7 侯爵家訪問(準備)
私はあれから、エド王子からもらったブーツを履きこなせるように特訓した。
足音をさせないで歩けるため、重宝しそうだと思ったからだ。
コツを掴めば、割と普通に歩けるようになった。
この前は恥ずかしかったな…ヒナタとアル先輩の前で派手に転んで。
ヒナタに助け起こしてもらったんだ。
挙動不審で変な行動したのは私なのに。
2週間ほど経つが、あの2人は仲がいい。
本当によく見かけるようになってしまったのだ。
正直言って……めちゃくちゃ気になる!
彼らは今は同性同士だけど。
中身は前世の別れたカップルだ。
私が卒業時にヒナタと入れ替わり、コリンに戻ったときは、
レベッカとアルバート先輩の入れ替わりで再びカップル成立できてしまう。
水色の瞳のレベッカに、黒い瞳のアル先輩。
その時、私は男性としての人生を選んで後悔はしないのだろうか?
……………わからない。
でも、モヤモヤしてしまう。
側にヒナタがいないというのが、今さら考えられなくて。
時々レベル上げでどこかへ行ってしまうけど。
他の誰かのところに行ってしまうのが想像がつかなかった。
自分はエド王子に惹かれているというのに。
自分のことを棚に上げて…とは、こういうことを言うんだ。
だから、最終的に、どちらとも別の道を行きたいと思った。
男性の…コリンの身体を返してもらって、
ヒナタとも、エド王子とも別の人生を生きる。
結婚はせず。
変化の指輪を使えば、恋愛は続けられるのだろうか?
……でも、この世界の貴族、特にエド王子は王族だし、
彼は結婚することもあるだろう。
彼のことは解放すべきなんじゃないだろうか。
レベッカ…ヒナタだって、自分の選んだ人生を行くのだろう。
それがアル先輩と一緒という可能性もあるのだ。
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そんな考えが浮かんでいたある日。
ヒナタから呼び出された。
私達は、人気の少ない夕方の食堂の片隅でお茶をすることになった。
「話って何?」
私は平静を装って聞いた。
でも、何の用なのか、内心ではすごく気になっていたのだ。
最近ではあまり2人で話すこともなかった。
ヒナタはほとんど、アル先輩と一緒にいるんじゃないかと思えるぐらいに。
改めて見ると、やっぱりカッコいい。
自分の身体だけど。
乙女ゲームの攻略対象者なんだ。
でも私よりも馴染んでいて、男らしいんだ。
瞳の色を変えるためにメガネをかけているのもキュンとくるよね。
私より男らしく。
レベッカの時もカッコいい令嬢で。ヒナタってなんだかずるい。
自分が情けなくなる。
「実は侯爵家で、今さらだけど、婚約の顔合わせをしようって話が持ち上がってる。もうすぐ卒業だし、結婚の具体的な話を詰めようって…」
ヒナタが間を置いてから、そう切り出した。
「ええっ?」
とうとう結婚……?
「今までのんびりしすぎてたかもしれない。
でも、風子の気持ちは固まっていないんでしょう?
だからうまいこと言って、堅苦しくない感じで済むよう話を持っていってある」
「それはどうも…ありがとう…」
なぜだかお礼を言いながら、呆然としてしまう。
どうする?どうする?
衝撃だった。
でもあることを思いついた。
婚約は続行してても、結婚を先延ばしにすればいいんじゃない?
周囲を固められてる感じはするけれど。
「そういえば、ご両親は入れ替わりのことは知っているの?
入れ替わったままで行くことになるのかな?」
「両親とも、ある程度の事情は知っているよ。
俺の髪や目の色を考えれば、相手選びで贅沢は言っていられない。
歓迎されると思う。
俺は入れ替わったままで行っても構わないと思っているし、
そのつもりでいたんだけど」
「えっ、入れ替わったまま?」
ちょっとそれはどうなんだろう。
前世女子とはいえ、よその男…と、自分の大事な娘が入れ替わってるなんて。
不可抗力で自由に入れ替われないのならまだしも。
このまま初対面というのはどうなのだろう?
でも、入れ替わるのにキスする必要があるし。
もとはといえばヒナタからしてきたんだよね。
最初はけっこう無理矢理だったんだ!
被害者(?)としては堂々とするべきなのか……。
「それで、2人ともメガネだと不自然な場面も多いから、
瞳の色は別の魔道具で変えることが出来るようにしようと思ってね」
ヒナタはカチューシャを取り出した。
緑色だ。
イメージとしては瞳も緑になりそうだけど。
「これを嵌めると、瞳が黒くなる」
黒髪にグリーンのカチューシャか。
おしゃれにこだわってのことかもしれない。
私の好きな色でもあるし、コリンの色でもあるからな。
「今までのメガネにも使われていた魔法を応用してるんだ」
どうやらいつものメガネは、レンズが通っていない所は
認識阻害の魔法で見え方を調整していたらしい。
メガネをやめて、認識阻害に特化し、カチューシャ型にした。
というところだろう。
私はメガネを外して、カチューシャを頭にはめてみた。
「どう?変わった?」
「うん。いい感じだよ」
自分ではよくわからない。
後で鏡で見てみよう。
ただ、これを用意されているということは、
侯爵邸には行かないといけないんだろうなぁ。
私は内心ため息をついたのだった。




