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悪役令嬢ルートに入りました~今世は私がヒロインのようです~  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)


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65 結果発表

それから一週間後、定期テストの結果発表日となった。

校舎に入ってすぐのところに、結果が大きな紙で貼られている。



(前世だと……たしか八位だったわね)



今世では前よりも勉強していないため、順位の下降は避けられないだろう。

しかし、それでもかまわなかった。



前世では努力しすぎたため、今世では必要以上に頑張らないと決めていた。

どうせ全力でやったところで、私を見てくれる人なんて誰もいないのだから。



ゆっくりと校舎を歩いていたシーラに、興奮気味のクレアが駆け寄ってきた。



「シーラ!テストの順位見た!?」

「見てないけど……どうしたの?そんなにはしゃいで」

「あなたって本当にすごいのね!天才よ天才!もう、あんなに自信ないとか言っておいて!」



クレアはシーラの肩を押しながら、そのまま紙の前まで連れて行った。

シーラは何が起きているのか、理解が追い付いていなかった。



人混みをかき分けて前に進むクレアに、シーラは必死でついて行った。

途中、誰かとぶつかって転びそうになってしまう。



「おっとっと……」



そして、彼女が顔を上げるとそこには――



――『第一位 ダミアン・ウィルバート

   第二位 シーラ・アンダーソン

   第三位 アルヴィン・オルティネス』



予想だにしていない高順位に、シーラはあ然と立ち尽くしていた。

私が二位?しかもヘンドリックが一位じゃないですって?



前世と違って今回は全くと言っていいほど勉強していなかったのに、どうして。

信じられなかったシーラは、無意識に呟いた。



「ウ、ウソ……」

「シーラ、二位よ二位!ダミアンの次だなんてすごい!」



すぐ横でクレアが彼女を褒め称えた。

何度確認しても、第二位にはシーラ・アンダーソンの名が記載されている。



しばらくその名を見つめた後、シーラは視線を下にずらした。

生徒会メンバーや高位貴族の令息令嬢の名前が続いた後、ようやく見つけることができた。



――『第十一位 ヘンドリック・レイヴィス』



常に一位をキープしていたはずのヘンドリックは、何と十も順位を落としていた。

第一学年からずっと一位だったため、誰もがその結果を信じられないようだった。

そして、最もショックを受けていたのは当然、彼本人である。



「こ、こんなのはウソだ……俺は認めないぞ……」



少し離れたところでは、顔を羞恥に染めたヘンドリックが悔しそうに身体を震わせていた。

そんな彼を、人々は憐れみの目で見つめた。



「あら……レイヴィス公子は具合でも悪かったのかしら……」

「彼がここまで順位が下がるのは珍しいな……」



「……ッ!」



耐えきれなくなったヘンドリックは、その場から逃げるように駆け出した。

そしてその後ろを、デイジーが慌てて追いかけた。

彼女もまた、順位はいつも通りだった。



「おめでとう、シーラ。上位三人を生徒会メンバーが占めるのは初めてね」

「ええ、そうね……こんなこともあるのね」



あれだけ勉強した前世が八位で、全くしていない今世が二位だなんて。人生何があるかわからないとは、まさにこういうことではないだろうか。



「レイヴィス公子との婚約解消も済ませたんでしょう?お祝いとして、何か自分にご褒美でもあげたら?」

「それは良い案だわ!」



シーラはクレアの提案に、笑顔で賛成の意を示した。

そんな二人を、物陰からそっと見つめている人物がいた。



彼女は手に持っていた紙をグシャリと握りつぶすと、誰にも聞こえない声でボソッと呟いた。



――「やっぱり、気に入らない……」



***



「――それで、今回は本当に運が良かったと……自分でもそう思います」

「そうか……運が良かっただなんて、そんなに謙遜する必要はない。全て君の努力の賜物だろう」



その日の放課後、シーラは前のようにロイドのいる学園長室を訪れていた。

彼女がここへ来た目的はヘンドリックとの婚約解消が成立したことを伝えるためだったが、そのついでということで少しだけ話をすることになった。



突然やって来た彼女にロイドは不快感を露わにすることなく、快く迎え入れた。



「――シーラ嬢、定期テスト第二位、おめでとう」

「ありがとうございます、殿下」



シーラはニコッと笑い、返事をした。



「テストだなんて、何だか懐かしいな……」

「殿下はとても優秀な生徒だったと伺っています」

「そうだな、今はよく覚えていないが……シーラ嬢のいるアカデミーに通いたかったな」



突然そう言われて一瞬胸がドキッとしたが、冗談だろうとすぐに気持ちを落ち着かせた。



「そうだ、二位を取ったシーラ嬢に特別にプレゼントがあるんだ……」

「プレゼント……ですか?」



彼は近くに置いてあった箱から、あるものを取り出した。



「まぁ……素敵」



それは、黄色いガーベラの花束だった。贈り物用に、丁寧にリボンがかけられている。私のためにわざわざこんなものを?



――『アイテム“思い出の花束”を入手しました』



「殿下……ありがとうございます」



彼女が嬉しそうに花束を胸に抱きしめたそのとき、突然部屋の扉が開いた。



「殿下、至急確認していただきたいことが……」



扉から顔を覗かせたのは、ロイドの侍従のレインだった。

レインを見たロイドの表情が、一瞬にして険しくなっていく。



「テメェ、入るなって言っただろ。俺と彼女の時間を邪魔しやがって……」

「ギャー!裏世界の暗殺者!?」

「で、殿下落ち着いてください!」



地獄の鬼のような顔でレインを責め立てるロイドに、彼女は慌てて彼の肩を掴んだ。



「殿下!私は気にしてませんから!どうか怒りをお鎮めください!」

「……」



ロイドはシーラを視界に入れると、瞬時に表情を和らげた。



「――君がそう言うなら」

「……」



あまりの変貌っぷりに、シーラもレインもただ口を開けてポカンとしているだけだった。




読んでくださってありがとうございます!


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