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二度とあなたの妻にはならない  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)


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19/29

19 ダンスパーティーの練習

シーラは馬車に揺られ、アカデミーへとやって来た。

馬車から降りると、彼女はいつものように生徒たちからの注目を集めた。

平然と学園内を歩いている彼女が三度目の人生を歩んでいるということを、知る者は誰もいない。



(ところで、回帰しているのは私だけなのかしら?)



そんな疑問を抱きながら周囲の生徒たちを一瞥するも、誰も特に変わった様子はない。

やはり時を巻き戻ってきたのはシーラだけのようだ。



シーラは生徒たちの群れをかき分けて教室までの道のりを歩いた。

通りすがりの女子生徒が、横にいる友人に向かって楽しげに話しかけた。



「そういえば、もうすぐアカデミー主催のダンスパーティーがありますわよね?誰と踊るか決めました?」

「私、意中のマルティン令息を誘ってみようと思いますの」

「まぁ、素敵ですわね!」



(…………ダンスパーティー?)



その単語に、彼女はピタリと足を止めた。



王立アカデミーでは年に一度、催し物としてダンスパーティーが開かれる。

しかし、それがただのダンスパーティーではないことをシーラはよく知っている。



――貴族の子息息女が自らの地位や権力を誇示する場。

一言で言うなら、他人に自分がどれだけ人間として優れているかを見せつけるパーティーなのである。



表向きは親睦を深めるためのパーティーを装ってはいるものの、皆考えていることは同じ。

華やかな装いで参加し、どれだけ優れた相手とダンスをするかでその人の価値が決まるのだ。



(前世では躍起になってこれでもかってくらい準備していたけれど……今思うと本当にくだらない場ね)



いっそ参加せずに休んでしまいたい。

しかし、年に一度の一大行事を欠席でもしたら変な噂を立てられるのは避けられない。



――それに、今この状況で休んだら私がデイジーに対する負けを悟って逃げたみたいじゃない。



そのことを考えると、絶対に欠席するわけにはいかなかった。

だが、もうすぐとは言ってもまだ一ヵ月はある。



こんなに早くから考えることでもないだろうと思い、シーラは頭の中からダンスパーティーのことをかき消した。あの会には嫌な思い出もあるし、できることなら忘れてしまいたかった。

だが、しかし――



「――今日の一限は近いうちに行われるダンスパーティーの練習をしましょう。ダンスが得意な子もそうでない子も、一生懸命やるのよ」

「……」



朝のホームルームで担任教諭が口にした一言に、シーラは口をあんぐりと開けて固まった。

今からダンスパーティーの練習をするですって?たしかに、クラスには社交ダンスの経験がほとんど無い平民の生徒もいる。



しかし、王立アカデミーはほとんどが貴族の子供なのでいちいちダンスの練習なんてするまでも無いのではないか。

そんなシーラの心の内を読み取ったのか、教師が付け加えた。



「少数派の人間にいちいち合わせる必要は無い、なんて思っていませんか?」



――ギクッ。

気のせいか、先生の目がこちらを向いているような気がする。



「学園では全員が平等です。できない生徒がいたら、みんなで助けてあげましょう。それがこのアカデミーでのルールです」

「……」



思っていたことを当てられたうえに正論をかまされ、ぐうの音も出ない。

ホームルームが終わり、D組の生徒たちはダンスパーティーの練習をする大きなアリーナへと移動した。

一限が始まるまでにそこへ行かなければならない。



もちろんシーラも例外ではなく、どれだけ気が乗らなくても授業を欠席するわけにはいかない。

そんな彼女に、声をかけた人物がいた。



「――何だか浮かない顔をしているね、シーラ嬢」

「……アルヴィン殿下」



ちょうどすぐ後ろを歩いていたアルヴィンだった。彼もまた、アリーナまで移動中である。



「ダンスパーティーは好きではないのか?」

「……いえ、そういうわけではないんですけど」



――ただ、ダンスパーティーには良い思い出が無いだけです。

なんてそんなこと、彼の前で言えるはずが無かった。



一年の頃から、アカデミーのダンスパーティーはいつもシーラにとって地獄のような会だった。

特に第三学年のパーティーは彼女が大勢の前で恥をかいた場でもある。



彼女の婚約者であるヘンドリックはシーラには目もくれず、真っ先にデイジーの手を取ったのだ。しかも一度だけでは足りず、そのまま二回も三回もダンスを続けた。



そのせいでシーラは全校生徒から嘲笑される羽目になった。

彼女をダンスに誘う者は誰もおらず、シーラは広い会場でポツンと壁の花になっていた。



「……」



暗い顔になるシーラをじっと見つめていたアルヴィンが口を開いた。



「まぁ、そうなってしまうのも当然か。練習はA組との合同で行われるようだし」

「……………え。合同?A組?」



シーラは、朝のホームルームで大事な箇所を聞き逃していたのだ。



A組といえば、ヘンドリックとデイジーが所属しているクラスである。

そんな彼らと合同で授業をするということは……



(ヘンドリックとデイジーも練習に来るってこと――――!?)



他にも組がある中で、何故よりにもよってA組なんだ。

シーラは思わず、担任教師を恨んだ。




読んでくださってありがとうございます!


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