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『死ぬほど愛されたい』と願ったら、最強の公爵家に転生して家族の愛が重すぎます!〜赤ちゃん令嬢は『慈愛の眼』で今日もデレを解析中〜  作者: 五十嵐紫
第10章:王都凱旋編:国王陛下が『全土ネットワーク』の管理者権限を求めてきました

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緊急アラート? 聖教国からの『強制アップデート(軍事介入)』

「……ちょっと、システムさん。昨日の『スパム攻撃』、やりすぎちゃったかしら? 王宮の地脈がかつてないほど安定したのはいいけど、西の空から飛んできている『これ』、明らかに正常なパケット(魔力)じゃないわよね」


翌朝、王宮のバルコニーで冷めたココアを飲んでいた私は、西の空――聖教国の方向から迫りくる、巨大な「光の輪」を眺めていました。それは雲を割り、空の色を強制的に塗り替えながら、不気味な速度で王都へと接近していました。


(……ねぇ、解析できる?)


《解。……対象は聖教国の広域殲滅術式『審判の光(ジャッジメント・レイ)』の変異種と推定。……ただし、純粋な破壊魔法ではありません。……術式内部に、王宮の結界を強制的に上書き(オーバーライド)し、管理者権限を再取得するための『不正プログラム』が組み込まれています。……いわば、物理的な破壊を伴う『強制システムアップデート』です。》


(……一方的な仕様変更、それも武力行使を伴うなんて。……開発者の倫理観を疑うわね。……これはもはや、宣戦布告(プッシュ通知)よ)


「レティシア様! 大変です! 王宮の結界魔導師たちが、次々と意識を失っております!」


セバスが、転ばんばかりの勢いでバルコニーに駆け込んできました。その後ろには、すでに武装を整えたお父様とお兄様も続いています。


「……レティシア、あれは何だ!? パパの勘が『あれは斬っても斬れない面倒なやつだ』と言っているぞ!」


「お父様、正解です。……あれは光の形をした『悪質なファームウェア』よ。……王宮の古い結界に自分たちのコードを流し込んで、この国全体の機能を停止させようとしているの」


「……そんなことが可能なのかい!? ……あんな巨大な術式、維持するだけでも数千人の魔導師が必要なはずだ!」


お兄様がL-Padの観測データを見て絶句しています。


「……聖教国は、数百年かけて国民から魔力を『吸い上げる』集金システム(税制ならぬ魔制)を完成させているのよ。……彼らにとって、個人の意志なんてただのリソースに過ぎない。……だからこそ、あんな非人道的な『巨大クエリ』を投げられるの」


私はココアのカップを置くと、L-Padを両手で構え、空中に何十枚ものウィンドウを展開しました。


「……陛下に伝えて。……ここからは『国家防衛(セキュリティ)』のフェーズに入るわ。……王宮の騎士団も、街の自警団も、一歩も動かないで。……物理的な干渉は、かえってウイルスの感染を広げるだけよ」


「……レティシア、お前一人でやるつもりか!? ……パパにも何か手伝わせてくれ!」


「お父様には、大事な役割があります。……これから私が、王国全土のL-Padから『演算リソース』を一時的に徴用します。……その際、ネットワークに負荷がかかって、国民がパニックになるはず。……お父様は、SNS(L-TALK)で『これは公式のメンテナンスだから安心しろ』と、力強い投稿(つぶやき)を連投してください!」


「……わ、わかった! 『パパが守ってやるから安心しろ!』と、全力で連投しよう!」


お父様が必死にL-Padを叩き始めました。……うん、ある意味、最強の広報(広報)担当ね。


空に浮かぶ「審判の光」が、王都の真上に到達しました。


巨大な魔法陣から、細い光の糸が無数に降り注ぎ、王宮の屋根や壁に触れた瞬間、パチパチと紫色の火花を散らします。


《警告。……外部からの不正アクセス、第一層を突破。……王宮の全システムを凍結(フリーズ)させるコードが流し込まれています。……このままでは、あと300秒で王国の全魔導具が停止します。》


