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赤い糸が見える悪役令嬢らしい私は王子との婚約を破棄したい  作者: あお


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それから3年が経った。

9歳だったアイリスは12歳になり、遂に学園に通う。つまり夢で見てきた物語が始まるのである。


制服に身を包んだアイリスは学園を見上げていた。

空は入学するアイリスを歓迎しているかのような雲一つない快晴で、心地の良い気温で過ごしやすい。だからか、出てくるには少し早い蝶が舞うように飛んでいた。

そしてアイリスの視線の先には12歳から17歳までの全ての子供たちを収納できることから広大な大地を利用して設立されている、ぶっちゃけ王城や高位貴族の屋敷よりも遥かに立派な学園があった。


(遂に始まるのね)


アイリスはこの3年の間で起こった様々なことを振り返っていた。


運命の相手と再会できたウィリアムは、アイリスの予想とは外れ、最初はあまり乗り気ではなかったものの、逢瀬を重ねるうちにいい雰囲気となり、互いに意識し合う関係になっていた。

正直これはアイリスも面食らう。今までの運命の相手同士は、初対面から惹かれあっていたのだ。初めから恋情を抱かなくとも、互いに目を逸らせない、そんな光景を何度も見てきた。だからこそアイリスは首を傾げた。

だがそんな心配も杞憂だったようで、二人は徐々に距離が近くなり、エミリーも一年が経つ頃にはウィリアムとの別れを寂し気に感じるようになっていた。

そんな雰囲気の二人の間にアイリスが登場。

貴族、それも王族だと明かし、ウィリアムに変装を溶かせ婚約者だと名乗ると、予想通りエミリーは大きなショックを受けたようで顔を青ざめさせた。

その様子にアイリスは心を痛めたが、事情を説明し、婚約破棄を前提としてウィリアムの恋を応援していることを丁寧に話し始める。

そうしたことでやっと落ち着きを取り戻したエミリーは潤んだ眼差しでアイリスを見上げた。


『私は、あきらめなくていいのですか?』


震える声で尋ねられた時には夢の中の女性の気持ちがよくわかったような、そんな気分になったことは内緒だ。そして思わずエミリーをエリたんと呼んでしまいそうになったことも。

アイリスは公爵家の令嬢、そして王子の婚約者として受けてきた厳しい作法の成果を発揮してグッと堪えて、こう答えた。


『ええ、勿論よ。でもエミリー様は男爵令嬢、ウィリアム殿下の隣に立つにはもっと教養も礼儀作法も必要なの。貴方はそれを受け入れられますか?諦めることなく、頑張ることが出来ますか?』


『……はい。私あの方の隣に胸を張って並べるよう頑張ります!』


そして学園に通う直前、やっと二人は恋仲となった。

思わず見守っていたカリウスと共に手を合わせたが、思ったよりも大きな声を出してしまったことでアイリスは慌てて口を閉ざす。

そして二人は恋を楽しみつつ、エミリーはアイリスの母マリアベルから礼儀作法を学び始めた。


だがウィリアムの恋が順調な一方でアイリスの恋に進展はなかった。

会いたいと願っている運命の相手には出会うことが出来ず、情報も得ることが出来ないでいた。

一体どこにいるのか、もしかして存在しないのか、全ては自分の幼い頃にみた幻しだったのか、アイリスはそう思うようになっていた。


アイリスは学園に足を踏み入れた。

悪役令嬢という人の道を踏み外さない行動を心がけてきたものの、夢で見る物語はここからスタートすることからアイリスの心には不安が渦巻く。


だが夢とは違う展開に既に進んでいた。

アイリスは夢で得た知識で領地を更に発展させると、今度はその技術力を国の産業革命にも導入させた。勿論行動したのは父である公爵なわけだが、娘を溺愛する公爵は全てアイリスの功績とし、結果今ではアイリスという令嬢の名を知らない国民がいない程、名を轟かせた。

そして婚約者であるウィリアムとの関係も悪くなく、寧ろ運命の人との関係を手助けしうまくいっている。

このまま二人の愛が更に深り、エミリーが立派に成長すれば、アイリスの望む円満な婚約破棄も視野に入りつつあるというものだ。


だから悪役令嬢になることは有り得ない。

そのはずだと、アイリスは自身を無理やり納得させていた。


大きく息を吸い、そしてゆっくりと吐き出した。そうすることで随分と気持ちが楽になった。




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