13 王女と先輩の関係
王都中心部。
とあるレストランで、1組の男女が食事をしていた。
男性の方は、紫の髪色で、銀の眼帯を着けている。
露わになっている方の左目は漆黒。
女性の方も紫の髪色。瞳は紫。
メガネをかけた知的な感じの美女。
美男美女のカップルだった。
2人はざわざわした店内で、落ち着いた感じで、時々言葉を交わしていた。
楽しげな雰囲気ではないが、険悪なムードでもない。
そこに、1人の男が近づいて行った。
彼の姿を見て、女性は戸惑ったように瞳を揺らしたのだった。
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私はその日の夜、王女であるお姉ちゃんの部屋を訪ねた。
お姉ちゃんとは時々連絡を取り合っていた。
でも、そこに恋愛関係の話題は皆無だった。
アル先輩のことを聞いたこともないし、
他の縁談だったりのことも普段聞いたことがない。
私がエド王子の事を聞かれることも最近はなかった。
でも今日は、エド王子のイベントのことを相談するのと合わせて、
ついでにアル先輩のことも聞くつもりでやってきた。
私はまず、メインの目的である、乙女ゲームのイベントのことから説明を始めた。
お姉ちゃんも乙女ゲームを詳しくは知らなかったようだ。
まず、乙女ゲームを説明すると
「何それ面白そう。やってみたかったな」
と言った。
エド王子の事を説明すると
「えええええっ?お兄様がヒロインと結ばれる対象者ですって!?」
心底びっくりしていた。
一緒に育った兄妹としてはありえないことらしい。
失礼すぎるほど驚いていた。
エド王子、お姉ちゃんの前でどんな兄だったのだろうか?
私は、ヒナタに説明したように、学園の地下でドラゴンが地震を起こし、
エド王子が巻き込まれる危険性も説明した。
「エド王子を学園の外に足止めできないかな?」
「お兄様を…うーん、難しいわね。
理由を言えば余計に見に行ってしまうでしょうね。
珍しいことが大好きな人だから。
最近のお兄様のレベルを考えれば、そこまで危険にも感じないでしょうし。
やめろって言うと余計にやりたくなる人でもあるのよね」
「そうなんだ。…そうだよね」
「ちょっと方法を教えておくわね」
「ありがとう。
……ところで……」
「なに?」
私はアル先輩のことを聞こうとして躊躇う。
気まずいからできれば聞きたくない。
お姉ちゃんは、金の瞳に金色の髪の美女だ。
黒瞳、黒髪のレベッカとは対照的。
レベッカが闇なら、王女であるお姉ちゃんは光のような存在だ。
お姉ちゃんなら私みたいにうじうじと悩んだりしないのだろう。
一点の曇りもなく、最適な回答をすぐ導き出せているに違いない。
だけど、アル先輩にはヒナタのことで返答を迫られた。
これは私にとって重要なことだと思った。思い切って口を開く。
「アル先輩とはどうなってるのかなって。進展とかないの?」
「アルバート…さん?
えっと、ああ、そうね。
特に何もないわ」
「ダンスパーティーのパートナーだったって聞いたから」
「誘われたから…つき合いでね。それだけよ。
エドお兄様がアルバートさんと私をくっつけたがるのよ。
でも、何もないのよ」
お姉ちゃん、ちょっと顔が赤い。
恋愛の話題のせいかもしれない。
ヒナタに気があるらしいということを、お姉ちゃんは知っているのだろうか?
男性同士でちょっと仲が良すぎるくらいで噂になっている。
だけど、アル先輩の気持ちを勝手に人に言うのはどうなのか…躊躇った。
「風子の方はどうなの?
侯爵家に挨拶に行くって聞いてたけど。今日だったんでしょう?」
「ああ、それは…」
三角関係だなんて言えない。
途中でアル先輩がやってきたなんて言わない方がいいよね。
「挨拶に行っただけで、結婚とかはまだまだ先って感じかな〜」
エヘヘと笑って誤魔化した。
アル先輩と、王女は何でもないのか。
ってことは、先輩はヒナタのことは本気ということなのだろうか。
先輩とはもう一度話してみないといけない。
そう思った矢先、アル先輩から念話がかかってきた。
ヒナタが言っていた王都郊外の魔物が増えた件で、
私たちもガイアの護衛として魔物狩りに行こうという誘いだった。
私は、行くしかないと思った。
ヒナタの件も話したいし、
ゲームの内容やエド王子のイベントに関わることも相談したいと思ったのだ。




