37.夜中に騒ぐのはやめましょう
シロークが仲間になった俺は暫くはのんびり歩きながらたまに襲ってくる魔獣を倒して回収してからまた街に向かって歩いていたが日が落ちてきた。
元々前世でもまる三日寝ずに仕事をしていたことはあるから休息は必要ないがこのまま街におりても着く頃には夜中になっていそうだから今日はここらで休むことにした。
攻めてくる魔獣が多くて思ったほどはすすめなかったが明日の昼過ぎ頃には着けそうなので別に慌てることは無い。
それにケンディも明るいうちに野営の準備はしてた方がいいと言っていた俺はケンディのしていたように周辺から小さい木と少し大きめの木を用意して魔法で火をつける。
せっかくなので今日倒した魔獣を食べようと思い既に一部シロークにあげたトラのもも肉部分を切り取る。
元の大きさが大きいのでそこだけでも十分量はある。
少しだけ切り取り生のままシロークにあげて残りは焼いてみる。
多分俺も生のまま食べてもなんの問題もないんだろうけど感覚的になんか嫌だ。
しっかり焼けたのを確認してから食べると肉汁が溢れてくる。
もっと筋肉質で硬いかと思っていたがそんなことは無くそう力を入れなくても噛み切れる。
手元になんの調味料もないため素焼きだがそれでもこんなに美味しいなら調理をしたらもっと美味しいんだろうな。
焼いた方もシロークにあげてみるとそれも美味しそうに食べていた。
トラ(のような魔獣)のお肉をたべ満腹になった俺は四方を壁で囲み雨が降っても大丈夫なよう上まで囲む。
ガラスは作れないので細かい格子で陽の光が入って来るようにする。
最後に全体的に魔力を込め頑丈にする。
寝てるところを急に襲われたらたまったものじゃないからな
簡易的な小屋の完成だ
もうすっかり日はくれてしまったがさすがにまだ寝るには早い。
「そういえばシロークはどのくらい戦えるんだ?」
「シャーン?」
シロークの体は小さいとはいえどちらかと言えば街より山の方に近かった、ということは種族としては強い方なはずだ。
明日の街の近くで魔獣と戦わせてみるのもいいかもしれないな
とりあえず少し寝るまで時間があるので魔法の修練をすることにした。
体から漏れる魔力をなくし、その後必要な量の魔力をだす、意外とこの的確に必要な量だけ魔力を出すというのが難しく最初の方は多すぎたり少なかったりもしていたがもうだいぶ慣れたものだ。
「シャン、シャン」
集中して作業しているとシロークの鳴き声が聞こえたのでそちらに目線を移すと今にも寝そうにしていた。
集中していたから時間の感覚が分からなくなっていたが窓から見える月の高さから見てもあれからだいぶ時間が経っていたみたいだ。
明日も早く起きなければいけないので今日はそこで寝ることにした。
俺が横になるとシロークがお腹の上に乗って眠る。少しヒンヤリとしていて気持ちいいな
そんなことを考えながら俺も眠りについた。
ガンッガン!
バキバキッベキ!
なにか外で音がする……
物音のせいで目が覚め音のする方を見ると魔獣がいた。
正確には魔力しか見えてないがこんな時間にここにいるのは魔獣だけだろう
周りもよく見てみればいくつかの魔獣に囲まれている、しかし外はまだ暗くシロークなんか呑気に寝てる。
この感じでよく今まで生きてたな……
シロークが起きないようゆっくり地面におろし小屋に穴を開け外に出ると大量の魔獣が俺が外に出るのを待ち構えていた。
ノコノコと餌が出てきたと魔獣たちは嬉しそうだがこっちの機嫌は最悪だ。
誰が夜中に起こされて魔獣討伐なんかしたいものか
一体一体倒していってもよかったのだがどうしてもあまり動きたくなかったのと早く終わらせたかったのもあってその日初めて少し大きめの魔法を使い俺は小屋に戻って横になり目を閉じた。
翌朝目を覚ましてシロークと一緒に小屋から出るとシロークは驚愕していた。
それもそのはず、小屋のまわり一帯に地面から大きなトゲが無数に突き出ていて棘の先には何体もの魔獣が血を流しながら死んでいる。
知らない人が見たらホラーすぎる
棘のせいでほかの魔獣は近寄れなかったのか魔獣の死体はどれも食べられた様子がない。
「シロークあれ食べる?」
ひとまず食事をしてから出発することにして俺はシロークが棘をのぼり魔獣に食らいついているのを見ながら持ってきたパンを食べた。
魔獣の体の構造は魔人とよく似ている。いや、ほぼ同じと言っていいくらいだ。
排泄はせず食べたものを魔力に変換している。魔人とは違って元の魔力量がそう多い訳では無い魔獣は食べた分だけ強くなる。
シロークもお腹いっぱいになったのか途中で食べるのをやめていたので残った魔獣は回収しておく。
棘が刺さりまくっていたせいで身体中に穴が空いている。
「これは流石に回収してくれないよな」
冒険者ギルドもこんな穴ぼこのものは要らないだろう、まぁ、シロークの餌にしてしまえば問題ないのでそうすることにして俺たちはまた街に向かって歩き出した。
棘は面倒だったので特に片付けとかはしなかった。
こんなとこ誰も来ないから大丈夫だろう
もうだいぶ街寄りになってきたせいか最初ほど魔獣と遭遇することは少なくなってきた。
そろそろこの辺でシロークに戦わせてみようかな?
