18、異次元学園 さらされちゃったよ!
「ワーツ!何だ!ヤバイッ!」
「どうしたんだ!?
システムエラーか!」
「システムエラーなら、こんな風にはならないさ!
「何だ!オッサンばかりじゃないか!
こんなのを応援してたのか!
気持ちわりぃー!」
「ワーツ!召喚!召喚!撤収!みんな解散だっ!」
アイドルライブが開催されていた。
私達は五人組のアバターアイドルだ。
VR空間でアイドル活動をしている。
オーディションを勝ち抜き
この舞台まで辿り着いた。
今日は初ライブの日。
ダンスにボーカルのレッスンを重ね
今日の日を迎えた。
全てリモートでの打ち合わせと練習で
完璧なパフォーマンスを実現した。
オーディションの模様は
ネットで追跡番組が放送されていたので
メンバー決定の時点で
既に多くのファンを獲得していた。
アバターファン数万人がメタバースに集結し
大きな歓声と声援の中でライブはスタートした。
熱狂の中でラスト曲を終え
アンコールの拍手が止まない。
「さあ、アンコールの声援に応えましょう!」
「みんないくよー!」
「イェーイ!」
みんなでステージに飛び出した。
「ワーッ!ワーッ!」
「アンコールありがとう!
では、アンコール曲「アイの願い」…聞いて下さい」
♪ジャーン♪曲が始まった。
ミニスカートを揺らしながらダンスを舞った。
その瞬間だった。
画像が乱れる様にアイドル達の姿が歪んだ。
その途端、ステージに向かって悲鳴が上がった。
「ワーッ!何だぁ!あのオヤジ達は!」
「ハゲとデブと出っ歯かぁ!」
「あんなの応援してたのか!
気持ちわりいーよ!」
「帰れ!消えろ!無くなれ!」
ファン達の罵声が飛びかった。
いや、既にファンではなくなっていた。
アイドル達は、お互いの姿をを見て
戸惑い、動揺した。
そして、顔を、隠しながら消えた。
現実世界へ
それぞれの自分の部屋へ戻ったのだった。
「ハア、ハア、ハア…ヤバかった…どう言う事だ。
システム障害なら、姿が消えるだけのはずだ。
それなのに、現実の姿を晒されてしまった。」
私もバーチャルアイドルメンバーの一人だ。
何が起きたのか?まだ、原因も詳細もわからない。
たった今、起きた事なのだから当然だ。
しかし、もう、私達は終わりだ。
仮面を剥がされてしまった。
アイドルとして、致命的だ。
もしかしてと言う思いは
みんな持っているだろう…
それがバーチャル世界の可能性だから
誰も皆、相手の素性もリアルな姿も知らないのだ。
その、危うさが
また、バーチャルアイドルの魅力でもあるのだ。
女性アイドルが実は男性かもオバさんかも
…と、危惧しながらも
自分の推しはカワイイ女の子に違いないと
自分に言い聞かせ、思い込ませているのだ。
しかし、全バレてしまった。
現実逃避の世界に現実を持ち込んでしまったのだ。
もしかしてが、確言に変わったのだ。
やっぱりか…オジさんだったか…と言う
その残念さ無念さは、殺意にさへ変わり兼ねない。
「騙しやがって…許さねぇ!」
そう言う狂信的ファンが個人情報を探りだし
突然、目の前に現れた恐怖でしかない。
悔やむ事はない。捨ててしまえばイイだけの話だ。
器を捨てればいい。私をくるんでいた器を…
アバターと言う着ぐるみを交換すれば良いだけだ。
新しいアバターを制作して着替えれば良いだけだ。
使い捨ての極みと言えるが
複数のアバターを所持し、使い回す事は
さほど珍しい事ではない。
それ程、簡単に誰でもアバターを
制作できる様になったと言う事だ。
それ故に
人気を獲得する事は並大抵の事ではない。
今回のオーディションの様に大手の媒体が付き
戦略的に宣伝から売り込みまでシステム化する事で
