17、突然の別れ
「おはよう!」
「おはようございます!」
「オッハーッ!」
みんな、銘々、目覚めた者から布団をたたみ
トイレや洗面所に向かった。
何せ大人数だ。順番待ちで、ごった返したが
何とか、みんな朝食の席に着いた。
父上と母上はもう、お出かけのようだ。
冬本産業の社長と専務はお忙しいのだ。
部長が真っ白な割烹着で出来た料理を
配膳をしてくれている。
それを、ヨッシーと短亀ちゃんが手伝った。
「ナクサ!
アンタ相変わらずだね!
お客さんの前で恥ずかしくないかい!
みんなで、手分けして
部長のお手伝いしてるのにさぁ!」
「あっ、すいません!
差し出がましいと思ったものですから
お手伝いせずに…」
美咲とナッシーが慌てて立ち上がった。
「いや、だからいいんだよ。
美咲さんとナッシーは
お客さんだから…
そんな事して貰ったら、それこそ
こっちの恥だよ!
それなのに、何で、ナクサが、そっち側なんだよ!」
「私は、美咲とナッシーの親友だから
こっちで良いのだ!
それでいいのだ!」
「バカボンパパかっ!
それに、私達だって、仲間だって思ってるよ!
アンタだけじゃないよ!
見てくれよ!私とナッシーを…
双子みたいじゃないか!
世界は違っても
同じ時代、同じ青春を生きてるんだよ!」
「プッ!ヨッシ〜…今時…青春って…恥っ!」
七草は、吹き出しながら
ニヤケた、いやらしい目をして言った。
「ワーッ!うるさい!うるさい!」
ヨッシーが顔全体を真っ赤に染めて恥ずかしがった。
彼女は恥ずかしい事が大っ嫌いなのだ。
「ヨッシー…ありがとう…」
立ち上がって、地団駄を踏んでいたヨッシーの横に
ナッシーが近寄り両手を握った。
そしてヨッシーの瞳を真っ直ぐ見つめて
衝撃的な一言を放った。
「私、ヨッシーに一目惚れしたみたい!」
「ええーーーっ⁉︎ 」
「何ーーーっ!」
「マジーーッ!」
「うそーーっ!」
みんな、悲鳴のような叫び声を上げた。
「だって、ほら、ファッションだって
メークだって、私と好みが同じなんだよ。
同じ感性を持ち合わせてるって事だろ!
シンパシーを感じたんだ。
色々、イイ影響を受け合い、与え合えるって
思えたんだ。!」
「ナッシーッ!
私も愛してるーーっ!」
ヨッシーはナッシーに抱きついて頬ずりをした。
ナッシーもヨッシーの腰に腕を回した。
そして何度も頬をこすり合わせるうちに
唇が触れたが気にせず抱擁し続けた。
「まぁ、まぁ、中のよろしい事
でも、そろそろ、席に着いてください。
折角の朝食が冷めてしまいますわ!」
「そうだぞ!二人とも、たいがいで離れろ!
水ぶっかけてやろーか!」
「あっ、悪りぃ!つい…」
「ついじゃねーよ!
腹減ってかなわん!
部長!いただきますの挨拶…たのむよ!」
「はい、はい!わかりました。
それでは、お二人も席に着きましたね。
美咲さんナッシーさん。
大変な事になって、ご心配や不安を抱えて
おいででしょうが、私達、部員一同
できる限り…いえ…それ以上…
お二人の為に何か、力になれるよう
お手伝いさせて頂きますので
ご心配なさらずに…
何でも、言って下さいね。
では、頂きましょうか!
いただきます!」
「いただきまーす!」
「頂きます!」
「いただきます。」
放課後の園芸部の部室。
"ガラッ"
「あれっ!どうした?二人は…」
「ホントだ。どこ行った?連れションか!
ちょっと、慣れたからってウロチョロして
部外者って事が、バレたら
厄介な事になりかねんぞ!」
「わかった!ちょっと、トイレ見てくるよ!」
「ああ、ヨッシー!そうしてくれ!」
「何か長期戦になりそうだな。
今夜は、ウチに泊まるとして
明日はまた、部長頼むよ。」
「ええ、もちろんですわ!
連泊でも、よろしいですよ。」
「中々、そうはいかんだろう。
親の理解を求めるのは困難を極めるぞ。
家出娘を抱え込んどるとしか思われんだろう。
当然、「パラレルワールド」は御法度だ。
頭が、おかしくなったと思われるに決まっとる!」
「あの、私のウチも泊まって頂いて結構ですよ!」
「短亀ちゃん!ありがとう!」
「なら、ウチもいいよ!」
「だ、か、らぁ!七海っ!
