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『死ぬほど愛されたい』と願ったら、最強の公爵家に転生して家族の愛が重すぎます!〜赤ちゃん令嬢は『慈愛の眼』で今日もデレを解析中〜  作者: 五十嵐紫
第7章:王都デバック編:ウイルスを駆除したら、聖女と祀られました

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通信革命? 王都に『魔導インターネット』を開通させます

王宮のセキュリティを「SSSランク」まで引き上げたことで、私の重要度はもはや「一貴族の令嬢」の枠を完全に超えてしまいました。


今や国王陛下からの信頼は絶大、王宮魔導師たちからは「師父」と呼ばれ、街を歩けば「歩く救世主」として拝まれる始末。


(……ねぇ、システムさん。目立ちたくないって初期設定、どこかで壊れてない? 完全に王国の最重要アセット(資産)としてロックされてるんだけど)


《解。……個体名:レティシアの行動ログによる必然的な結果です。……なお、王都の治安維持率が80%向上した一方で、情報の伝達速度に関する『ボトルネック』が顕在化しています。》


(そう、それなのよね。……情報のやり取りが、いまだに『紙』と『馬』っていうのは、エンジニアとして耐えがたいわ)


私は今、公爵邸の庭で、三日前にお兄様にお願いした「昨日の王宮の献立」についての返事を受け取ったところです。


……三日。


三日ですよ?


ローカル環境なら一瞬で終わるはずのクエリが、物理的な距離という「ラグ」のせいで使い物になりません。


「お父様、お兄様。……この国の『通信プロトコル』は、バグを通り越して欠陥品です。……情報の遅延レイテンシーが大きすぎて、有事の際に『タイムアウト』してしまいます」


朝食の席で私がそう切り出すと、お父様(アラリック公爵)はパンを口に運ぶ手を止め、真剣な顔で私を見つめました。


「レイ……てんし? よくわからんが、レティシアが不満だということはわかった。よし、パパが今すぐ王国全土に『速馬はやうま』を配置し直して、手紙の速度を二倍にしてやろう!」


「お父様、ありがとうございます。……でも、物理的手段に頼るのはもう限界です。……お兄様、王宮に眠っている『予備の魔力水晶』を全部、私の部屋に運んでもらえますか?」


「レティシア……。また何か、とんでもないことを始めようとしているね。……予備の水晶なら、王宮の地下倉庫に山ほど積まれているよ。陛下に許可を取って、すぐに手配しよう」


お兄様のシエルが苦笑いしながら、私の頭を撫でました。


彼はもう、私の「とんでもないこと」が、最終的に「とんでもなく便利」になることを確信しているようです。


数日後。


私の部屋は、運び込まれた数百個の魔力水晶で埋め尽くされていました。


これらはかつて、個別に使われていた魔力貯蔵庫ですが、私から見ればこれらは「分散型サーバーのノード」にしか見えません。


(システムさん、王都の地脈レイラインをスキャン。……この水晶たちをアクセスポイントとして、地脈に微弱なマナのパルスを流し込み、広域通信網(WAN)を構築して)


《了解。……プロトコル:『L-NET v1.0』を定義。……魔力水晶のペアリングを開始。……王都全域をカバーする魔導メッシュネットワークを構築します。》


私は、水晶の一つ一つに、私が開発した「簡易版・通信術式」を書き込んでいきました。


[計算式: Bit_Rate = Mana_Frequency / Crystal_Resonance ]


[設定: Encryption = Leticia_Original_RSA ]


「……よし。これでバックボーンは完成。……あとは、クライアント側のデバイスね」


私は、余った小さな水晶を薄く加工し、それを木製の板にはめ込みました。


見た目は、前世で使っていた「タブレット端末」にそっくりです。


「――お父様、お兄様。ちょっとこれを見てください」


私は、二人に自作の「魔導板(通称:L-Pad)」を手渡しました。


「なんだい、この板は? 鏡……にしては映りが悪いが」


「お父様、それを手でなぞってみてください。……文字が浮かび上がりますから」


お父様がおそるおそる画面(水晶)をなぞると、そこには私が別の端末から送った「パパ大好き」というメッセージが表示されました。


「……ッ!? な、なんだこれは! 文字が光って浮かび上がったぞ! しかも、レティシアの筆跡だ!」


「お父様。それは、私が今あちらの部屋で書いた文字が、瞬時にその板に転送されたんです。……お兄様、そちらの板に返信を書いてみてください」


お兄様が驚きながら指を動かすと、私の手元の板に「レティシア、これは魔法の革命だよ」という文字が即座に表示されました。


「……信じられない。……通常、遠距離の念話魔法は膨大な魔力を消費し、熟練の魔導師でも数分が限界だ。……なのに、これは全く魔力を消費していないように感じる……」


「お兄様、それは地脈の『残留マナ』を搬送波として使っているからです。……つまり、基本料金は無料。……メンテナンスも、地脈が枯れない限り不要です」


(……厳密には私のシステムが常時監視モニタリングして負荷分散してるんだけど、それは秘密ね)


