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悪役令嬢ルートに入りました~今世は私がヒロインのようです~  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)


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46 サイラスとのダンス

シーラはサイラスの手を取り、本日二度目となるダンスを始めた。

彼は普段から女性の扱いに手慣れているせいか、リードもエスコートも一級品だった。



そのおかげで、ダンスが苦手なシーラもかなり踊りやすかった。

失敗したとしても、彼が全てカバーしてくれるという安心感のせいだろうか。気が楽だった。



「前見たこと、口外したりしてないよね?」

「してないですよ、私を疑っているのですか?」



気分を害したというように口を膨らませたシーラに、サイラスは慌てて首を横に振った。



「いや、言ってないならいいんだ……それだけが心配だったからさ」

「誰にも言ってませんから安心してください」



何故あのことをそこまで気にするのかわからないが、彼がそれを望むなら何も聞かずに受け入れるべきだろう。

シーラはそう判断し、話題を変えた。



「ところで、どうして私を誘ってくださったんですか?」

「……」



規則に縛られない自由奔放な彼のことだ。

きっとダミアンに言われたことだけが理由ではないだろう。そのような彼女の推測が当たっていたのか、彼は一瞬だけ動揺したように見えた。



サイラスはしばらくの間黙り込んだ後、気まずそうにシーラから視線を逸らした。



「そうだな……強いて言うなら、シーラ嬢が俺にちょっと似てるからかな……」

「似てる……?」



女好きなサイラスと男に相手にされないシーラ。

いや、どこからどう見ても似ていない。シーラはキッパリと言い放った。



「お言葉ですが、私とヴェントゥール大公子様は全く似てないと思います」

「その通りだな、今のは忘れてくれ」



サイラスはあっさりと認め、似てないということで決着がついた。

自分でも何を言っているんだ俺は……と恥ずかしそうに笑っている。



「まぁ、ダミアンに言われたこともあるんだけど……生徒会内で昨日約束したんだよな」

「約束……ですか?」



シーラが不思議そうに尋ねると、サイラスは意外なことを口にした。



「あぁ――パーティーでシーラ嬢を守ろうって、クレアとアルヴィンが言い出したんだ」

「…………え」



私を守る?

シーラは驚きから、ステップを踏むのを忘れて棒立ちしてしまった。手を繋いだまま微動だにしない彼女に、サイラスが焦ったように言葉をかけた。



「シーラ嬢……流石に動いてくれないとカバーできない」

「あ、も、申し訳ありません……」



彼女は我に返り、慌てて途中から曲に入って踊り始めた。

ほんの少しでも集中を欠くと、シーラのステップはすぐにおかしくなってしまう。そのことを忘れてはいけないと、彼女は念を押してダンスに集中した。



そのとき、ダンスを見ていた見物人たちがワァッと歓喜の声を上げた。



「―――あら、何て素敵なのかしら!」

「……?」



シーラが人々の視線の先に目を向けると、そこにいたのはヘンドリックとデイジーだった。

ちょうど、ヘンドリックがデイジーとの二回目のダンスで彼女を抱き上げているところだった。



彼がデイジーの腰を掴み、そのまま目の高さまで腕を持ち上げていた。デイジーの赤いドレスのスカートがフワッと広がり、突然抱き上げられた彼女は照れたように笑った。



そんな二人の姿は、絵に描いたように美しかった。



「ヘンドリックとデイジーだわ……」

「あの二人、婚約者でもないくせに二回も踊ってるのか……」



本来ならば婚約者以外と二度目のダンスをすることはマナー違反だが、そんなことを気に留める者は誰もいない。

元々シーラは学園の嫌われ者であり、そのおかげでヘンドリックとデイジーには被害者というイメージがいつも定着していたからだ。



「シーラ嬢、俺言い忘れてたけど……」

「……?」



突如頭上から聞こえた低い声に、シーラは彼を見上げた。

彼女と目を合わせた彼は、意地悪そうにニヤッと口角を上げた。



「――他人が自分より注目集めるの、あんまり好きじゃないんだよな……」

「え」



その瞬間、突然手を離されたシーラは強い力で腰を掴まれた。

気付いたときには、彼女は宙に浮いていた。



「キャッ!」



ヘンドリックが目の高さまでだったのに対し、彼は腕が伸びる限界まで彼女を持ち上げた。

そしてそのままクルクルと何周も回る。一見細身に見えるサイラスに、ここまでの力があったとは驚きだ。着痩せするタイプなのだろうか、と今さらながらに気付いた。



(め、目が回る……!)



こんな体験をしたのは、もちろん初めてである。というかダンス中にこのような光景など、滅多に見れるものではない。



「え、ええ~~~~!?」



元々ヘンドリックとデイジーに注目していた人々は、今度は一斉にシーラとサイラスに視線を注いだ。

シーラは何とか彼の肩を掴み、落とされないようにしがみつくので精一杯だった。助けてという彼女の願いは、もはやサイラスには届いてなどいない。



ダンス中のあまりにも異様な光景に、仲睦まじく踊っていたヘンドリックとデイジーですら呆気に取られていた。




読んでくださってありがとうございます!


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