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『死ぬほど愛されたい』と願ったら、最強の公爵家に転生して家族の愛が重すぎます!〜赤ちゃん令嬢は『慈愛の眼』で今日もデレを解析中〜  作者: 五十嵐紫
第14章:国際プロトコル編:聖教国が『通信遮断の経済制裁』を通知? 聖女、独自の国際標準(L-Protocol)をデプロイします

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世界からの孤立? 聖教国の『通信同盟』が王国をパケット鎖国に追い込んできました

「……なるほどね。サイバー攻撃(テロ)でデータが壊せないと分かったら、今度は『法的なパケット鎖国』を仕掛けてきたわけだ。……本当に、前世の国際政治の嫌がらせをそのままファンタジーに落とし込んだような、絵に描いたようなベンダーロックインね」


飛行魔導要塞からのマスターキー奪還作戦から数日。王国の資産データベースは完全に復旧し、街には再び活気が戻っていました。しかし、平和な時間は長くは続きません。


王宮の秘密会議室に集まった私たちグランヴェルの面々とユリウス王子の前には、世界樹から出力された「周辺国家からの共同通告書」の山が積み上げられていました。


《緊急報告。……西の教皇庁を中心とする『聖魔導通信同盟』加盟の12カ国が、我が国に対する『国際魔導通信の即時遮断(パケット禁輸)』を宣言。……これより、他国との間で交わされていた貿易決済パケット、地脈回線のルーティングが順次遮断されます。》


(……要するに、インターネットの国際回線(海底ケーブル)を元栓から引っこ抜かれたようなものね。……さすがにこれは、国内のサーバー(世界樹)をいくら強化しても、外と繋がらないんじゃ片手落ちだわ)


「レティシア、状況は極めて深刻だ」


ユリウス王子が、いつになく険しい表情でL-Padの画面を見せてきました。そこには、王国の周囲を取り囲む諸国の国境線が、真っ赤な「通信遮断壁」として表示されています。


「……聖教国は周辺国に対し、『王国のL-NETは悪魔のバグに汚染された異端の通信である』と虚偽の触れ回りをしている。そして、彼らが利権を握る古い通信規格『Holy-Link(ホーリー・リンク)』を使わない国とは、一切の貿易を行わないと脅迫したんだ。結果、我が国と繋がっていた隣国(他国)の地脈ルーターが、次々と接続を拒否(ドロップ)し始めている」


「……つまり、情報の孤立化による、経済的な干殺し作戦だね」


シエルお兄様が、自身のL-Padで貿易データのシミュレーションを走らせながら、苦しげに唇を噛みました。


「……レティシア、このまま国際通信が完全にストップすると、他国との間でリアルタイムに行っていた農産物や魔導鉱石の取引がすべて停止する。……決済の確認すら数週間かかる昔の『手紙(馬車)』の時代に逆戻りだ。……数ヶ月で、王国の経済損失は天文学的な数字になるよ!」


「……ふん。馬車に手紙だって? そんなの、今更遅すぎて耐えられるわけがないじゃない」


私は椅子の上で、小さな腕を組んで鼻で笑いました。


「……お兄様、ユリウス様。……慌てる必要はこれっぽっちもないわ。……聖教国が誇るその『Holy-Link』とかいう古い規格、そもそもパケットのパリティチェック(エラー検出)すら満足にできない、数世代前のポンコツ通信プロトコルでしょう?」


「……あ、ああ。……確かに、速度も遅いし、セキュリティもガタガタだけど……周辺の国々はみんな、教皇庁に高いライセンス料(お布施)を払って、その規格を使い続けるしかないんだ。他に選択肢がないからね」


シエルお兄様の言葉に、私は不敵な、元SEとしての「最悪の笑み」を浮かべました。


「……選択肢がないなら、私たちが『圧倒的に安くて、圧倒的に速い、最高品質の選択肢』を作って、世界にばら撒いてあげればいいのよ」


「ばら撒く……? ……他国に、我が国の技術を売るということかい?」


ユリウス王子が目を見開きました。


「いいえ、ユリウス様。『売る』んじゃないわ。……我がグランヴェル家が開発した新しい国際通信規格『L-Protocol(エル・プロトコル)』のソースコード(魔法陣の設計図)を、全世界の国々に**【完全無償(オープンソース)】**で公開・提供するのよ!」