ようやく人気アバターアイドルが生まれるのである。
しかし、強散も多い。
いや、強敵ばかりと言った方が良いかも知れない。
AIアイドル…AIドルも我々の存在を脅かす
ライバル中の最高であり最強のライバルだ。
最悪かもしれない。
人の音域を超えた歌声。人の領域を超えたダンス。
私達人間は、その完成度では
AIドルの足元にも及ばない。
私達が、それでも
このバーチャルステージで存在できるのは
その、未完成さ故だ。
不完全さと言うゆらぎが
こころの引っ掛かりとなったり
胸に刺さったりするのだ。それは…
受け手も、同じ感性を持ち合わせているからだ。
お互いの意識が、共鳴し合って成立しているのだ。
しかし、それさえも、今や脅かされている。
AIドルが、その揺らぎさへ、獲得しつつあるのだ。
その微妙な誤差を生み出し
不完成、不完全さを演出し
人々の心根に深く浸透していく技を
習得しようとしていた。
人を真似、人を追いかけ、人に追い付き
人を超える日が、目前に迫っていた。
その、頂点に君臨する者…それこそが…
「MARIA」
….と名乗るカリスマアイドルだ。
神がかったそのパフォーマンスは他を圧倒し
決して寄せ付けない。
孤高であり、至極の歌世界を堪能させてくれる。
唯一の存在なのだ。
彼女はネット世界に忽然と現れ
一気に世界中の人々を魅了し
その人気を不動のものとした。
その手法は全ての情報ソースを制圧し
衝迫しているような危うさを感じる者もいた。
同じ様に人気を博したネットアイドルが
次々と消えて行ったのだ。
素顔を晒された者。編集機能を外された者。
私生活を、かれた者。
SNS上では当たり前に行われている事を
悪だと、みなす、逆行型裁きが横行したのだ。
それでも、たった一人だけ…
そのネットアイドル界に君臨し続ける
「MARIA」に対して、疑いの眼差しが向けられた。
全て「MARIA」の仕業ではないのか?
しかし、そんな、憶測や誹謗中傷は
ことごとく消去・削除された。
当の「MARIA」はどこ吹く風で…
自身のパフォーマンスに専念した。
より高みを目指し鍛錬した。
人々は「MARIA」はAIなのか
人の成すバーチャルアイドルなのかと
ネット上で討論した。
正式な発表は無かったのだ。
「MARIA」と言う名前以外の情報は
一切、公開されていなかった。
それが、また、神秘性を際立たせ
さらにネット界を賑わせ
その人気を白熱させ、不動のものとしたのだ。
「困ったもんだねぇ!
また、暴かれちゃったね。
ヨッシー!アンタも暴かれないように気をつけな!」
「えっ!何っ!
急に話しかけるなよ!
ビックリするじやないか!
それは、そうと...
私には、暴かれるモノなんて何もねーよ!」
「アンタも色々、手を出してるだろ!
イラストレーターにコスプレイヤーに
そろそろアンタの番だよ!」
「別に晒しようがないだろ!
このまんまなんだから...
私はオジさんやオバさんじゃないんだから...
生粋の美少女だからね!」
「アンタも、そろそろイイ歳なんだからいつまでも、語れないよ!
少女なんてさっ!」
「ああっ!まだ、十七歳だ!
アンタとタメだろっ!
二十歳になるまで美少女でいさせるよ!」
「毎度、毎度、よく、平気で自分の事...
美少女なんて言えるな!」
「しょうがないだろ!
ファンの皆さんが、そう言うんだから!」
「アンタが美少女コスプイヤーなんて名乗るから
みんな、しょうがなく、そう呼んでるだけだろ!」
「あーっ!うるさい!うるさい!
残り少ない少女時代なんだよーっ!
満喫させろーっ!」
「そうだな!
おもしろい事、いっぱいしないとな!
イェーイ!」
「イェーイ!」
続く




