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『死ぬほど愛されたい』と願ったら、最強の公爵家に転生して家族の愛が重すぎます!〜赤ちゃん令嬢は『慈愛の眼』で今日もデレを解析中〜  作者: 五十嵐紫
第8章:帝国遠征編:隣国のOSがバグだらけなので、私が乗っ取り(リプレース)ます

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帝国からのSOSと、公爵家の「過剰な」遠征準備

王都の空は、私の「セキュリティ・アップデート」のおかげで、かつてないほど澄み渡っています。

しかし、私の脳内システムが映し出す「広域モニタリング画面」には、北方の国境付近から流れてくる、ひどく不快な「ノイズ」の残像が記録されていました。


(……ねぇ、システムさん。あのノイズ、やっぱり隣の『ガルア帝国』から来てるわよね? 周期的なクロックの乱れというか、無理やり過負荷をかけているような不自然な振動を感じるんだけど)


《解。……ガルア帝国中央魔導演算所を起点とする、大規模なマナの逆流を検知しました。……予測される原因は、基幹OS『G-OS』の致命的なメモリリーク、および外部からの悪意あるスクリプトの注入です。……このままでは、三週間以内に魔導炉が臨界突破し、大陸北部のマナバランスが崩壊します。》


(……三週間? まさに『設計ミス』のツケが回ってきた感じね。……あのおじさん、自分の拠点を焼かれた腹いせに、今度は帝国全体のシステムを道連れにするつもりかしら)


私が公爵邸の図書室で、L-Pad(魔導板)に流れるログを解析していると、廊下から騒がしい足音が聞こえてきました。


「レティシア! 大変だ、一大事だぞ! パパが今すぐ、国境に城壁をもう三重ほど追加して、帝国のバカげた騒ぎを物理的に遮断してやろう!」


お父様(アラリック公爵)が、顔を真っ赤にして部屋になだれ込んできました。その後ろには、困り顔のお兄様シエルと、見たことのない豪華な軍服を着た、ひどく顔色の悪い男性が立っていました。


「お父様、落ち着いてください。……そちらの方は?」


「……ガルア帝国特使、フォン・クラウスと申します。……レティシア・ド・グランヴェル閣下。……突然の非礼、重々承知しておりますが、もはやなりふり構っていられないのです!」


クラウス特使は、三歳の私を前にして、床に額を擦り付ける勢いで跪きました。


「……我が国の誇る魔導演算機『大公グランド・コア』が暴走を始めました。……国内の最高位魔導師たちが総出で抑えようとしていますが、術式が複雑に絡み合い、もはや誰も全容を把握できていないのです! ……このままでは帝国が灰になります! ……どうか、王都を救ったその英知で、我が国のデバッグを……!」


「……却下だ、却下! 誰がそんなバグだらけの物騒な国に、我が家の天使を行かせるか! お前たちの『大公』だか何だか知らんが、爆発するなら自分の国の中だけで勝手に爆発しろ!」


お父様の威圧感に、特使はヒィッと悲鳴を上げました。しかし、私は冷静にL-Padを操作し、予測計算結果を表示させました。


「お父様。……そうもいきません。……帝国の魔導炉が爆発した場合、放出されるマナの衝撃波は、この王都の防壁を30パーセントの確率で貫通します。……おまけに、地脈の汚染パケット・ロスによる魔力枯渇が十年は続くでしょう。……これは、当家にとっても『致命的なシステム・ダウン』に繋がります」


「……う。……そ、それは困るが……しかし、レティシアをあんな野蛮な国に……!」


「お父様。……私が責任を持って、レティシアの傍を離れません。……それに、帝国の『大公』の術式構成、私も研究者として興味があります。……あんなスパゲッティ・コードを放置しておくのは、世界の知的財産に対する冒涜ですから」


お兄様が眼鏡をクイッと上げながら、静かな殺気(エンジニア特有の、汚いコードに対する怒り)を漂わせました。


「……シエル、お前まで! ……くっ、わかった! 認めよう! ただし、条件がある!」


お父様はクラウス特使を指差し、宣言しました。


「護衛として、我が公爵家の第一騎士団五百名を同行させる! 帝国内での移動は、パパが特注させた『対震・対魔導・防弾仕様の超豪華馬車(移動用サーバー室付き)』を使用する! ……そして、帝国皇帝がレティシアに対して一秒でも不敬な態度を取ったら、即座に宣戦布告と見なす! いいな!」


「……は、はい! 全てお望み通りに! むしろ騎士団の皆様には、我が国の治安維持も手伝っていただきたいくらいです!」


特使は涙を流して承諾しました。……どうやら、向こうの国は想像以上に『荒れている』ようです。


数日後。私たちはかつてない規模の行列を組んで、隣国ガルア帝国へと出発しました。

私の馬車は、もはや「走る要塞」です。内部には最新の魔力水晶が数十個連結され、王都のL-NETと常時接続するための「衛星通信ならぬ地脈通信アンテナ」まで装備されています。


(システムさん、帝国のメインフレーム『大公』の予備スキャンはどう?)


