たせています。お義兄様には魅了の魔法を使い、その魔法石を使うように操っていただきます」
「魔法石をだと? いつのまにそんなものを? しかも俺様に命令する気か?」
「やらなければこの国もお義兄様も一緒に破滅するだけです」
ネリネ様がはっきりと告げると、オークは渋々頷いた。
「分かった。分かった。その代わり、リリー、お前には一緒に国民の前に立ってもらう。王妃のお披露目で集まってもらったのに俺様一人で国民の前に立つのは格好がつかないからな」
「そんなのダメに決まってるじゃない」
ネリネ様が声を荒げて断ってくれる。でも、
「それくらいならいいですよ。その代わり絶対に私に触れないでくださいね」
「リリーちゃん!?」
「ネリネ様、心配してくれてありがとうございます。でも大丈夫ですよ。それに嫌な予感もするんです。その時は私が代わりにやることも考えなくちゃ」
承諾したのには理由があった。何となく私はオークの言葉を信じられなかったから。
だって、オークは最後にはざまぁされるに決まっている。それなのに、このまま素直に協力をすればざまぁされる可能性は限りなく低くなるだろう。
ということは、最後の最後にオークは絶対にやらかすはずだ。そして、ざまぁされるはず。
そして私たちはバルコニーに立った。案の定、この時からすでにオークは約束を破っていた。だって私の腰に手を回して来たのだから。
「リリーや、ここで誓いのキスを」
「えっ、話が違うし!! 一緒に立つだけって約束したじゃん!! しかもさっきから何この手? お触り禁止だし!!」
「そんな約束したかのう?」
ぐふふと笑うこいつとキスをするなんて本当に無理だ。
けれど、私の腰にがっちりと回した手から逃げられない。どんどんオークの唇が私に近寄ってくる。
絶体絶命の大ピンチ。
きっと私のヒーローが助けに来てくれるはず。そして私はその声を聞き逃さなかった。
「リリー様っ、土下座よ!」
えっ、広場の方からセレスティア様の声!? そう思うよりも早く体は動いていた。
がっちりと腰に回された手などなかったも同然で、気付けば私は土下座をしていた。
“逃げて”ではなくて、“避けて”でもなくて、“土下座”。
なんて的確な言葉のチョイスなのだろうか。
私がセレスティア様のその命令を無視できるわけがないことをよく理解している。
私は今、全身の細胞が歓喜の叫びを上げるほど完璧な土下座を決めている。ちょー気持ちいい!!
その感動も束の間、私にキスをしようとしていたオークが、私が突然いなくなったせいで体勢を崩し、土下座した私に躓いた。……うっ、地味に痛い。
オークはまたもころころと転がっていった。
「リリー、貴様まで、許すまじ」
起き上がったオークは血相を変えて隠し持っていた短剣を私に向けて襲ってくる。今度こそ本当に逃げなくては。
けれど、土下座をしていた私は反応が遅れてしまった。万事休す。
「リリーちゃん!」
そんな私を守るように抱き付いて来たのはネリネ様だった。
まだ出会って一ヶ月ほどしか経ってないというのに、ネリネ様が私を守ってくれた。思えば初めて会った時からずっと私のことを娘のように大切に接してくれて。
急いで助けなくちゃ! と目を開けると、目の前にいたのは血塗れのネリネ様、ではなく
「パパ!」
「パパ様!!」
「パパ、貴様ぁ、生きていたのか!?」
あれ? なんかおかしい。どう考えてもおかしい。
「えっ、パパだけど、どうしてみんなもパパって呼ぶの?」
目の前で短剣を振り翳して私とネリネ様を襲おうとしていたオークに応戦しているのは、紛れもなく私のパパだった。
ことの成り行きを近くで見ていたシアちゃん様が“パパ様”と呼ぶのは理解できる。パパはシアちゃん様の元旦那様、かもしれないから。
けれど、オークまでもがパパと呼ぶのは理解に苦しむ。
そんなことで頭を悩ませていると、今度はこの人までもパパと呼びはじめた。
「パパ……」
ネリネ様だ。そんなネリネ様に向かって、オークを制圧したパパは跪く。
「妃殿下、遅くなり申し訳ありません」
「いえ、今まで長い間約束を守ってくれてありがとう」
涙を滲ませながら、ネリネ様はパパに向き合ってお礼を言っていた。しばし見つめ合っているその雰囲気はただならぬ関係だとしか思えない。
「ちょっと待って、パパとネリネ様ってどういう関係? そもそもどうしてみんなパパのことをパパって呼ぶの!?」
私の問いかけにキョトンとした顔のネリネ様が答えてくれる。
「パパだからよ?」
「いや、たしかに私のパパですけど、おかしくないですか? 普通はリリーちゃんのパパとか、◯◯さんとか、名前で呼びますよね? ちょっと! パパもなんか言ってよ!」
「姫、私はパパだと何度も教えましたよね?」
「うん。パパ=父でしょ?」
当たり前でしょ、と思ったけれど、それは当たり前ではなかった。
「違います。パパという名前です」
「へ?」
「私の名前が“パパ”なんです」
「いや、まさか」
そのまさかだったみたいで。要するにこういうこと。
私→「太郎!」
シアちゃん様→「太郎様」
オーク→「太郎、貴様ぁ」
ネリネ様→「太郎……」
「じゃあ、何? 私、今までパパのことをパパって呼び捨てしてたってこと!?」
「はい」
何か問題でも? と言いたさげなパパに、私は驚愕する。
「問題大ありだし!! 自分の父親を呼び捨てるなんてあり得ないじゃん!!」
「姫が臣下である私を呼び捨てるのは極当たり前のこと。むしろ名前を覚えていただいて呼んでいただけるだけでも光栄なことです」
「臣下? は? 何言ってるの? ……ってことは、パパは私のパパじゃないの!? じゃあ、私のパパって誰?」
魔法は遺伝によるものが多い。私は魅了の魔法が使える。つまり……
「オーク!?」
「違うわよ!! 私とグレゴリー様の子よ!!」
即座に否定したのはネリネ様だった。良かった、オークの子じゃなくて。
と思ったものの、ネリネ様は何て言った? 私がネリネ様ーー前王妃様の娘?
たしかに私がネリネ様の娘なら、今までのネリネ様から受けた無償の愛も理解できる。
何てことだろうか。ヒドインの役割を終えた私に与えられたのは、王冠を手にする権利ーー神聖国の王位継承権を持つ姫だった。