女子二人が男子のウチに泊まれるかっ!
しかも、クリスマスで大問題、起こしとるのに!
お母ちゃんが気がきじゃないだろ!
懲りんヤツだな!」
「千晴も一緒に決まってるだろ!」
「そんなん、もっと、無理だろ!
アンタの、お母ちゃんの
許可が、おりるわけねーだろ!」
「そ、そうか…」
「七草さん…
あまり、キツく言わないでください。
七海君だって、お二人の力になりたいと
思っているんですから…」
「そうだな。
気持ちだけ、頂いとくよ。
七海!ありがとな!」
「オウッ!」
"ガラッ"
開き戸が勢いよく開いた。
ヨッシーが膝に手の平を置き、肩で息をしている。
「ハァ、ハァ…」
「どうした、ヨッシー!走って来たのか!
廊下は走るな、だろ!
老化が早まるぞ!」
「そんな、ダジャレ!いま、今、いらんだろ!」
「ハハッ!そうだな!
…で、どうだったんだ。」
「そっ、それが、トイレには、いなかったんだよ。
それで、他に行きそうな導線、辿って来たけど
全然、見当たらないんだ!
ど、どうしよう。
迷惑かけたくなくて、どこか、他に行ったのかな?」
「それは、ないでしょう。
最後に挨拶も、お礼の言葉も無しに
立ち去る訳がないです!
美咲さんも、ナッシーさんも
そんな、非常識な人じゃありません!」
部長の断言にヨッシーは、納得した。
「そっ、そうだよな!
じゃあ、どこへ行ったんだ。
みんなで、もう一度、手分けして探すか!」
「ダメだな…」
七草がスマホを手にしてつぶやいた。
「えっ?どうして!」
「二人とLINEの交換してたんだよ!
何故か、スマホのアプリとかは
交互性があったんだ。
それで、今、メールしようとしたけど
もう、消えてる。
彼女達の痕跡が全て消えてる。
アドレスもメールも
二人と交わした言葉が全て消えてるんだ。」
七草は下を向いて後は黙りこくった。
部長が七草の肩に、そっと手の平を寄せた。
「もしかしたら、元の世界に
戻れたのかもしれませんね。
他に、頼る場所も、人も、いないのですから
二人だけで、行動するとは思えませんよ。
それに、昨晩は、あんなに楽しそうでした。
皆さんとも、打ち解けていました。
気兼ねしたとは、到底、思えません!」
「そうだよ!ナクサ!
きっと、戻れたんだよ!
元の世界に…
よっ、よかっ…良かったじゃ…ないかぁ…
ワーーッ!」
「ヨッシー…アンタ…
本気で、ナッシーの事…」
「わーっ!ナッシー!」
「ヨッシー!
わかるよ…私だって…
美咲の事…姉妹みたいだって思ってたんだ。
ヨッシーは姉ちゃんみたいな存在だけど
美咲は双子の姉妹みたいだって思ってたんだ。
背丈も同じくらいだし、髪型も同じだし…
私も、チンパシーって、ヤツを感じてたんだ。」
「シンパシーだよ!
アンタ!意味わかって、言ってんの⁉︎ 」
「ヨッシーイィ!今、そんな事
どうでも、いいだろうぅぅ…
美咲は借りた猫みたいに、おとなしくしてたけど
本当は私みたいにハッチャケてるはずだよ。
だから、もう少し、一緒にいたい気がしてたんだ。
彼女の事、もっと、知りたかったんだ。
でも…良かったよ!
もし、元の世界に戻れてたのなら…
それは、嬉しいよ!
それは、…よっ、喜ば…しい…事…だよ…
わーーっ!
ヨッシーーーッ!」
「ナックサーーッ!」
二人はしがみついて、泣きじゃくった。
大泣きした。
「なな星だって
最後はちゃんとお別れできたんだよ!
一言、さよならって、言いたかったよぉ!
また、来いよ!って、言いたかったよーっ!」
「そっ、それは、言わん方が良いかもな…
折角、戻れたのなら…」
「ハハハッ!
そうだな…」
七草とヨッシーは抱き合ったまま
泣き笑いした。
「ところで、ナッシーの本名って、何て言うんだ。
七海の素朴な疑問。
「えっ⁉︎ 」
「そうだ!聞いてなかった!」
「オマエら、それで
「親友」とか「愛してる!」とか言ってたのか⁉︎」
七海の呆れ顔に七草がムキになって言った。
「いいだろ!ナッシーは、ナッシーだ!」
名前なんて、どうでもイイだろ!」
それには、七海も納得だ。
満面の笑顔で応えた。
「まっ!そうだな。ハハハッ!」
続く




