表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤い糸が見える悪役令嬢らしい私は王子との婚約を破棄したい  作者: あお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/36

じゅういち






ひと月ぶりにやってきた王宮は変わらず豪華だった。

センスのいい内装だけでなく、庭も建物も全てにおいて手が込んでいる。

勿論エクシロン公爵家だって負けていないが“王宮”という固定概念だけでも圧倒されてしまいそうになるのは当然だろう。


私は護衛としてついてきた公爵家の騎士と別れ、執事に案内された部屋で第二王子を待った。

出された飲み物に遠慮なく口をつける。そしてお菓子にも手を伸ばした。

クッキーがないことは残念だが、フィナンシェも好物だから文句はない。


そうしてやってきた第二王子は部屋に足を踏み入れると舌打ちする。

私は思わず目を細めて王子の行動を冷めた目で見つめていた。

録画ボタン押してないうちに行動にでるのやめてよね。


「こんにちわ。ウィリアム殿下」


私は第二王子が姿を見せた瞬間に立ち上がり、にこやかに微笑むと頭を下げた。

五歳の頃から家庭教師に特訓させられたカーテシシーだ。完璧だろう。

当然文句のつけどころがない私を見た王子は何も言葉にすることなく腰を下ろす。


向かい側のソファに座ったが、私と対面したくない気持ちはまるわかりの為、ソファの端に座る第二王子に私は心の中で鼻を鳴らした。


「ウィリアム殿下、早速ですがお話がございます」


「俺はお前と話すことなんてない」


バッサリとぶった切る王子だが、想定内の反応だった為に私の笑みはびくともしなかった。

逆に余裕そうな私に王子の方がイラつきを増したようだ。


「…ではこちらを」


私は持っていた手紙を差し出した。

ちらりと視線を向ける王子に破り捨てられる前に、先手を打つ。


「エクシロン公爵家当主からの手紙です。この意味、わかりますよね?」


要するに“私とお前の個人間じゃねーんだぞ。親まで巻き込むのか。あぁん?”という意味だ。

伝わるかはわからないが、伝わらなかったら茶会ではなく勉強会を設けたほうがいいと助言するまでだ。

流石にバカのままではエリたんが可哀想だからね。

エリたんと私は話したこともないけど、ゲームキという端末の中のエリたんのことは一方的に知っているため、気持ち的にはもうお節介焼きなお姉さんポジションである。

同い年だけどね。


ちなみにゲームキの中のエリたんは本当に純粋で優しい心を持った女の子だ。

人が倒れていたら考える前に手を伸ばす。

人が悩んでいたら寄り添い、悲しんでいたら抱きしめてあげる。

婚約者持ちの男性もそんなエリたんに惹かれるが、エリたんは婚約者の女性の気持ちをしっかりと汲みとり、異性との間にはきちんと一線を敷く、そんなエリたんだから皆に愛されたのだ。

