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悪役令嬢ルートに入りました~今世は私がヒロインのようです~  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)


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44 ダンスパーティーの幕開け

それから数日後、いよいよアカデミー主催のダンスパーティーの日となった。

シーラは新しく住まいとなった侯爵家の別邸にて、鏡の前で黄色いシンプルなドレスに身を包んでいた。

今日はフリルは少なめにし、レースをたくさんあしらった上品なドレスを着用している。



髪の毛は後ろでシニヨンにまとめ、髪飾りを散りばめている。



「わぁ、お嬢様!とってもお似合いですね!」

「ありがとう、そう言ってもらえて嬉しいわ」



この日、彼女が着ていたのは特別な意味を持つドレスだった。

ダンスパーティーが開かれることを知った祖父ローガンが、数日前にシーラにドレスを贈ってくれたのである。

シーラはこれまで、家族から贈り物をされたことなんてほとんど無い。



(ローガンお祖父様が毎年領地から贈ってくださった誕生日プレゼントは、全て私の元に届いていなかったわ……)



最近知ったことだったが、ローガンのシーラへのプレゼントはこれまで全部義母セレナが勝手に処分したのだという。

当然ヘンドリックからの贈り物も無く、彼女は毎年寂しい誕生日を過ごす羽目になっていた。



しかし、セレナがいなくなったことでその心配は無くなった。

今まで気にかけてやれなかった分として、つい昨日もローガンから高級ティーセットを貰ったところだった。



(あのときと比べたら、今は夢みたいに快適だわ……)



シーラに付けられた心優しい専属侍女は、彼女の耳にイヤリングをはめた。



「お嬢様、とても美しいです。きっと学園中にいる令息たちがお嬢様に惚れてしまうに違いありません」

「学園中にいる令息たちが?そんなことは無いと思うけれど……」



そう言われて悪い気はしなかった。

準備を終えると、シーラはそのままエントランスへ向かった。



別邸に配属された使用人たちが、この家の主人であるシーラを揃って見送った。



「お嬢様、行ってらっしゃいませ。お嬢様にとって楽しい一日になりますように」

「ええ、ありがとう」



彼女は今までと違って自信に満ち溢れた笑みを浮かべ、馬車に乗り込んだ。



***



ダンスパーティーが行われるのは、アカデミーの敷地内にあるアリーナだ。

王立アカデミーは授業が行われる本棟以外にもいくつかの建物が併設されており、普段式典が行われるアリーナはその一つとなっている。



アンダーソン家の馬車で学園に到着したシーラは、御者の手を借りて大切なドレスが汚れないようにそっと降りた。

アカデミーに足を踏み入れると、華やかな装いをした生徒たちが視界に広がった。



―――『イベント:ダンスパーティーが始まりました』



男子生徒は黒や白の礼服に身を包み、女生徒は着飾った姿でそれぞれのパートナーに寄り添っている。

シーラは人混みの中で、ある人物を探した。



「――シーラ嬢」

「ダミアン様!」



自身を呼ぶ声に振り返ると、黒色の礼服を着たダミアンがこちらへ歩いてくるところだった。いつも下ろしている前髪を今日は上げている。



突然の生徒会メンバーの登場に、周囲の女子生徒たちが色めき立った。

ダミアンは本日のシーラのパートナーだった。



「今日はよろしくお願いします」

「こちらこそ、君のエスコートをすることができて光栄だよ。それにしても今日はとても綺麗だね」

「まぁ……」



売れ残りの自分を貰ってくれただけでも感謝しなければならないというのに、そんなお世辞まで言ってくれるとは。

シーラは差し出された手に自身の手を重ね、彼と会場までの道を歩いた。



「何だか騒がしいですね」

「一年に一度の行事だし、みんな興奮しているんだろう」



こんなにも生徒たちに落ち着きがないのは理由があった。



今日は意中の相手と踊ることができるかもしれない絶好のチャンスだ。

それにアカデミー内では身分は平等。そのため、普段手が届かなくて話しかけられないような相手ともダンスができるのである。



(みんなの狙いはきっとアルヴィン殿下やダミアン様、ヘンドリックにヴェントゥール大公子様……あたり高位貴族の令息と言ったところかしら?)



シーラとダミアンは二人並んでパーティー会場に入った。

ホールにはすでに多くの生徒たちが到着しており、ジュース片手に談笑している。



「あれって……アンダーソン令嬢?」

「きっとそうだわ……アンダーソン令嬢はあんなにも綺麗な人だったのね……」



いつもと雰囲気の違うシーラのドレス姿に、生徒たちは驚きを隠しきれていないようだった。



「クレアはまだ来ていないみたいですね」

「ああ、アルヴィンとクレアはきっと一番最後に来るだろうな。あの二人は他の生徒たちとは格が違うから」



いくら身分が平等なアカデミーとはいえ、アルヴィンとクレアに無礼な真似ができる者などそうそういない。

あの二人はこの中でもレベルが違うのだ。



「お、サイラスはいるぞ。相変わらず多くの女子に囲まれてるな」

「……ヴェントゥール大公子様は変わらないですね」



ダミアンの視線の先を追うと、女子生徒たちの群れの中で楽しそうに笑うサイラスの姿が目に入った。

この間のようにならないことを願うが、あの様子だとまたいつか女性問題を起こしてしまいそうである。



そして、会場にはシーラにとって因縁とも言えるあの二人の姿もあった。



「………ヘンドリック」



ホールの隅に、白い礼服のヘンドリックと赤いドレスを着るデイジーがいた。赤と言えば、ヘンドリックの色。平民である彼女にあんな高価なドレスを買えるほどの財力は無いはずだから、きっと彼が与えたのだろう。



その呟きを聞いたダミアンが、視界を遮るように前に出た。



「シーラ嬢、見なくていい。気にしなくていいんだ」

「ダミアン様……ありがとうございます」



ダミアンはシーラを庇うようにヘンドリックとの間に立ちはだかった。

やはり、彼をパートナーに選んでよかったと――彼女は心の底からそう思えた。



それから数分後、アルヴィンとクレアが会場に入場してきた。

パーティーに参加する生徒は彼らで最後だ。



第二王子のアルヴィンと次期王妃のクレア。

このアカデミーで最も高潔ともいえる二人の入場に、会場が静まり返った。



開式の挨拶として、壇上に上がったのは学園長のロイド王弟だった。



(あら……?例年通りなら副学園長が代理として挨拶を務めていたはずなのに……)



――どうして今年は彼が……?




読んでくださってありがとうございます!


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