翌日。


私はこの「L-Pad」を国王陛下とユリウス王子の元へ持ち込みました。


王宮のセキュリティを改善した私への信頼は凄まじく、この怪しい板も、陛下はふたつ返事で受け入れてくれました。


「……おお! 王妃よ、今すぐその板を見るのだ! ユリウスから『今日の演習は終わりました』と連絡が来たぞ! 伝令が走る前にだ!」


「まあ! 素晴らしいわ! 陛下、私もユリウスに『おやつはクッキーですよ』と送っておきましたわ!」


「母上! 返信が早すぎます! ……でも、これはすごい。……戦場や政治の現場でこれがあれば、情報の遅れによる悲劇は全てなくなりますね」


ユリウス王子が、キラキラとした瞳で私を見つめます。


王宮の人々は、瞬く間にこの「インスタント・メッセージング」の虜になりました。


しかし、私が想定していた以上の事態が起こり始めたのは、その数日後でした。


「……おい、見たか? 昨日の夜、公爵令嬢のレティシア様が『お星様が綺麗ね』と投稿(一斉送信)されたのを」


「ああ! 私は即座に『いいね(承認の魔力)』を送ったとも! おかげで私の魔力水晶がピンク色に光っているよ!」


王宮の貴族たちが、こぞってL-Padを肌身離さず持ち歩くようになったのです。


あちこちで「ピコーン」という通知音が鳴り響き、高位貴族たちが歩きながら画面を注視し、お互いの「近況報告」をチェックし合う……。


「……ねぇ、お兄様。……なんだか、みんなの様子がおかしくない?」


「……レティシア。……これを言いたくはないけれど、みんな君が作ったこの板に『依存』してしまっている。……特に若い貴族たちは、常に誰かからのメッセージを待っている状態だ。……中には、食事中も板を手放さない者まで出ているよ」


(……うわぁ。……完全に『SNS依存症』じゃない。魔導インターネット、普及させるのが早すぎたかしら)


さらには、お父様までが……。


「レティシア! 見てくれ! 私がアップロード(同期)した『今日のレティシアの寝顔画像』に、国王陛下から『神の如き尊さである』とコメントがついたぞ! おまけに騎士団の連中からも、一千件の『いいね』が届いている!」


「……お父様。……寝顔を無断でアップロード(共有)するのは、プライバシーの侵害です。……あと、仕事してください」


(……インフラを整えたら、今度は『ネットリテラシー』の教育が必要になるなんて。……エンジニアの仕事、増えすぎじゃない?)


しかし、そんな賑やかな王都の影で、私の「システム」が奇妙なパケットを検知しました。


《警告。……L-NETのバックボーンにおいて、不明なアクセスポイントを検知。……通信ログの一部が、外部へとミラーリング(複製)されています。》


(……っ!? ……誰かが、この通信網を盗聴スニッフィングしてる?)


私は画面を操作し、そのアクセス元を特定しようとしました。


しかし、その相手のプロトコルは、私の「レティシア式」を驚くべき速さで解析し、追跡をすり抜けていきます。


(……この手際の良さ。……間違いない。……『深淵のエンジニア』ね。……私が作ったネットワークを、逆に利用して王国の情報を抜こうとしているわけか)


「……いい度胸ね、おじさん。……私のネットワーク(庭)で、勝手なスクリプトを走らせるなんて」


私は、三歳児らしい愛くるしい顔でキャンディを頬張りながら、内心で「ハニーポット(囮)」の設置を開始しました。


(……美味しいエサを流してあげるわ。……それに食いついた瞬間、あなたの端末ごと『物理的に爆破オーバーロード』してあげるから、楽しみにしてなさい)


王都に開通した魔導インターネット。


それは、人々に便利さをもたらすと同時に、レティシアと「見えない敵」との、サイバー空間での本格的な戦争の幕開けでもあったのです。


「レティシア? 急に怖い顔をしてどうしたんだい?」


お兄様の心配そうな声に、私は満面の笑みで答えました。


「いいえ、お兄様。……ちょっとだけ、システムの『大掃除』が必要になっただけですよ」


私の指先で、黄金のコマンドが高速で踊り始めます。


三歳児の部屋は、今や王国最強の「サイバー作戦センター」へと変貌を遂げていくのでした。

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