《報告。……『大公』の物理レイヤーは、推定五百年以上前の古代遺物をベースにしています。……そこに歴代の魔導師たちが、互換性を無視した継ぎ剥ぎ(パッチ)を当て続けてきた結果、現在の総コード数は八千万行を超えています。……デッドコード(使われていない術式)が全体の60パーセントを占めています。》


(……八千万行!? しかも6割がゴミ!? ……うわぁ、エンジニアにとっての地獄そのものね。……まさに『巨大なレガシー・システム』の末路だわ)


国境を越え、帝国の領土に入ると、景色の色が目に見えて変わりました。

王国の豊かな緑に対し、帝国はどこか金属的で、空には不気味な紫色の雲が立ち込めています。魔導演算の廃熱が、環境に「熱公害マナ・ヒート」を引き起こしているのです。


「……ひどいものだね。……マナの循環が完全に『一方通行』だ。……これでは土地が痩せ細るのも無理はない」


お兄様が窓の外を見ながら、眉を顰めました。


「ふん、技術力自慢の帝国が聞いて呆れる。……レティシア、パパがいつでもあそこに『更地にする魔法』を叩き込んで、再開発しやすくしてあげようか?」


「お父様、壊すのは最後の手段です。……まずは『最適化リファクタリング』が可能かどうかを見極めないと」


私は、L-Padに表示された帝国の「基幹システム図」を見つめました。

そこには、まるで血管のように張り巡らされた魔導回路の至る所に、あの「深淵のエンジニア」が設置したと思われる「バックドア」の反応が、無数の赤い点となって点滅していました。


(……やっぱり。……あのおじさん、この帝国を『巨大なボットネット』に変えようとしてるのね。……帝国全土の魔力を吸い上げて、一体何を起動ブートさせるつもりかしら)


馬車が帝国の首都、帝都ガルアに到着すると、そこには不気味なほどの静寂が広がっていました。

街の至る所にある魔導灯は点滅し、自動で動くはずの魔導車両は道端で止まっています。


「……これは、想像以上に重症ね。……OSがフリーズしかけてるわ」


私たちは、巨大な歯車が露出した不気味な外観の「中央魔導演算所」へと案内されました。

そこには、疲弊しきった帝国の魔導師たちと、そして、高い玉座に座り、苦虫を嚙み潰したような顔をしたガルア帝国の皇帝、ヴィクトール陛下が待っていました。


「……遅いぞ。……それが、王国の『聖女』か。……ただの三歳の子供ではないか」


皇帝の冷たい声が響きました。お父様のこめかみに青筋が浮かぶのが見えましたが、私はそれを手で制して、前に出ました。


「ガルア帝国皇帝陛下。……私はレティシア・ド・グランヴェル。……エンジニアとして、お仕事を引き受けに参りました」


「エンジニア? ……何だ、その得体の知れない肩書きは。……よいか、我が国の『大公』は、この大陸で最も偉大な……」


「――偉大すぎて、メモリ溢れ(バッファ・オーバーフロー)を起こし、今にも爆発しそうですね。……陛下、誇りを持つのは結構ですが、自分の庭の『ゴミ箱』がいっぱいなことくらい、認めたらどうですか?」


謁見の間が、凍りつきました。帝国の重臣たちが息を呑み、皇帝の顔が怒りで赤黒く染まっていきます。


「……貴様、余に向かって……!」


「……システムさん。……陛下の玉座の下にある『盗聴用ノード』を、強制終了キルして」


《了解。……Command: [Kill -9 Throne_Spy_Process] ……Executed.》


パチン! という音と共に、皇帝の玉座に埋め込まれていた宝飾品の一つが黒く焦げ付きました。


「な……!? 何をした!?」


「……陛下を監視していた『深淵のエンジニア』の目を、一つ潰しました。……陛下、プライドと国の存亡、どちらが大切ですか? ……もしプライドが大切なら、私は今すぐお父様と一緒に帰って、国境に最強の防火壁ファイアウォールを築く作業に戻りますが」


私は、三歳児とは思えない冷徹な瞳で皇帝を射抜きました。

数秒の沈黙の後、皇帝は深くため息をつき、玉座に深く身をもたれかけました。


「…………好きにしろ。……演算所の最深部、『大公』のコアまでの全権を与える。……ただし、失敗すれば貴様らも……」


「失敗はしません。……私の辞書に、その単語は『未実装』ですから」


私はそう言い放ち、お父様とお兄様を引き連れて、帝国の心臓部へとトコトコと歩き出しました。


(……さて、八千万行のスパゲッティ・コードね。……燃えるわ。……徹底的に『整理整頓デリート』して、この国を強制的に再起動リブートしてあげる!)


三歳のデバッガーの、国家規模の「大掃除」が、今ここに幕を開けたのです。

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