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悪役令嬢ルートに入りました~今世は私がヒロインのようです~  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)


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66 鬼ごっこイベント

シーラが帰った後、何とか命拾いしたレインは身体を震わせながら、ロイドの前で正座していた。



「殿下……入るなと言われたにもかかわらず、言いつけを破ってしまい申し訳ありません」

「もういい、シーラがああ言ったからな」



ロイドは特別に咎めず、彼を立ち上がらせた。



レインは安心感から、ふぅと息を吐いた。

昔から上司は厳しい人ではあるが、シーラのことになると話は別だった。



「それより、何かあったのか?お前が言いつけを破るということは……何か、不測の事態が起きたということだろう」



彼の言葉で、部屋の空気が一変した。たまにやらかすレインだが、ロイドはそんな彼に昔から絶対的な信頼を置いていた。

シーラに危険が及ばないようにと、ロイドは最も信用できる彼に調査を命じていたのだ。



真剣な面持ちのレインを前に、ロイドは気を引き締めた。



「殿下、先ほど判明したことなのですが……」



レインはゆっくりと近づくと、彼の耳元でそっと囁いた。



「――アメリア・アンダーソンが何やら怪しい動きをしています」



***



その後、学園長室から馬車に向かっていたシーラの前にある人物が立ちはだかった。



「……何ですか?」

「――やっと見つけたぞ、シーラ・アンダーソン」



彼女の行く手を阻んだのは、一人の男子生徒だった。

そしてその後ろには、他にも生徒たちがいる。



(どこかで見たことある顔……)



一体誰だろうと必死で思い出そうとしていたシーラは、彼らがヘンドリックに彼女を貶める発言をした生徒たちであることに気が付いた。

一度は学園長ロイドによって退学を言い渡されたものの、シーラのおかげで十日間の謹慎で済んだ者たちだ。



(どうしてこの人たちが……今さら、私に何の用があるわけ?)



あのときのお礼を言いに来た――というわけではなさそうだった。

先頭にいた男子生徒は、前世でもシーラを最も毛嫌いしていたうちの一人である。



彼は手に持っていた紙を自信満々でシーラの前に突きつけた。



「俺は掴んだんだ――お前がテストで不正したという証拠をな!」

「………何を」



シーラは紙を受け取り、内容をじっくりと確認した。

するとそこには、ありもしない事実が証拠として並べられていた。



(私が教師たちに賄賂を渡してテストの内容を事前に教えてもらっていたですって!?そんなことするわけないわ……!)



彼らはシーラが前世でどれだけ血の滲むような努力をしていたか、何も知らないから平然と罪をでっちあげられるのだ。

デイジーに嫌がらせをしたという罪での糾弾はまだ耐えられた。しかし、今回のは到底看過することができなかった。



「どうだ?罪を暴かれて何も言えなくなっているようだが」

「いいえ、違うわ。あなたたちの愚かさに呆れただけよ」



前にシーラが助けてあげた恩も忘れ、再び彼女を貶めるような行動を取るとは、呆れてものも言えない。

いくら彼女の順位が上がったからとはいえ、ありもしない罪を捏造するのはよくない。



(ここはカードを使うべきところよね?三枚目のカードを使用すれば、強制力もさらに弱まるだろうし)



ピンチだと思った彼女は、画面が出てきていないにもかかわらず、腕を真上に持ち上げてその場で叫んだ。



「カード“教師の責務”を使用するわ!」



「……」



何も起こらない。

その瞬間、ピューッと夏に似つかわしくない冷たい風が吹いた。



「……お前、何言ってるんだ?逃げ道がなくなって頭がおかしくなったか?」

「……え!!!」



頭がおかしくなったと言われ、シーラはあからさまにショックを受けた。



(ど、どうしてカードが使えないわけ!?)



シーラは何とか目の前にあの画面を出そうとするものの、どう足掻いても何も出てこない。



「えい!画面よ、出ろ!」

「……コイツ、ガチでイカれたみたいだぞ」

「精神病棟にでも連れて行こうぜ。ちょうどそう遠くない場所にあるし」



生徒たちはシーラの腕をガッチリ掴むと、彼女を引きずって行った。



「ちょ、ちょっと何するのよ!」

「大人しくしろ!性悪モンスターめ!」



シーラは渾身の力を使い、何とか抵抗を試みた。

貴族令嬢らしからぬ行為ではあるものの、適当に暴れてみる。



「嫌、離して!触らないでよ!」

「グアッ!」

「あ」



振り払おうと動かした彼女の腕が男子生徒の顔面に直撃し、彼は鼻から血を噴き出して倒れてしまった。

どうやら先頭にいたリーダー格だったようで、取り巻きたちが慌てて駆け寄った。



「き、貴様……!何しやがるんだ……!」

「ち、違うわよ!先に手を出したのはアンタたちでしょう!?正当防衛よ正当防衛!」

「問答無用!」



キャー!とシーラは叫び声を上げながら逃げ出した。

当然、生徒たちもその後を追う。絶対に逃がさないぞ、という執念に満ちた目が彼女を捉えた。



――『鬼ごっこイベントが始まりました!上手く逃げ切れたら有利なアイテムが獲得できます!』



鬼ごっこイベント!?

そんな死と隣り合わせのイベントがあってたまるか――!

ていうかさっきはいくら呼んでも出てこなかったくせに、今になって出てくんなよ!




読んでくださってありがとうございます!


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