11 何かの終わり
私はコリンの部屋で、エド王子にかなり本気で迫られていた。
エド王子は私の服を脱がせる寸前だった。
「まままま、待ってください」
私は彼の手を取って言う。
「なんだ?」
なんか怒ってるように見える。
「まだ心の準備が」
彼はしばらく動きを止めた。
不機嫌な感じで。
さっきからすごく焦っているようにも見えたし。
身体もめちゃくちゃ触られた。
「……はぁーっ。いいところだったのにな」
彼は急に私の身体を起こし、立ち上がらせ、部屋の扉に誘導した。
そして部屋から出そうとしてきた。
「エド様?」
「さっきから念話がかかってる、お前は外に出てろ」
私はポイっと部屋の外に出された。
私の寝室なんだけどな…。
彼は寝室で、誰かと念話で話しているようだった。
数分後。
彼は出てくると、
「急ぎの用事ができたから、もう帰る」
と言った。
真剣な顔だった。
部屋から出る直前、立ち止まって言った。
「前世で俺たちが別れた後、駅前で会ったことがあったよな?」
「えっ?」
「覚えてるか?」
駅前……
私は少しの間考えた。
重要な質問なのだろうか?
いつもみたいなふざけた雰囲気が皆無だったので、私も真面目に答えた。
「エドさ……貴くんは、もう誰か別の女の人と一緒にいたよね」
彼は、ハッとしたように目を見開いた。
「……最後はその人と抱き合ってた」
それは私が彼を見た最後の瞬間だった。
ずっと、あれが本当に彼なのか、確信が持てずにいた。
彼だったのか、そうでないのか。
曖昧なままで。
でも「もういいや」…そう、思えていた。
あの時、彼は過去の人になっていたのだと思う。
好きだった。でも、運命じゃなかった。
気持ちが無くなってみると、私は自分でも驚くほど冷静だった。
「そっか。……変なこと聞いて悪かったな」
彼はバタンと扉を閉めて去っていった。
なんだろう。
何かが終わってしまったような寂しさというか。
静かな部屋で1人でいると、虚しさが急に襲ってきた。
タイミングが悪かった……そんな言葉が浮かんでくる。
タイミングの問題ではないかもしれないけれど。
「帰ろう」
私は気持ちを振り切るように、女子寮の方に戻ることにした。
私は基本的にレベッカとして過ごしているので、
どちらかといえば、女子寮の方が居心地がいい。
変化を解いてコリンに戻ると、男子寮を出た。
途中、学園の校舎の立ち並ぶ物陰でレベッカに変化する。
手近なポケットに入れていた、巨乳のレベッカの指輪をはめた。
……そうそう。
これ、エド王子に返すのを忘れていたよね。
でも、このまま返さなくても良さそうな気がする。なんとなく。
悪用になってしまう…という意味と。
さっきのエド王子の雰囲気からして、
もうこの指輪を必要とする場面は来ないように思えたのだ。
私は黒い瞳に見えるメガネもかけた。
でも、よく考えたら、認識阻害の魔法を使って女子寮まで行けば楽だったのでは?
変化をしたり、解いたり、手間がかかるのだ。
うーん。
でも、認識阻害も、格上の人などには見破られる可能性は高い。
迷うところだった。
「レベッカ?」
誰かが声をかけてきた。
人気のない場所なのに。
声の聞こえた方を見ると、クロウが立っている。
クロウは、私の顔を見た後、
胸元を見て、その後また顔をちらりと見てから、
視線を彷徨わせた。
どこを見ていいんだかわからない様子だ。
そして、片手で口元を覆った。
明らかに動揺している。
「あ、あの〜、これはエド王子が作った変化の指輪で…」
言いながら一歩近づいたら、
クロウは一歩下がった。
あ、面白い。
もう一歩近づく。
クロウは一歩遠ざかる。
「どうしちゃったんですか?
怖いんですか?」
クロウも、かわいいところがあるんだと、親近感を覚える。
確かにこのレベッカは違和感あるよね。
さらに近づく。
「面白がっているんですか?」
クロウは少しイラついた様子を見せた。
「それもあるけど…ひゃっ!」
いきなり地面が揺れた。
立っているのがやっとなぐらいの揺れ。
地震だ!!
グラグラ揺れている。
クロウは直前まで苛立っていたけれど、
咄嗟に私を抱きとめて手を貸してくれていた。
しばらく経つと、地震は治まった。
「この世界でも地震って起きるんだ…」
呆然として私が言うと、
「そういえば、私も記憶にないですね。
この世界でも、遠い異国では良く起こっているようですが」
この世界では滅多に…というか、基本的に起こらないはずの地震が起きた。
このフラグには覚えがあった。
エド王子が関わっている。