誤解していた人達も状況を理解すると婚約者と話し合い、和解する。

だけどエリたんだが唯一例外だったのが第二王子だった。

アイリスという婚約者を持っている男性に近付いてはいけないのに、エリたんは王子に惹かれてしまう。

姿を拝見できる事が嬉しいから、いつの間にか言葉を交わすことが、傍にいる時間が増えることが嬉しいと、自分の気持ちを抑えられなくなっていく。

それはエリたんだけではなく王子も同じだった。

そんな二人だからこそ、本来の婚約者であるアイリス、つまり私は怒りキツイ言葉を使ってエリたんを戒める。

間違ったことは言っていないからこそ、エリたんを心配する周りは関わることなく傍観者となった。

それをいいことにアイリスの行動はドンドンエスカレートしていき、そして悪役令嬢といわれるまでになったというのが真相だ。

つまり私がエリたんに意地悪しなければ悪役令嬢になることはないと、この一ヶ月の間に何度かみた夢で心底安心したものだ。


話を戻すがエリたんはみんなに愛される性格であることは間違いないのだが、おつむの方は少しばかり弱い。

馬鹿というわけではないが、成績優秀というほどでもない。

私と婚約破棄をしたあと二人は結ばれるが、それでもどちらも優秀というわけでもなかったからこそ、困難が降り注ぐ。


学生のうちに王妃教育が終わった私に対し、エリたんの王妃教育は緩やかな進み具合。

それでも民の評判は良く、王太子妃の座から降ろされることはないが、貴族からの評価は微妙だった。

勿論エリたんのことを好ましく思っている貴族もいたが、そうじゃない貴族もいる。悪く言うと真面目な馬鹿は騙されやすい。

王子もエリたんと然程変わらない状況だった。

エリたんと恋愛にうつつを抜かすことで頭をいっぱいにさせていた王子は、王や王妃が決めた側近はいたが、信頼できるほどに関係を築くことをしなかった。

つまり恋のライバルとして認識し敵判定してしまった王子は、エリたんのおかげである程度頭脳を鍛えることはできたが、政治の面では役立たずにしかならなかったのだ。

しかも相談なく決めることで信頼関係は構築することもなく終わり、悪を許すことができないエリたんと共に不正をしていた貴族たちをとことん没落させていく。

行為自体は悪いことではないが、人は良い人ばかりで構築すると、良い人の中から悪い人も出てくる。

『あの人がやらないから』等という不満は責任感に変わっていたが、いい人ばかりで構築されると『あの人が引き受けてくれる』等という怠惰な気持ちが生まれてくる。

結果うまく回っていたことがまわらなくなり、ボイコットや暴動に繋がった。

そして他国からの侵略に繋がる。


ここで王子はどうしたかというと、悪役令嬢として幽閉されていた私、アイリスを使い解決させたのだ。

罪を償うためにといい汚れ仕事を押し付ける。

攻撃系魔法も回復系魔法も優れていたアイリスは、一人で他国の兵と立ち向かったのだ。

いや、立ち向かわされられたのだ。


当然のようにあっけなく散ったアイリス。

そして侵略され捕虜となった国民たちを置いて、国王となった第二王子とエリたんは遠い場所へと逃げた。

ちなみにここで、エリたんは『俺に構わず逃げてくれ!』といった第二王子を置いていくことはできず、魔力で見えなかったはずの2人を繋ぐ赤い糸をみせる。

『私たちは運命で繋がっているの。だから貴方のそばが私のいるところ…』といって口づける。

結果二人一緒に逃げる選択肢を取ったわけだが、ここでエンドロールというものが入り第一幕は終わり。

続きは!?と思うところだが、他の攻略人物をクリアしないと続きはできないような設定らしい。

だから私はここまでしか知らないのだ。

だって夢の中の彼女、王子推しなのかわからないけどずっと同じことの繰り返しで先に進まないもの。


と、話を戻さないとね。


不機嫌そうにソファに座る第二王子はちらりと手紙に目線を向けると私から奪うように手紙を受け取った。

当主にしか扱えない家紋の印章が蠟に押され、一度も開封されていないことを確認すると、もたれかけている背を離し、封を切る。

そして目の動きが左右に動く王子を確認した私は静かに読み終えるまで待った。


「……ここに書かれているのは、本当のこと、なのか?」


「尊ばれる者に対し嘘などつきません」


私は小さく呟くように告げる第二王子にはっきりと笑顔で答えた。

口元を手で押さえ、何故か驚愕している第二王子が不思議だったが、そこはあえて気にしないでおく。


ちなみに手紙の内容はこんな感じだ。


まずエクシロン公爵家からの婚約に対する申し入れや打診は一切ないこと。

娘である私だけでなく、当人である第二王子の意見も尊重したいため、もし婚約を続けるうえで不服に思うことがあれば婚約解消を受け入れること。

勿論婚約解消にあたり王家との間にいざこざを持たせないし、今後も忠誠を誓うことも書いている。


ちなみに最後の言葉はゲームキ内の第二王子の言葉『あの女がエクシロン公爵の権力を嵩に、婚約破棄を受け入れないのだ』という言葉から書いた文面だ。

そして本気という意味を込めて、既にエクシロン公爵家側の記入事項を埋めた状態での婚約破棄に必要な書類も同梱している。


とにかく私が望んでいない婚約で、いつでも解消してやるわボケェ!ということを伝えたいがために書いてもらった手紙だ。

どうだ。流石に伝わっただろうと私は生唾を飲み込むと、王子は言った。


「……お前は本当に俺との婚姻を望んでいないのか」


「はい。私の命に誓い、望んではおりませんでした」


再度確かめるように質問された言葉に返すと少しの間、王子は顔を伏せた。

どんな表情をしているのかわからなかったが、どうかマシな頭をしててくれと願う。

夢の中で見た王子はアイリスに対しては最悪だが、エリたんに関しては理解がある男なのだ。


そして沈黙を破った王子の言葉に歓喜する。


「……悪かった」


よっしゃ!やった!やったよ!!


「構いません。殿下は将来王位に就く身です。いくら臣下であっても疑う心は捨ててはいけません。……それと今の場には私たちしかおりませんが、今後簡単に謝罪を口にすることはお控えください」



心の中で小躍りする私は必死で自身を押さえつけながら王子に対して礼儀を尽くした。

それでも心は晴れやかで緩む口元は押さえられずに笑みを浮かべていると、第二王子はふいっと顔をそらしながら一言だけつぶやく。


「……わかった」


不機嫌そうに聞こえるが、明らかに昨日とは違う王子の態度に私は十分に満足したのである。



■■

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