↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『死ぬほど愛されたい』と願ったら、最強の公爵家に転生して家族の愛が重すぎます!〜赤ちゃん令嬢は『慈愛の眼』で今日もデレを解析中〜  作者: 五十嵐紫
第10章:王都凱旋編:国王陛下が『全土ネットワーク』の管理者権限を求めてきました

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/60

バックドア発見? 王宮の地下に潜む『古いプログラムの残滓』

「……はぁ。騎士団の全員に『同期(シンクロ)設定』を叩き込むだけで、私の脳内メモリがオーバーヒート寸前だわ。……でも、おかげで見つけちゃった。この王宮、表面は綺麗に掃除されているけど、地下の『ソースコード』は埃まみれのスパゲッティ状態じゃない」


王宮の豪華な廊下。私は訓練を終えて自室に戻るフリをしながら、隠し持ったL-Padで壁の裏側に流れる「魔力の奔流(パケット)」を追っていました。


(……ねぇ、システムさん。さっきから地下三階付近で、私の『L-NET』と干渉している奇妙な通信があるわよね? 定期的なビーコン信号……これって、まさか)


《解。……王宮地下最深部より、暗号化された不審なパケット(バックドア)を検知。……通信プロトコルは現在の王国標準ではなく、三百年以上前の『旧聖教式』です。……内部から外部へ、何らかのデータを継続的に送信(リーク)している形跡があります。》


(……三百年も前のバックドアが、いまだに現役で動いてるの? ……信じられない。この国の情報セキュリティ、ザルどころか底が抜けてるじゃない!)


「レティシア、どこへ行くんだい? 部屋はあっちだよ」


背後から声をかけてきたのは、私の異変を察知してついてきたお兄様のシエルでした。彼は私がL-Padに表示している「地脈の構造図」を覗き込み、表情を強張らせました。


「……これは、王宮の結界(ファイアウォール)のログ? ……待って、この赤い点滅は何だい? まるで王宮の心臓部に、毒を流し込んでいるような……」


「お兄様、お静かに。……これ、毒じゃなくて『盗聴器(スニッファー)』よ。……誰かが数百年前から、この玉座で交わされる会話や魔導情報を、ずっとどこかへ転送し続けているの。……しかも、今の王宮の魔導師たちは、誰一人これに気づいていないわ」


「……っ、国家反逆どころの騒ぎじゃないよ! ……レティシア、パパを呼んでこようか?」


「いえ、お父様を呼んだら物理的に地下を爆破しちゃうでしょ。……まずは私が、この『バグ』の正体を突き止めるわ。……お兄様、私のバックアップ(演算補助)をお願いできる?」


「……もちろんだよ。君を一人で行かせるわけにはいかないからね」


私たちは、誰もいない深夜の王宮を、忍び足で地下へと降りました。

古いワインセラーのさらに奥。隠し扉を開けた先には、カビと埃の臭いが立ち込める、忘れ去られた「魔導演算室」がありました。


部屋の中央には、巨大な水晶柱が何本も立ち並び、それらが不気味な紫色の光を放ちながら、微かに振動していました。


「……うわぁ、ひどい有様。……ケーブル(魔力回路)が複雑に絡まりすぎて、ショートしていないのが不思議なくらいだわ」


私は顔を顰めました。そこには、王国の建国当時に作られたであろう「初代の結界OS」が、継ぎ接ぎだらけのまま、異様な音を立てて稼働していたのです。


「……レティシア、見て! あの壁に刻まれた文字……『我、この地に理(コード)を刻み、永遠の監視を約束せん』。……これって、伝説の初代聖女様の言葉じゃないか?」


「……『永遠の監視』? ……ふん、かっこいい言い方をしているけど、要するに『子孫たちが何をやっているか、死んでも監視し続けてやる』っていう、執念深い管理者の呪いよ」


私は水晶柱の一つに手を触れ、ハッキングを開始しました。


[ 実行コマンド: Scan_System_Root ]

[ 状態: 深刻なメモリリーク、不明なバックドアプロセスが多数稼働中 ]


