↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『死ぬほど愛されたい』と願ったら、最強の公爵家に転生して家族の愛が重すぎます!〜赤ちゃん令嬢は『慈愛の眼』で今日もデレを解析中〜  作者: 五十嵐紫
第7章:王都デバック編:ウイルスを駆除したら、聖女と祀られました

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/33

カウンター・ハック! 敵の拠点を特定したので、物理的にデリートしに行きます

私の構築した『L-NET(魔導通信網)』に、不気味なノイズが混じり始めてから数時間。王都の貴族たちが「いいね」の数に一喜一憂している裏で、私は自室の端末(特大魔力水晶)の前に張り付いていました。


(……見つけたわ。私のパケットをミラーリングして、外部の非公開サーバーへ転送しているバックドア。……しかも、暗号化アルゴリズムをリアルタイムで解析して書き換えてる。……ふん、いい度胸じゃない)


《警告。……侵入者は『管理者権限』の奪取を試みています。……現在のディフェンス成功率:99.8%。……ただし、相手は地脈の『ノイズ』を偽装して追跡を回避しています。》


(……逃がさないわよ。……システムさん、ハニーポットを用意して。……中身は、偽造した『王国の極秘防衛マップ』。……欲しがりそうなエサを流せば、必ず食いつくわ)


「レティシア、夜食を持ってきたよ。……って、またそんなにモニター(水晶)を見つめて。……目が悪くなるよ?」


お兄様のシエルが、温かいミルクとクッキーを持って部屋に入ってきました。私の真剣すぎる横顔を見て、彼は困ったように笑いながらも、私の隣に椅子を引いて座ります。


「お兄様、ちょうどいいところに。……今、私のネットワークを盗聴している『ドブネズミ』を追い詰めているところなんです。……ちょっとだけ、演算の補助サブプロセッサをお願いしてもいいですか?」


「ドブネズミ……? ……また、あの『深淵のエンジニア』かい? ……わかった、僕にできることなら何でも手伝うよ」


お兄様が頼もしく頷きました。


私はL-Padの画面を操作し、偽装データをネットワークへ流し込みます。


[実行コマンド: Set_Honeypot(Fake_Secret_Data) ]

[ステータス: ターゲットがファイルをダウンロード開始……。 ]


(……食った! ……今よ、逆探知バックトレース開始!)


[計算式: Trace_Route = (Mana_Signature / Connection_Node) ^ Reverse_Logic ]


水晶の画面に、王都の地図が高速で展開されました。光の筋が複雑な路地を抜け、城壁を越え、王都郊外の北に位置する「嘆きの森」の深部にある、放棄された古い地下霊廟カタコンベへと繋がります。


「……特定しました。……座標、北32.5、東14.8。……地下30メートル。……ここが、彼らの『外部ノード』……通信の中継基地です」


「……旧市街のすぐ近くじゃないか。……灯台下暗し、というわけだね」


お兄様の目が、静かな怒りで細められました。


そこへ、扉を豪快に蹴破ってお父様(アラリック公爵)が乱入してきました。


「レティシア! 準備はできているぞ! 騎士団の精鋭百名、および対魔導重装歩兵大隊を門前に待機させた! いつでもあの『ドブネズミの巣』を更地にしてやろう!」


(……お父様、情報が漏れるのが早すぎます。……でも、今回はその圧倒的な『物理火力』が必要なんです)


「お父様、ありがとうございます。……今回は『論理削除(データの消去)』だけでは足りません。……相手は物理的なサーバー……いえ、魔導装置を使って地脈を汚染しています。……物理的な『デリート(破壊)』が必要です」


「物理的なデリートか! 任せておけ! パパの魔剣なら、一振りで座標ごと消滅させてやる!」


「……さすがです、お父様」


私たちは、騎士団の護衛とともに「嘆きの森」へ向かいました。


森の中は、不気味なほど静まり返っています。


「……ここです」


私がL-Padを掲げると、地面の下から微弱な魔力反応が返ってきました。


《検知。……地下30メートル地点に、大規模な魔導演算設備を確認。……同時に、複数の生命反応あり。》


「……やっぱり、いるわね」


「レティシア、僕が先に行くよ」


お兄様が杖を構えます。


「待って、お兄様。……中には敵の魔導兵器がある可能性があります。……ここは慎重にいきましょう」


私は地面に手を当てました。


「……システムさん、地下構造をスキャン」


《了解。……地下空間の三次元マッピングを開始します。》


視界に、地下霊廟の構造が浮かび上がりました。


複雑に入り組んだ通路。


無数の魔導回路。


そして、中心部に巨大な紫色の水晶。


「……あれが、外部ノードの本体ね」


「よし! ならば、そこまで一直線だ!」


お父様が魔剣を構えました。


「待ってください、お父様! ここを壊したら地下空間ごと崩壊する可能性があります!」


「……む」


「まずは、敵の魔導装置だけを無力化します」


私はL-Padを操作しました。


[実行コマンド: Override_Node_Authority ]


紫色の水晶に、黄金色の文字列が走ります。


《認証成功。……管理者権限を取得しました。》


「……よし」


その瞬間。


「グォォォォォ……!」


地下から、巨大な魔導ゴーレムが姿を現しました。


「侵入者……排除……」


「……なるほど。物理防衛システムね」


私は少しだけ考えます。


「……お父様」


「任せろ!」


「まだ何も言ってませんけど!?」


「レティシアが敵を見つけたなら、パパが斬る!」


「……では、お願いします」


「おう!」


お父様の魔剣が一閃。


巨大な魔導ゴーレムは、まるで紙細工のように真っ二つになりました。


「……処理速度、異常ですね」


「娘の敵を斬る速度に、限界などない!」


(……それ、システムの処理速度とは別問題なんですけど)


