16 それぞれの思惑 2
《エド王子視点》
俺はあの日、男子寮にいるコリンを見つけた。
見た瞬間はヒナタのほうだと思ったが、最近のあいつだったら鍵を使わない。
ドアにたどり着く前に解錠して、ドアノブを回すだけ。
コリンの部屋にはよく行っていて、
風子がコリンだった時よりも訪ねているぐらいだ。
だからよく知ってる。
鍵をガチャガチャやってるところを見れば、中身は風子だなと思った。
本人は誤魔化していたが。
俺はチャンスだと思って、当たり前のように部屋に入った。
あいつを女体化させてやろう。
ソファに座って、4次元化させている内ポケットから指輪を取り出した。
レベッカに変化させる指輪。
風子はなかなか近づいてこない。不審がっているのか?
俺は仕掛けた。
指輪をはめさせることに成功し、眼鏡を外して正体を暴いた。
彼女は本気で逃げようとすれば逃げられたんじゃないかと思う。
俺よりもコリンの方がレベルは上なんだ。
でも、結局風子は巨乳のレベッカに変化して俺の腕の中にいた。
そして、好奇心からなんだろうな。
身動き取れないところに、見慣れない巨乳があったからだろう。
自分で触ったんだ、あいつ。隙がありすぎる。
そんなこと目の前でされたら、衝動が抑えきれなくなってしまった。
誘っていると思われるとか、考えないのかよ。
そうして風子に迫っている最中で、念話がかかる。
……ガイアだった。
着信拒否の状態にした。
今を逃すわけにはいかないと思った。
でもガイアのやつ、何回も何回もかけてきやがって。
あと少しというところで、風子にまた拒まれるし。
まだしつこく念話もかかっていたので、
俺は念話に出る方を選んだ。
「どうした?」
「エド様、大変だ。ルーナが結婚してしまうかもしれない!」
驚いた。
俺は何故だか、ルーナは結婚しないと思い込んでいた。
他の女に迫っておきながら、彼女のことも逃したくないなんて。
わがままだってわかってる。
後のことは後で考えることにして、俺はルーナの元に向かうことにした。
この前、前世のときの夢を見た。
前世で別れたあとに実際にあった出来事だった。
そのことを、部屋の外にいた風子に聞いてみたら、
ヒナタとあいつは手を繋いで歩いていたのに対して、
俺の方はなんと、女と抱き合っていたらしい。
そういえばそうだったかも。
パズルのピースがハマったような感じがした。
風子の相手は俺ではないのかも。
俺は風子に気があるけど、ヒナタのことも好きなんだよな。
同性として。友人として。
風子のことを、なかなか諦められなかったが、
この瞬間に何かが変わろうとしていた。
ーーーーーーー
ガイアに聞いてやってきた王都中心街のレストラン。
1組の男女が席についているのが見えた。
近づいて行って女性…ルーナに声をかける。
彼女は驚き、相手の男も驚いていた。
俺も驚いた。
「ベンジャミン…」
「エド様」
しばらく俺を含めた全員が黙った。
状況を理解するのに時間がかかった。
俺の場合は、
なんでベンジャミンがここにいるのか、見合い相手はどこだ?
もしや、見合い相手=ベンジャミン……か?
迷った。
最初に口を開いたのはベンジャミンだった。
「エド様。私のために来てくださったのですか?」
奴は目をキラキラさせてこっちを見た。
はぁ?
何でオカマ野郎のためにわざわざ。
「つーか、お前! 男が好きだと言っていただろう。
何でここにいるんだ?」
「男が好き…そんなこと言ったかしら?」
「言っただろ!」
「私は男も女も好きよ。オーラに惹かれるのよね」
立ち上がって腕にしがみついてくる。
「やめろ!離せ」
俺とベンジャミンが揉み合っているのを、ルーナがぽかんとして見ていた。
店内を騒がせてしまったので、結局場所を移すことにした。
侯爵邸に向かった。
ルーナは道中塞ぎ込み、自分の部屋に篭ってしまった。
いろいろ混乱したようだ。
ベンジャミンはルーナの従兄弟にあたる。
そして、クロウの弟でもある。
俺はベンジャミンと話をした。
ルーナはお見合いをして、いい出会いがなかなかないので、
従兄弟同士の結婚を勧められたそうだ。
ベンジャミンも、いい歳をして独身。
形だけの結婚…というのも、実は貴族ではありがちだし、
(愛人がいたりするのも珍しくない)
きっかけはどうでも、始めてみようかということで話がまとまりかけていたそうだ。
「ルーナもね。ちょっと地味だけど、強いオーラがあるのよね。
それに、中和魔法の使い手同士の結婚って、聞いたことがないし。
希少な魔法の使い手が増えるならば、この結婚に意味はあると思ったの」
「お前、本当にベンジャミンか?」
落ち着いて話す様子は見たことがなかった。
「どういう意味よ?
私は私なりに考えてるのよ。
……あーあ。エド様が私を迎えに来てくれたと思ったのになぁ。
迎えに来たのはルーナの方だったのね。
そりゃそうよね…」
さすがのベンジャミンも、意気消沈していた。
そうして結局、ルーナとベンジャミンの見合い話は無くなった。




