72 選択
あっという間に月日は流れ、第三学年の後期に差し掛かった。
相変わらず猛暑だった夏が過ぎ去り、秋となった。今は十月である。
卒業パーティーが三月なため、あと五ヵ月もすればシーラはアカデミーを卒業となる。
四月に回帰してから半年。長かったような、短かったような六ヵ月だった。
卒業後、生徒たちはそれぞれ結婚したり親から爵位を受け継いだり就職したりの道を選択する。
もちろん、ヘンドリックとの婚約を解消したシーラもそのうちの一人だった。
しかし、今彼女には別の問題が立ちはだかっていた。
放課後、図書室で時間を過ごしていた彼女の前に、いつもの画面が浮上した。
――『攻略対象①と隠しキャラの好感度が限界突破しそうです!』
好感度が限界突破するなんて事態、あり得るのか。
シーラの目の前には、今二人の男性が我先にと彼女に話しかけている。
「シーラ嬢、君に似合うと思って髪飾りを買ってきたんだ。受け取ってくれるか?」
一人は学園長であり、王弟のロイド。
「今度、俺と二人でどこかへ行かないか?君も最近婚約解消してフリーになったことだし」
そしてもう一人は、第二王子のアルヴィン。
どちらもこの国で最も高貴な血筋の生まれである。
二人の高潔な男を前にも、シーラは至って冷静だった。
(攻略対象①がアルヴィンだってことは確定してるから……おそらく隠しキャラがロイド殿下かしら?)
どっちがどっちなんて今はどうだってよかった。
とりあえず、礼を言う。
「お二人とも、ありがとうございます……」
「「で、どっちを選ぶんだ!?」」
ロイドとアルヴィンの視線が刺さる。
今すぐにでも決めないと、激しい戦いになりそうだ。
(選択肢が現れないということは……どちらと過ごしても問題はないってことよね……どうせなら、キーワードも手に入れたいし……)
しばらく考えた末に、シーラが取ったのはロイドの手だった。
キーワードを手に入れたいという目的もあるが、それ以上になぜか彼のことが気にかかった。
その顔をじっと見つめていると、何かを思い出せそうな気がしてならない。
勘違いかもしれないけれど、やっぱり気になって仕方がないのだ。
「……ロイド殿下、私と一緒に過ごしてくださいますか?」
「ぜひ。君のためならどこまでも行こう」
嬉しそうにはにかんだロイドとは対照的に、横にいたアルヴィンは悔しそうに顔を歪ませた。
「さぁ、行こうか。シーラ嬢、いつもみたいに学園長室でもいいけど……やっぱりたまには外で過ごしたいだろう?」
「ええ、そうですね……」
シーラはロイドのエスコートを受け、学園の外へ出た。
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