「……させないわよ。……『中央集権』が負けるなら、こっちは『分散処理』の力で押し切るだけ。……お兄様、私の演算をサポートして!」


「……了解だ! ……レティシア、君の『盾』の仕様書は、僕の頭に入っているよ!」


私はL-Padのインターフェースを、通常のキーボードから「スロットル・コントローラー型」に切り替えました。……まるで、巨大な獲物を釣り上げる『釣り竿』のような感覚で、空からの魔力を「フック」し、受け流すための操作感。


「……王国中のL-Padユーザー……15万人。……今だけ、みんなの『アイドルタイム(空き魔力)』を借りるわよ。――『動的防衛クラスタ(ダイナミック・シールド・メッシュ)』、起動!!」


私は、空に向かって複雑な「防御数式」を撃ち込みました。


S_def = ∫ (P_i * dV) / R^2


変数の定義:


S_{def}: シールドの空間密度


P_i: 各ユーザーから徴用した分散魔力パケット


dV: 王都の上空を覆う微小体積


R: 攻撃源(審判の光)からの距離


「――見せてあげるわ。……これが、個人の意志(パケット)を繋いだ『民主的な防御壁』よ!!」


私がL-Padのレバーを引き上げると、王都中の家々、路地、そして騎士たちの手元から、淡い青色の光が立ち上りました。


その光は空中で網目状に繋がり、聖教国から降り注ぐ「強制アップデートの光」を、パチン! と弾き返したのです。


「……な、なんだ!? 空が……空が青い網に包まれている!」


「……見て! 聖教国の光が、霧散していくぞ!」


街中の人々が空を見上げて叫びます。


聖教国の「巨大な一撃(一括処理)」は、レティシアが構築した「無数の小さな盾(分散処理)」によって、そのエネルギーを細分化され、完全に無力化されていきました。


「……クッ。……まだ、終わらないわ。……システムさん、敵の『送信元(IPアドレス)』は固定されてる?」


《肯定。……聖教国・中央大聖堂の地下にある、巨大魔導炉からの定点送信です。……逆ハッキングによる『強制シャットダウン』が可能です。》


「……やりなさい。……『仕様変更を押し付けるなら、自分たちのシステムの脆弱性を直してからにしなさい』……って、エラーメッセージを添えて送り返して!」


私は、弾き返した光のエネルギーを、そのまま「巨大な返信パケット」に変換し、西の空へと射出しました。


数秒後。


西の地平線で、一瞬だけ眩しい閃光が走りました。


聖教国を統べる「教皇庁」のシステムが、レティシアからの『強烈なエラー返信』を受け取り、物理的にショートした証拠でした。


空を覆っていた魔法陣が、ガラスが割れるような音を立てて崩壊していきます。


王都に、再び平和な朝日が差し込みました。


「……ふぅ。……リリース後の不具合対応(緊急デバッグ)にしては、ちょっとハードすぎたわね……」


私はその場に膝をつきました。


15万人の魔力を同時に制御(ハンドリング)した反動で、視界がチカチカと点滅しています。


「レティシア! 大丈夫か!」


お父様が駆け寄り、私を抱き上げました。


お兄様も、自分のL-Padで「敵システム停止」のログを確認し、安堵の涙を浮かべています。


「……レティシア。君は……また世界を救ってしまったんだね。……しかも、今度は『国民全員の力』を借りて」


「……お兄様、借りた魔力は……後でちゃんと、通信速度の向上(キャッシュの最適化)で返しておくわ……」


私はお父様の腕の中で、うとうとと目を閉じました。


しかし、その時、L-Padに一通の「重要通知」が届きました。


《通知。……聖教国からの通信は途絶しましたが、王宮内部から新たな『管理者ログイン』を検知しました。……場所は、陛下の私室。……ログインID:【ユリウス・フォン・王太子】。》


(……ユリウス王子……? ……まさか、この混乱に乗じて、私のシステムの『バックドア』を自分で作ろうとしているの?)


三歳の聖女は、休む暇もなく訪れる「身内の不具合(裏切り)」の予感に、小さく溜息をつくのでした。


【第10章 完】

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