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赤い糸が見える悪役令嬢らしい私は王子との婚約を破棄したい  作者: あお


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9/36

きゅう


「実はね、原案を考えたのがお父さん、アリスのパパなのよ」


「……ほえ…?」


「そして友人とともに商品化に成功したの」


頬を染め、嬉しそうに告げるお母様に私は固まった。

小型カメラの発明はお父様で、お友達と一緒に商品にして売った…。

でもそもそもの話の始まりは、お母様が見たという男女の婚約破棄話だけど、カメラの検査の為にデータを取っていた男性に婚約破棄を告げられた女性は助けられて……。

あ、そっか。お父様の友人がフローズ商店の社長さんで、学生の頃に男気を見せたって話なのね!

そして婚約破棄された令嬢はお母様が知っている子。


なんだなんだ、そっかそっか。と納得しかけたが、そんなピンチな現場から助けたのなら、そのまま新しい恋が始まってもいいのにと思った。

確かフローズ商店の社長さんはエクシロン公爵家によく訪問しているし私も姿をみたことがある。だけど仕事だからか奥さんや恋人の姿は見たこともない。

もしや独身?でもそれなら話が変わってくる。

うーん、と首を傾げる私にお母様はクスクスと笑うと「もう答えは出たかしら?」と告げる。


「…なんとなくだけど、でも……わからないわ」


「ふふ、じゃあ正解を教えましょう。答えはとても簡単よ。何故お母さんがアイリスの婚約破棄に賛成なのか、何故この話をしたのか。それはね、今の話がお母さんの話だからよ」


「え…?」


お母様の話?なにが?どこからどこまで?

婚約破棄されたことも、婚約者じゃない男性に助けられたって話も、……え。


「ええぇぇええ!?」


「あら?驚くってことは違う考えだった?」


「だって!お母様とお父様は政略結婚だって!今の話なら恋愛結婚でしょ!?助けてくれたお父様に恋しちゃうやつ!」


「お父さんにとっては政略結婚みたいなものよ。だって発明家の道に進むはずのお父さんを私が無理やり婿養子にしてしまったのだもの」


お母様が無理やり!?


「アイリスの言った通り、お母さんはねお父さんに惚れてしまったの。いきなり婚約破棄を宣言されたことから親の承諾もなく子だけで婚約破棄は成立しないけど、公の場で自身の言葉の責任もとれない男にエクシロン公爵家の婿となる資格はないと、相手が撤回してきても突っぱねたわ。それで婚約は無事破棄され、私はあの時助けてくれたお父さんにすぐ婚約の申し入れをしたの。当時は女から男に婚約の申し込みすることはよく思われなかったけど、お父さんの家の爵位は公爵家よりも低く、しかも後を継ぐことがない三男の立場だったから、相手のご両親もすぐに受け入れてくれて、私は晴れて好きな人と結ばれたというわけよ」


当時のことを思い出したのかお母様は少しだけ悲しそうな、寂しそうな眼差しを見せる。

私はぎゅっとお母様の手を握った。

白くて細くて綺麗な、私よりも大きいお母様の手。


「……お父様はお母様のこと、好きだよ」


突然そう告げた私にお母様の目は少しだけ大きくなり、ふっと柔らかく細められる。


「わかっているわ。…でも少しだけ、お父さんの、あの人の夢の邪魔をしてしまったのではないか……って。でも後悔はしていないわ。お母さんは今幸せだから」


そうしてにこりと笑ったお母様からは、さっきまでみえていた悲しげな雰囲気は消え去っていた。

私は安堵してぎゅっとお母様の手を握っていた力を抜く。だけど手は離さず、重ねるように置いたままだ。


「…話は逸れたけど、こんな経験をしたお母さんだから、アイリスには我慢はしてほしくない、王子と合わないなら婚約破棄には賛成よ。でもこれからは我慢することなく気持ちを伝えること。いいわね?」


うなずきかけた私は口を閉じ、ちらりとお母様を見上げるとお母様は不思議そうに首を傾げた。


「……不敬罪になっちゃうけど、いいの?」


「……もしかして、第二王子のこと最初から気に入っていなかったの?」


流石はお母様。今回は私の少ない言葉の意味をしっかりと理解してくれたようだ。

でも、うん、なるほど。お母様は視線には弱いが言葉には強い。これは心のノートにメモをしっかりしておかなければならない。


「…うん…。だって、明らかに不機嫌そうだったし、それに……」


「それに?」


私は本当のことを話すべきかどうか悩んだ。

お家限定ではあるが、恋の助力者として有名な私が本当は運命の赤い糸が見えている、そして糸がしっかりと繋がっていることを確認したうえで、恋の後押しをしていると伝えてもいいのだろうかと。

もしかしたら糸で繋がっていないお父様とお母様を知ったら、お母様を傷つけてしまうのではないかと考えた結果、私はやっぱり本当のことを隠そうと思った。


続きを促すお母様に私は顔を上げて答える。


「…お母様には見えてなかったかもしれないけど、お茶会の場であの王子、きっと一目ぼれした令嬢がいるのよ。私たちの席にいてもずっと上の空だったし、実際に私が戻ってきて婚約が結ばれそうになっていたとき、すごい睨んできたわ」


「……つまり、お母さんはアリスちゃんだけじゃなく殿下の気持ちも考えずに婚約を受け入れてしまった、ということね……」


「ごめんなさいね」と謝罪するお母様に私は首を振る。


「お母様が悪いんじゃないわ。ちゃんと言わなかった私だって悪いもの」


「でも婚約成立する前に、一度持ち帰るとか言ってあとで断ればよかったと思うわ」


そういうことは出来たのね。と思いながら私はお母様を見上げた。


「不敬罪になりそうな言葉は聞こえないようお母様に耳打ちしなさい。まだ子供のうちは許されるわ。でも王妃教育が始まったらそうもいかなくなるから、その時は学園で学ぶ伝達魔法を使いなさい」


「伝達魔法…?」


「そうよ。一般的には拡張魔法とも呼ばれる魔法だけど、使い方によっては特定の人物のみに思考を伝える魔法でもあるの」


そんな魔法があることに私は驚きながら、あと5年後に通う学園生活に向けて私は意気込む。

使い方によっては、ということは少し工夫したやり方が必要な可能性もあるだろうから、魔法は使ってはいけなくとも今からできることはあるはずだ。

魔法の概念が書かれた本を読むとか、……お兄様たちに魔法を使っているところをみせてもらうとか。

……適当に考えたことだけど、それって結構イイ線いってるんじゃない?実際に使っているところをみれば、自分で使うときのイメージにもなるのだから。


私はワクワクとしながらお店に向かう途中、お兄様たちに頼みたいことを考える。

あれもこれもと考えていくうちに、どんなことをお願いしようとしたか、その内容をどんどん忘れていってしまうから、考えることは後にしようと決めて、馬車の中でお母様と一緒に過ごしたのだった。





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