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『死ぬほど愛されたい』と願ったら、最強の公爵家に転生して家族の愛が重すぎます!〜赤ちゃん令嬢は『慈愛の眼』で今日もデレを解析中〜  作者: 五十嵐紫
第2章:ハイハイ一歩で、国が揺れる

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庭園の魔力を吸い込む、驚異の赤子

騎士団のVIP警護を受けながら、私はついに「世界の果て」……もとい、公爵邸自慢の中庭へと到達した。


(ふあぁ……! 空が高い。そして、空気がおいしい!)


前世の私が吸っていたのは、サーバー室の乾燥した空気と、深夜のコンビニの揚げ物の匂い、そして同僚たちの溜息が混じった「絶望」という名の気体だった。

それに比べて、この庭の空気はどうだろう。

吸い込むたびに、細胞の一つ一つが「生きてるー!」と歓喜の声を上げているのがわかる。


《通知。大気中の魔素マナ濃度が上昇。……解析完了。この庭園は、伝説級の『世界樹の苗木』の加護を受けています。》


(世界樹の苗木!? さらっとすごいこと言わないでよ、システムさん)


見渡せば、見たこともないような七色に輝く花々が咲き乱れ、噴水からは宝石のような雫が舞い上がっている。

どうやら公爵家は、庭園の維持管理に「国家予算レベル」の魔導具をつぎ込んでいるらしい。


「レティシア、見てごらん。この『月の雫草』は、百年に一度しか咲かないと言われている。君の初陣ハイハイを祝って、一斉に開花したようだね」


パパが私の隣を並走(匍匐前進)しながら、熱っぽく語りかけてくる。

……パパ、お願いだから公爵の威厳を思い出して。騎士たちが後ろで「公爵様、お見事な這い方です!」って感動しちゃってるから。


「アラリック様、そんな珍しいだけの花よりも、こちらの『精霊のバラ』の方がレティシアにはお似合いですわ。さあ、レティシア。触れてごらんなさい。この花は純粋な魂を持つ者にしか心を開かないのですよ」


母様が優しく微笑み、大輪の青いバラを指差した。

私は好奇心に駆られ、ぷにぷにの指先でその花弁に触れてみた。


その瞬間――。


(あ、これ……最適化デバッグしなきゃ)


SEの職業病だろうか。

指先から伝わってきた「魔力の流れ」に、わずかな淀みを感じてしまった。

前世の私なら、迷わずキーボードを叩いてコードを書き換えていたところだ。

私は無意識のうちに、体内の魔力を指先に集中させ、その「淀み」へと流し込んだ。


《解。固有スキル【慈愛の眼】の派生機能を発動。……魔力回路の再構築リファクタリングを開始します。》

《最適化完了。対象の『精霊のバラ』を、『聖域の蒼華』へと進化させました。》


シュゥゥゥ……と静かな音がしたかと思うと、青いバラが白銀の光を放ち、周囲の魔素を猛烈な勢いで吸い込み始めた。


「な……ッ!?」


母様の声が裏返った。

それだけではない。私の周囲にいた数百人の騎士たちが、一斉に武器を落としてその場に膝をついた。


「バ、バラが……精霊王の加護を得た『聖花』に進化しただと……!?」

「あり得ん……! 伝説の聖女が一生を捧げて成し遂げる奇跡を、お嬢様は指先一つで……!」


(え、やだ。私、また何かやっちゃいました?)


私は慌てて指を離したが、時すでに遅し。

進化した花からは、溢れんばかりの純粋な魔力が霧となって流れ出し、私の体……というか、おむつのあたりを優しく包み込んだ。


《報告。個体名:レティシアの体内魔力プールが枯渇。……自動復旧オートリカバリを開始します。周囲の魔素を強制吸引します。》


「ふぇ……あうっ!?」


私の体が、まるでダイソンの掃除機になったかのような感覚。

庭園中の魔力が、渦を巻いて私の小さな体に吸い込まれていく。

それを見たパパが、顔を真っ青にして叫んだ。


「いかん! レティシアの魔力回路が爆発してしまう! シエル、すぐに抑制結界を――!」


「……いえ、父上。必要ありません。見てください、あの穏やかな表情を」


シエルお兄様が、震える手で魔導書を落としそうになりながらも、私を凝視していた。


「レティシアは、吸い込んだ魔力を……一瞬で『自分のもの』にしています。通常なら数十年かかる魔力の純化を、瞬きする間に……。彼女の魂は、この庭園の魔力程度では満たされないほど、広大で深いということだ」


お兄様の解析(という名の妄想)が止まらない。

実際は、私のシステムさんがバックグラウンドで「超高速圧縮保存」してくれているだけなんだけど。


「ああ……なんてこと。レティシア、あなたはどれだけ私たちを驚かせたら気が済むの……っ!」


母様は感極まって、進化した花の前で祈るように手を合わせた。

すると、私の頭上にふわふわと小さな光の粒が集まってきた。


《感知。下級精霊……いいえ、精霊の王たちがあなたの魔力に惹かれて集結しています。……交流を希望しているようです。》


(精霊さん? これ、もしかして……もふもふ系?)


目の前に現れたのは、小さな子犬のような姿をした光の塊。

それが私の鼻の先に「つん」と触れた。


「あぅ! きゃはは!」


私が笑い声を上げると、庭園中の木々が一斉にザワザワと揺れ、見たこともないような色鮮やかな蝶たちが舞い上がった。

枯れていた古木からは新芽が噴き出し、池の水は一瞬でクリスタルのような透明度を取り戻していく。


「……奇跡だ。これはもはや、降臨だ」


騎士団長が涙を流しながら、私のハイハイしているルートに頭を擦りつけている。


「レティシアお嬢様万歳! グランヴェルの女神様万歳!」

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