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赤い糸が見える悪役令嬢らしい私は王子との婚約を破棄したい  作者: あお


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ウィリアムはドキドキした。

勉強をしないのならば普通の婚約関係を結んだ男女のような時間を持つことを期待していたのだ。

だがアイリスは否定した。

それも表情を変えずに告げるものだから、ウィリアムも戸惑いを見せる。


「違うわ」


「……え、違う?なんで?」


「なんで?貴方との婚約を円満に解消するためにはまだまだやることがあるもの」


「………」


ウィリアムは言葉を失った。

すっかり婚約解消を前提とした関係だったということを忘れてしまっていたからだ。

だが確かに、アイリスがウィリアムに勉強を教えていたのも、ウィリアムが恋をしたエミリーによく思われるようにするため。

ウィリアムのためであるが、アイリスとウィリアムの二人の未来のためにしたわけではなかった。いや、ある意味二人のためになるわけだが、ウィリアムの考えている意味ではなかった。

呆然とするウィリアムに気付かないアイリスは話し続ける。


「一般的な貴族に生まれれば、貴族学園に通うってことわかってるわよね。その中に絶対あなたの想い人もいるだろうけど、四年だけの学生期間で恋人関係になれるかはわからない。だってあなたはまだ私との婚約関係を解消していないもの」


(ゲームキの中では二年目くらいになって思いを伝えあって恋人になっていたわよね。恋人になる前はどうやって出会ったんだろう……)


アイリスは思考する。

小説とゲームキでは内容が違うと夢の中の女性は言っていたが、それでも展開は似たり寄ったりなはずだと、夢の中でみた展開を思い出していた。


(そうだわ。私が虐げたことがきっかげで殿下がエリたんに気付くのよ。そして二人は私を恋の障害のようにして盛り上がった……)


アイリスは理不尽な扱いにいい感情ではない気持ちを抱きそうになるが頭を振って振り払った。

ゲーム機内の内容はあくまでも人が作った話を元にした内容であり、現実世界で起こったわけではないからだ。

何故なら本当の現実世界はアイリスが今生きているこの世界。

それでもアイリスは夢の中の内容を参考までの情報と捉えていた。

これから起こる未来に備えるための情報の一つとして。


アイリスは声を小さくし体を前に倒した。

思わずウィリアムも複雑な感情を抱きながらも、アイリスの言葉を聞くために前のめりになる。


「……私と殿下はまだ婚約を解消できるようにはなっていない。つまりこのまま普通2学園へと入学しても、貴族令嬢として“お近づきになれない相手”が殿下に向けられる感情よ。ならどうやってエミリー様を手に入れるか………答えは一つしかないわ」


「…それはいったいなんだ?」


「学園に入る前にモノにするのよ」


「は?」


「変装して彼女と仲良くなるっていっているのよ」


名案でしょうと語りかけているかのように輝くアイリスの瞳を見て、ウィリアムは頷く前に息を飲み込むと踏みとどまった。

そして眉間にしわを寄せ表情を作るとアイリスに言う。


「……つまり俺に王子ではなく別人として近づき、付き合った後に正体を明かせと?それこそ王子だとわかった時距離を置かれるやつだろう。却下だ」


「本当に愛し合っているのなら身分は意味をなさないわ。それに殿下に惚れさせさえすれば、私よりももっと王妃に相応しい人と思われるよう努力するでしょ?それにこれは学園に入ってからじゃ間に合わないの」


「何故だ?」


「だって今度はあなたが彼女の面倒をみるからよ」


「え?」


ウィリアムは目を瞬いた。

アイリスはそんなウィリアムの反応を見ると怪訝な表情を浮かべる。


「……なに?私に彼女の世話をしろと言うの?」


「いや…そういうわけではないが……、それでもお前が力になってくれれば、助かる、だろ?」


しどろもどろに告げるウィリアムにアイリスは納得しながらも首を振る。


「確かに殿下に教えたように私が手取り足取り教えれば効率がいいと思うわ。でもそうしてしまうと、私の影響力が大きく見えてしまう。そうなったとき私より彼女を支持する者がいるかしら?」


「……それは……」


ウィリアムは口を閉ざした。

アイリスの言っている通りだと納得しているからか、渋い顔をする。

アイリスはそんなウィリアムに苦笑しながら小さく息を吐きだした。


「……もちろん最低限のことはするわ。でもこれは可能性の話で、まだ先の話。さっきも言ったように、今は殿下と彼女の交流を目的に行動しなきゃ」


ニコニコと微笑みながらウィリアムを見つめるアイリスに、ウィリアムは胸を高鳴らせながらも苦しい気持ちを抱く。

何故こんな気分になるのだろうかと、痛みを訴える心臓付近に目線を落とした。

そして小さく口を開くと、呟くように言った。


「…、そう、だな……」


アイリスは早速殿下を外に連れ出す口実を考える。

ここはどうだ。理由はこうしてはどうだ。とウィリアムに話しながら、イマイチ乗り気ではないウィリアムの反応に首を傾げたのだった。





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