私たちはさらに地下へと進みました。


やがて、巨大な紫色の水晶が設置された部屋へと辿り着きます。


その周囲には、無数の魔導ケーブルが地脈へと伸びていました。


「……これが、L-NETを盗聴していた本体」


《解析結果。……この装置は単なる通信中継器ではありません。……地脈そのものに不正なコードを書き込み、マナの流れを改変しています。》


「……やっぱり」


私は水晶へ近づきます。


「……深淵のエンジニア。あなた、王国のネットワークだけじゃなく、地脈そのものを書き換えるつもりだったのね」


すると、紫色の水晶が突然明滅しました。


『……よくここまで辿り着いたな』


「……!」


水晶の中に、黒い影が浮かび上がります。


『まさか三歳の幼女に、私のバックドアを見破られるとは……』


「あなたが『深淵のエンジニア』ね」


『そうだ。私はこの世界の古いシステムを、すべて掌握する者。お前のような新参者に、私の計画を邪魔されるわけにはいかない』


「……古いシステム?」


私は水晶を見つめました。


「……あなたのコード、古すぎるわ」


『なに?』


「冗長で、無駄が多くて、セキュリティホールだらけ。……こんなものを使って、よく今まで生き残れたわね」


『……貴様ぁ!』


「図星だった?」


『黙れ!』


水晶から大量の魔力が噴き出します。


《警告。……敵が自動削除プログラムを起動。……L-NETへの逆侵入を確認。》


「……そう来ると思った」


私はニヤリと笑いました。


「システムさん。さっき奪った管理者権限、まだ有効?」


《肯定。現在、対象ノードの管理者権限を完全掌握しています。》


「なら……」


私は小さな指を水晶へ向けました。


「……あなたのコードごと、削除するわ」


『やめろ!』


「嫌よ」


《実行コマンド: Delete_Malicious_Node》


紫色の水晶に、黄金色の亀裂が走ります。


『こんな……私のシステムが……!』


「あなたのシステムじゃないわ」


私は静かに告げました。


「ここは、みんなが暮らしている世界よ。……勝手に書き換えていいものじゃない」


『……ぐ……』


「だから、バグは消す」


私は指を振りました。


「……デリート」


――パキィィィィィン!


紫の水晶が砕け散りました。


しかし。


《警告。……物理ノードの破壊だけでは不十分です。……汚染された地脈コードが残存しています。》


「……そうよね」


私は周囲の魔導回路を見渡しました。


「じゃあ、最後まで掃除しましょう」


「レティシア……?」


お兄様が心配そうに私を見ます。


「お兄様、少しだけ力を貸してください。……この地脈に残っている不正コードを全部消します」


「わかった。僕の魔力を使って」


「ありがとう」


私はお兄様の魔力を受け取りながら、L-Padを操作します。


[実行コマンド: Clean_Up_Mana_Line ]


[進捗: 10%……30%……60%……90%……]


「あと少し……!」


《完了。……汚染コードの除去に成功。》


「よく言った、レティシア! ……我が娘の安眠を妨げるゴミめ、塵一つ残さず消え失せろ! ……『極大焔災・レヴナント・バースト』!」


お父様の魔剣から放たれた太陽のような巨大な炎が、霊廟の最深部を飲み込みました。


紫の水晶は悲鳴のような音を立てて砕け散り、不気味な通信網は一瞬で焼き尽くされました。


《通知。……物理ノードの破壊を確認。……L-NETへの不正アクセスが完全に遮断されました。……汚染された地脈の『クリーンアップ』を実行します。》


崩壊する霊廟から脱出しながら、私は夜空を見上げました。


地脈を通るマナが、本来の清らかな輝きを取り戻していくのが、システム越しに確認できます。


「レティシア、怪我はないかい? ……すごい熱量だったけれど」


お兄様が心配そうに私を抱き上げます。


お父様は、焼き払った跡地を満足げに眺めながら、鼻息荒く剣を納めました。


「ふん、他愛ない! レティシア、次はどこのバグを壊せばいい!? パパが大陸ごとデバッグしてやろうか!」


「……そこまでは必要ありません、お父様。……でも、これで少しは静かな夜が過ごせそうです」


私はお兄様の胸の中で、大きく欠伸をしました。


三歳児の体は、やはり徹夜のハッキング作業には向いていません。


しかし、私の脳内システムは、消えゆく「深淵のエンジニア」の残滓から、ある断片的なログを拾い上げていました。


[受信データ: Project_Genesis_Stage2 …… Active ]


[座標: 隣国・ガルア帝国の魔導演算センター ]


(……舞台は、お隣の帝国に移るわけね。……どうやら、あのおじさん、ただのハッカーじゃなくて『国家規模のシステム乗っ取り』を企んでいるみたい)


「……いいわ。……私の庭を荒らした代償は、高くつくってことを教えてあげる。……次は、帝国全体のOSを『レティシア仕様』に書き換えてあげるから」


私は、眠気に誘われながらも、心の中で次なる「大規模リニューアル」の設計図を描き始めるのでした。


王都を救った聖女は、今や一国の守護神を超え、世界の理を書き換える「至高のプログラマー」へと歩みを進めていくのです。


【第7章 完】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。