そう考えていると前からウルフが群れでこちらに向かってきていた。
だいぶ大所帯だな
ざっと数えただけでも三十匹位はいそうだ。
ウルフはオーガと同じく本に載っていたため知っているが魔獣の中でもゴブリンに次ぐ弱い部類だ。
「シロークあれと戦える?」
「シャーン!」
任せて!と言っているのか自信があるのはわかった。
まぁいざとなれば加勢するから大丈夫か、と考えていると群れの中心に他のウルフとは少し違う個体を見つけた。
あれは……!
そのウルフは他の個体よりも体が銀色に光っており体も二回りほど大きい
間違いないエーデルウルフだ!
本に乗っていた情報ではエーデルウルフは大きい群れにまれに存在しており気性も荒く群れのリーダーとなっていることが多いらしい。あと他のウルフよりも旨みが多く独特の歯ごたえが美味しいと書いてあった。
あれは食べてみたい!
なんだか最近食欲で動きっぱなしな気もするが楽しみの一つなんだから仕方がない
「シロークは周りの普通のウルフを狙え、銀色のは俺がいく!」
エーデルウルフは他のウルフよりも強い、ここは俺がやるべきだろう
決して綺麗に仕留めたいからとかそういう理由では無い、シロークからなんだか視線を感じるがきっと気のせいだ。
俺は近くにあった木に飛び乗り枝を飛んで移動し、群れの中心辺りに着地する。
いきなり俺が現れたことでウルフたちは驚いているがその隙を狙わせてもらおう。
俺は真っ直ぐに銀色のウルフに向かって走り俺にくっついていたシロークは俺から離れウルフ目掛けて飛びかかっていた。
魔力量からしてもシロークの方が高かったから負けることは無いはずだ。
出来ればあの銀色の毛皮も欲しい
せっかく出会えた珍しい個体なんだから傷をあまりつけたくないな……
さてどうするか
考えている間もエーデルウルフや他のウルフは襲いかかってくる。
基本的にそこまで素早い訳では無いので避けるのは簡単だがシロークと離れすぎるのは避けたい。
とりあえず一発やってみるか
考えてもしょうがないので一旦エーデルウルフに氷の槍を放ってみる。
「グギャン!」
氷の槍がエーデルウルフの頭を貫いた
え……?
適当に放った一発でまさかしとめられるとは思っていなかったので驚いてしまった。
今までの俊敏そうな魔獣は一発だけだと避けられることが多かったから今回もそうなるだろうと思っていたらまさかの仕留めてしまった。
群れのリーダーが呆気なくやられてしまったことに他の周りのウルフも固まってしまっている。
ふと固まったウルフたちの方に目線を向けるとちょうどウルフたちもこっちを見たため目が合う。
しばらく目が合った状態が続くと急にウルフが走って俺から離れていく。
逃げた!
別にウルフの肉はそんなに美味しいとも聞いていないのでわざわざ追わないが魔獣から逃げられる俺って……
なんかちょっと複雑な気分だ
シロークは三体ほどウルフを仕留めており自慢するように死体を重ねてその上で鳴いてアピールをしてた。
いらないかなとも思ったけどせっかくのシロークの初収穫なのでエーデルウルフと一緒にウルフも回収した。
それからはあまり魔獣には出くわすことはなく、たまに木に果実がなっていたので見つける度に手で取れるところにある分だけ取りながら歩いているとついに俺たちは森をぬけ街の城壁を見ることが出来た。
「ついた……」
門のところには以前の門番の人たちだろうか?人影がいくつか見える。
大体一ヶ月ぶりに見た街や人影にちょっと感動した。