「なっ……無償公開!?」


シエルお兄様が驚愕のあまり、L-Padのペンを床に落としました。

その横で、これまでじっと話を聞いていたお父様が、自身の隆々たる大胸筋をドンドンと叩きながら、豪快に笑い声を上げました。


「ガハハハ! よく分からんが、レティシア! 『タダで全部くれてやる』ということだな!? 敵の陣地に、こちらの最高級の武器をタダで投げ込んでやるようなものか! パパの筋肉の突撃並みに破天荒で最高にスリリングだぞ!」


「お父様、ちょっと違うけど、勢いとしては正解よ。……いい? 通信の世界において、一番強いのは『技術を独占している奴』じゃないわ。……**『一番多くの人(国)に使われている規格(プラットフォーム)』**を握っている奴が、絶対的な支配者(神)になるのよ」


私はL-Padを叩き、プロトコルが世界に普及した際の「ネットワーク効果(価値の爆発)」を予測する数式を、空中に展開しました。


Network_Value(n) = Standard_Adoption * (n * (n - 1)) / 2 * Protocol_Efficiency


変数の定義:


 ・Network_Value(n): 接続された国家数 n における、ネットワーク全体の経済的・通信的価値


 ・Standard_Adoption: プロトコルの普及率(無償化により爆発的に上昇)


 ・n: 『L-Protocol』を採用した国(ノード)の総数


 ・Protocol_Efficiency: 新規格の通信効率(Holy-Linkの約800倍)


「……メトカーフの法則(ネットワークの価値はユーザー数の二乗に比例する)の、魔導プロトコル拡張版よ。……聖教国は、高いライセンス料を取って『Holy-Link』を囲い込んでいる。……そこに、私たちが『800倍速くて、セキュリティが完璧で、しかも永年無料』のプロトコルを市場(世界)に投入したら、周辺国のエンジニア(魔導師)たちはどう動くと思う?」


私の問いかけに、シエルお兄様がハッと息を呑みました。


「……僕なら……絶対に『L-Protocol』に乗り換える。……高いお金を払って遅いシステムを使うなんて、技術者としても、国家の財政としても愚の骨頂だからね……!」


「その通りよ、お兄様。……周辺国も、聖教国の横暴や高いライセンス料には、内心うんざりしていたはずなの。……これまでは『代わりのシステム』がなかったから従っていただけ。……私たちがオープンソースとしてインフラの設計図を配れば、周辺国は聖教国の制裁(命令)を無視して、こっそり、あるいは堂々と『L-Protocol』を自国のルーターにデプロイ(実装)し始めるわ」


「……なるほど」


ユリウス王子の冷徹な瞳に、底知れない感心の光が灯りました。


「……聖教国が我が国を『パケット鎖国』にしようとした網の目を、逆に周辺国をこちらの味方(ユーザー)に引き込むことで、聖教国側を『孤立』させるというわけだね。……情報の民主化による、全方位の逆包囲網か。……恐ろしい三歳児だ」


「フフ、ユリウス様。……これは戦争じゃないわ。……単なる**『市場のデファクトスタンダード(事実上の国際標準)の塗り替え』**よ。……あちらの教皇様には、自分たちの古い通信規格(Holy-Link)が、誰にも使われない『ただの遺物』になっていく恐怖を、特等席で味わってもらいましょう」


私は、L-Padの画面に『L-Protocol v1.0.0 - Global Release』の文字を入力し、世界樹の送信キュー(待機列)へとセットしました。


《システム。……『L-Protocol』の全世界一斉ブロードキャスト(無償配布)の準備が完了しました。……遮断された国境線の隙間を縫って、各国の魔導師ギルドの公開メールボックス(地脈ポスト)へダイレクトに設計図をインジェクションします。》


「……さぁ、お兄様。世界を私たちの『L-Protocol』で上書きするわよ! ――エンター(送信)キーを押して!」


「――了解、レティシア! ……世界中のルーターを、僕たちのコードで染め上げてみせる! ――リリース!!」


シエルお兄様が、私の小さな指と一緒に、L-Padの実行キーを強く押し込みました。

その瞬間、世界樹の天辺から、緑色の「光のパケット」が、国境の遮断壁を軽々と飛び越えて、大陸全土へと向けて音もなく拡散していきました。


聖教国が仕掛けた「通信制裁」という名の高い壁。

しかし、レティシアが放った「オープンソース」という名の最強のフリーパスは、その壁の土台を、内側から瞬時に崩壊させようとしていたのです。


デジタル技術の標準化を巡る、大陸規模の「プロトコル戦争」が、今ここに幕を開けました。

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