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悪役令嬢ルートに入りました~今世は私がヒロインのようです~  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)


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78/80

78 誘惑の香水

クレアに恋の悩みを相談した数日後のこと。

朝、アカデミーに登校する準備をしていた彼女は、机の上に放置されたままの小瓶に気が付いた。



「あら、そういえばこの香水……すっかりつけるのを忘れていたわ」



シーラは鬼ごっこイベントを無事クリアした報酬として貰った香水の存在をしばらく忘れていた。

アルヴィンとロイドの熱烈なアプローチを受けていた彼女は、それどころではなかったのだ。



「好感度を上げるアイテムって言ってたけれど……好感度は十分すぎるくらい上がってるし……」



正直、使用するかどうかは悩むところだ。

好感度が上がらなくて困っているわけではないし、むしろ好かれすぎて困惑している。



「まぁ、でも効力とか気になるし……一度くらいはつけてみてもいいわよね」



シーラは香水の蓋を開けると、中身を軽く首元に吹きかけた。

シトラス系の爽やかな香りが広がる。



「とっても良い香りだわ……」



鼻をくすぐる不思議な香りに、何だかシーラまで誘惑されてしまいそうになった。

香水をつけた彼女は、いつも通りカバンを持って家に出た。



――さぁ、どんな変化があるかな?



***



その日、普段と同じようにアカデミーにやって来たシーラに、生徒たちは困惑を隠せなかった。

――主に男子生徒たちが。



彼女から放たれる魅惑の香りに、彼らは一様に戸惑った。

この良い香りは何だ?なぜか頭がクラクラする。



気付けばシーラから目が離せなくなり、彼女のことを目で追っていた。

今まで彼女を毛嫌いしていた生徒たちも同じだった。



「シーラ嬢は……あんなにも美しい人だったのか」

「ああ、俺もよく見た今初めて気が付いたよ」



サラサラの長い髪に、紫色の美しい瞳。

背が高く、スカートから見える脚はスラリとしていてとても綺麗だった。

男子生徒たちは、今さらそのことに気が付いたようだ。



(……何だか、みんなが私を見ているような気がするけれど気のせいかしら?)



鈍感なシーラ本人も視線を感じ、何だか不思議な感覚になる。

香水の効力を試そうと思ってつけてきたはいいものの、予想以上だ。



こんなに良いものがあるのなら、もっと早く欲しかった。

シーラは自身に熱のこもった視線を送る男子生徒をスルーしながら、間を通り抜ける。

もはや高嶺の花すぎて、誰も話しかけることができない。



今まで自分を嫌悪していた生徒たちが、自分に惚れているのだと思うと何だか気分が良かった。



――そして、香水の影響を大いに受けた人物はもう一人いた。



「……シーラ?」



遠くから彼女をじっと見つめていたのは、元婚約者のヘンドリックだった。

彼は優雅に歩く彼女から目が離せなくなっていた。



「……何だ?この気持ちは」



彼は高鳴る自身の胸に、そっと手を当てた。

なぜか、いつもより心臓の鼓動が激しくなっている。



今まで何とも感じなかった女が――いや、むしろ嫌悪してやまなかった女だった。

なぜ、今はこんなにも魅力的に見えるのだろうか。



「違う……これはきっと俺の勘違いだ……」



自身に言い聞かせるようにそう口にしながらも、彼はシーラのことを考えずにはいられなかった。



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