すると突然、部屋の空気が凍りつき、水晶柱の光が赤く染まりました。


《警告。……未承認のアクセスを検知。……守護プログラム『レガシー・センチネル』を起動します。……侵入者をデリート(削除)せよ。》


「……ひっ!? レ、レティシア、何か出てきたよ!」


水晶から漏れ出した魔力が凝縮し、半透明の「古い騎士」の姿をしたセキュリティプログラムが、剣を抜いて私たちに襲いかかってきました。


「……お兄様、動かないで! ――『ファイアウォール・オーバーライド』!!」


私はL-Padを操作し、相手の攻撃プログラムに直接、エラーを誘発させるコードを流し込みました。


Error_Induction = (Input_Vector / 0) + Null_Pointer_Exception


※ここで『0除算』を強制的に実行させ、プログラムの論理を崩壊させます。


騎士の姿をしたプログラムは、剣を振り下ろそうとした瞬間にガクガクと震え出し、その輪郭がノイズのように乱れました。


「……今のうちに、心臓部(コア)の書き換えを行うわ! お兄様、この数式を入力して! 隣の水晶の共振周波数を書き換えて!」

「わ、わかった! ……ええと、こうだね!」


シエルが入力した数式:

f_res = 1 / (2 * π * sqrt(L * C))


「……よし、共振を止めたわ! ……システムさん、このバックドアの送信先を特定して!」


《了解。……通信先をトレース。……送信先は、西方の『聖教国・教皇庁』にある秘匿サーバーです。……三百年間にわたり、王国の全軍事データが共有され続けていました。》


(……やっぱり。……この国、隣の宗教国家に完全に『リモート操作(遠隔支配)』されていたのね。……聖女なんて呼ばれている私も、あっちから見れば、ただの『追加プログラム(パーツ)』だったってわけか)


私は冷たい怒りを感じながら、キーボードを叩き続けました。


「……勝手にバックドアを開けておいて、監視を続けていたなんて……。……開発者(聖女)の面汚しもいいところよ。……今すぐこの接続(コネクション)を、逆に利用してやるわ!」


「……えっ? 遮断するんじゃないのかい、レティシア?」


「……ただ消すだけじゃ面白くないでしょ? ……向こうのサーバーに、三百年分の『迷惑メール(スパムパケット)』を一気に送り返して、あっちのシステムを物理的に炎上(炎上)させてやるのよ!」


私は不敵な笑みを浮かべ、L-Padに最後の一撃(Enter)を叩き込みました。


[ 実行コマンド: Mass_Garbage_Packet_Send ]

[ 送信先: 聖教国・中央魔導サーバー ]

[ ペイロード: 無限に続く『お父様の自慢話』および『騎士団の悲鳴ログ』 ]


《実行中。……聖教国のサーバーが処理能力の限界を超えました。……あちらの通信システム、完全ダウンを確認。……バックドアの物理的破壊、完了しました。》


部屋を包んでいた不気味な紫色の光が消え、穏やかな、澄んだ魔力の色が戻ってきました。

結界の「OS」が、三百年ぶりに本来のクリーンな状態へとリセットされたのです。


「……ふぅ。……これでようやく、この国は本当の意味で『独立』したわね」


私は床に座り込み、大きく息を吐きました。

お兄様は、震える手で私の肩を叩き、力なく笑いました。


「……レティシア。君は……たった今、戦争を起こさずに、この国を三百年間の支配から救ったんだよ。……歴史の教科書を、君が書き換えてしまったんだ」


「……教科書の修正なんて、ただの『バグ修正(パッチ当て)』に比べれば簡単よ。……さて、お兄様。お父様が起きる前に帰りましょう。……この地下室のことは、当分私たちだけの『プライベートな秘密(変数)』にしておきましょうね」


三歳の聖女――いや、天才ハッカーは、誇らしげに鼻を鳴らすと、お兄様の手を引いて暗い階段を上っていきました。


しかし、彼女はまだ気づいていません。

バックドアを無理やりこじ開けられた聖教国が、今、王国に対して「最大級のシステム警告(宣戦布告)」を準備していることを。


王宮の地脈は、かつてないほど安定し、そして――嵐の前の静けさを湛えていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。