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悪役令嬢ルートに入りました~今世は私がヒロインのようです~  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)


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87 アルヴィンの変化

文化祭が終わって一週間後、シーラはあることに悩まされていた。



「変だわ……どうして持ち物がこうも無くなるのかしら……」



ここ最近、シーラの私物がなくなることが増えた。

最初の数回ならまだたまたま落としたのかもしれないと思えるが、回数を重ねるにつれ誰かが盗んだのではないかと疑うようになった。



「困ったわね……大切なペンケースもなくなってしまったし……」



シーラは困り果てた結果、学園長のロイドに相談することを決めた。

最近になって、ロイドはよく学園に姿を現わすようになった。



「私物がなくなるだと……?」

「はい……ここまでだと、誰かが私のものを盗んでいるのではないかと……」



彼女が言い終わる前に、ロイドは座っていた椅子からガタンッと音を立てて立ち上がった。

そして、凄みを効かせて背後に控えていたレインに命じた。



「―――疑わしき人間を全員ここに連れて来い」

「ま、待ってください殿下!」



疑わしい者を皆殺しにしてしまいそうな勢いのロイドを、シーラは慌てて止めた。



「殿下、私はそんなこと望んでいません……どうか、落ち着いてください……」

「……前にも思っていたが、君は本当に優しいな」



シーラがその身体に触れると、ロイドの表情が一瞬で柔らかくなった。



(な、何はともあれよかった……)



生徒会に入ってからというもの、シーラへのいじめのような行為はほとんどなくなっている。

これも全て、ロイドやアルヴィンたち生徒会メンバーのおかげだった。



「失礼しました、王弟殿下」

「ああ、犯人は必ずこちらで捕まえておこう。心配はしないでいい」

「…………はい」



微笑んだロイドに、シーラは笑顔を返した。

麗しい彼の微笑みには、未だにドキドキしっぱなしだ。

愛されることを知らなかった少女は、いつの間にか多くの人間から愛される幸せな女の子となった。



学園長室を出たシーラは、たまたま廊下を歩いていたダミアンと遭遇した。



「――シーラ嬢」

「ダミアン様、この間の文化祭ぶりですね」

「そうだな、文化祭が終わってからは忙しくてなかなか会えなかったから」



文化祭が終わり、十一月も下旬に差し掛かった。

第三学年の最後とも言える一大行事が終わり、生徒たちはそれぞれの進路のための行動を始めている。



当然、シーラもだった。

しかし、彼女はまだ何も決められていなかった。



「ダミアン様……こんなところで何をしていらっしゃるのですか?」

「実は……アルヴィンを探してるんだけど、姿が見当たらなくて」



ダミアンは困ったように頭をかいた。



「アルヴィン殿下……そういえば、最近あまり良くない噂を耳にします」

「ああ……君も知っていたか」



アルヴィンは最近、生徒会メンバーから離れ、デイジー・キャンベルと行動を共にするようになった。

真面目だった王太子が評判の悪いデイジーと一緒にいることが増え、周囲は驚いた。



もちろん、シーラもそのうちの一人だった。

前世のアルヴィンはヘンドリックと違って、デイジーと関わりを持つことなんてほとんどなかったから。



(あの二人に接点なんてなかったはず……どうして急に……?)



生徒全員が疑問を抱いているだろうが、一番困惑していたのは前世の記憶を持つシーラだ。



「そういえば……キャンベル令嬢はアルヴィン殿下の初恋の女性に似ているんでしたね」

「そうだな……アイツも既に乗り越えたと思っていたが……どうやら、未だに忘れていなかったようだな」



ふと思い出した、アルヴィンの初恋の女性。

前に話したときは何とも思ってなさそうだったけど、まだ引きずっていたのか。



(アルヴィン殿下は一途だもの、仕方がないわ)



デイジーと関わっているのは気に入らないが、それで彼の心が安定するのならばいいのではないだろうか。

この頃のシーラは、まだそれほど問題を重く捉えていなかった。





***





ダミアンと別れたシーラは、家へ帰った。

彼女が父親と愛人一家と別居してから、もう数ヵ月が経っている。

別居してから生活は楽になり、シーラは落ち着いた毎日を過ごせていた。



そんな彼女の元に、予期せぬ来客があった。



「――い、いけません!勝手に家に入らないで!」

「私は家族なのよ!?侯爵令嬢の私を止めるだなんて、アンタたち不敬罪よ!」



部屋でくつろいでいたシーラは、外から聞こえる声とけたたましい足音に気が付いた。

不思議に思って外へ出ようとしたそのとき、突然扉が開いた。



「―――お姉様!迎えに来たわよ!」

「……………アメリア?」



扉の外から姿を現わしたのは、何と学園を退学になったアメリアだった。



「どうしてあなたがここにいるの?」



彼女はそんなシーラの言葉など気にも留めず、彼女の手を掴んだ。



「さぁ、お姉様!帰りましょう!父さんと母さんがあなたを待っているわよ!」

「……何ですって?」



散々虐待を受けたあの家に、戻れと言っているの?

正気とは思えない言葉に、シーラは思わずその手を振り払っていた。



「――触らないで、アメリア」

「……お姉様?」




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