32(エリ視点)
目を開くとそこはいつもの部屋だった。
自分が普段すごしているお父さんとお母さんにもらった一人部屋。
体を起こすといつもより体が重い……
まだ起きたばかりのせいなのか頭がふわふわする。
自然と目線が下を向くと自分の体が視界に入る。
戻ってる……?
戻ってるとはどういうことだろう?自分でもなんでそんなことを思ったのか意味がわからない
昨日は何してたんだっけ…?
『エ…リちゃ...!』
誰かが私を呼んでる……?
眠る前の記憶を思い出そうとするとドタドタと下からすごい勢いでこちらに音が近づいてくると、勢いよく扉が開かれる
「エリ!起きたのか!」
「エリ!?」
お父さんとお母さんだ。
なんだか久々な気がする
そんなに慌ててどうしたんだろう……
お父さんとお母さんは驚いた顔をしてこっちを見たかと思うと急に泣きだしながら私を抱きしめてきた。
「よかった!ほんとうによがっだ!」
「ほんとよ、心配したんだから…」
どういうこと?
「どっう、ケホッ!ッゲホ」
どうして泣いてるのか聞こうとしたが思っていたよりも喉が乾燥していて声が上手く出ない
「お水持ってくるわ!」
「頼む!おい、大丈夫か!?」
そんな咳を少ししただけなのに大袈裟だ。
お母さんはすぐに下から水が入ったコップと水差しを持って来て飲ませてくれる。
水を飲むと喉の乾きが嘘のように潤い聞きたかったことを聞く
「お父さんお母さんどうしたの?なんで泣いてるの?」
「なんでってお前は丸一日以上寝ていたんだぞ?!」
「本当に無事でよかったわ」
そんなに寝ていたの!?
眠る前の記憶が思い出せずあわあわとしているとお父さんも困惑した表情で話し出す。
「体の調子は悪くないか?きついところはないか?」
そういった不調は特に感じないので横に首を振る。
『必ず、たす……け』
まただ……
さっきから聞き覚えのある声が聞こえる。
「ねぇ、下に誰か来てるの?」
私のその質問にお父さんとお母さんは顔をすこし見合わせると「誰も来ていない」という。
じゃあさっきから聞こえるこの声はなんなんだろう
しかしその声に不思議と不安も恐怖も感じない、むしろ安心する声がする。
しかし今日はなにか大事な用があったきたがする。
誰かと今日会う約束をしていたような……
私はその後お父さんとお母さんに色々聞かれたあとベットから降りようとしたが必死に止められた。
しばらくは寝ていなさいと言われた。
でもたった今起きたばっかりだから全く眠くない。
私がぶすくれているとお父さんが私のおでこにキスをしてくる。
「今度休みをとるからその時に沢山遊ぼう。だから今日は安静にしていてくれ」
「休み!?ほんとうに?」
「あぁ、お母さんと一緒に休みを貰ってくるよ」
「お母さんも!?」
「えぇ、だから今日はのんびりしましょうね。なにかフルーツでも持ってくるわね」
そう言ってお父さんとお母さんは部屋から出て扉をしめる。
お父さんとお母さんは冒険者ギルドで働いてるせいでなかなか休みがとれない。
それが今度一緒に休みを取ってくれるなんて!それに今度はフルーツを持ってきてくれるらしい。
なんでこんなに今日は優しいんだろう!?
「目が覚めて本当に良かった……」
「これもあの三人のおかげね……」
部屋から出ていったお父さんたちの声が聞こえる?
なんでわざわざ部屋から出て話してるんだろう?それになんだか私の耳が良くなった?
普段では聞こえないであろう扉越しにお母さんが鼻をすする音まで聞こえる。
また泣いてる?
「うぅ、よかった。よかったよぉ」
「あぁ、ボックやコハクにツクヨさんは俺たちの恩人だ」
「こ、はく……」
『俺の名前はコハク、明日はよろしく頼むよ』
友達の名前だ……
そうだ!コハクとツクヨさんに街を案内するんだった!
いや、違う……
もう案内はしてて、そして私は……思い出した…
「い...や……いやぁ!」
私の大きい声に反応して両親が扉を開け部屋に飛び込んでくる。
「どうした!?」
思い出した……
あの時私は先生とコハクを襲ったんだ...
そのままその時の記憶が流れ込んでくる。
自分の体が大きく膨れ上がり動かなくなりそこで気を失った。
そこからは曖昧ではあるがなんとなくコハクと先生が助けに来てくれた記憶が流れてくる。
しかししっかりと覚えていることがあり目の前にはボロボロになった先生が倒れておりそれに攻撃しようとする私。
それだけは絶対に嫌だと動かないでと自分自身に頼み込んだ。
夢を見ているようだったけどその瞬間だけは他の記憶よりも現実味が感じられる記憶だった。
「せ、先生はどこ?コハクたちは?」
私の顔色が悪くなっていくのが分かる。
お父さんとお母さんが先ほどより心配そうに私を見る。
「コハクとツクヨさんならもうそろそろ街をでるころだ、ボックはそれについてっいってる。それよりもどうしたんだ?どこか辛いのか?」
街を出る!?
行かなきゃ……!
私はベットから飛び降りると急いで部屋から飛び出る。
「エリ!?ちょっと待ちなさい!」
「どこ行くんだ!??」
先生がコハク達と一緒に街を出るなんて……
私があんなことしたから嫌われちゃったのかな……
お父さん達が追いかけてくるがそのまま靴も履かずに外へ飛び出す。
急に日の光を浴びて目の前が白くなるがすぐに目の前に見なれた街並みが広がる。
コハクたちが向かったであろう門の方へ駈ける。
いつもよりも足が軽く景色がどんどんと後ろに流れていく。
私の体どうなってるの…?
普段ではありえない足の速さに驚きつつも足を止めたりはしない。
お願い間に合って!
足が軽いおかげであっという間に門見えてくる距離までこられたが未だ三人の姿は見えない。
出入口に向かって走る私に気づき門番の人が何かを叫んでもんと私の間に入ってくる。
私は門の外には魔獣がいたりするため私は出たことは無いけどお金を払ったりしなきゃ出られないことは知っているけど今はお金を持っていないし、そんな時間もない。
門番さん、ごんめんなさい!
何人かが私を止めようと向かってくるので走ったまま門番さんたちの体の隙間を通り抜ける。
初めて見る門の外はとても広くて遠くに森が見える。
初めての景色に少し圧倒されるが直ぐに周りを見渡し先生たちを探すと先生の背中だけが見える。まだ私には気づいていないみたいだ。
コハクとツクヨさんは...?
とりあえず私はまた走って先生の所へ向い目前に迫った頃飛びかかった。
しかし丁度のタイミングで私を追いかけてた門番さん達の走る音に気づいたのか私の気配がしたのか先生がこちらを向いたため先生の胸に突撃する形になってしまい、そのまま後ろに倒れ込んでしまった。
「あたたた、一体何が……ってエリちゃん!?」
「先生!ごめんなさい!私のせいで……ぞんな...ごめんなざい……」
先生に謝ろうと思い先生から顔を離すと片腕のなく頭に包帯を巻いている姿を見てしまい涙が出る。
謝らなきゃないけないのに私のせいなのに……
嗚咽のせいでろくに喋ることが出来ない。
周りには門番さんが今の状況を理解出来ず顔を見合せている。
「よかった、エリちゃん目が覚めたんだね!本当に良かった。」
先生の心からの心配に胸が痛くなる。
違うの、私のせいで腕がなくなっちゃってそんなに沢山怪我もさせて……
しかしやっとのことで振り絞ってでた言葉は謝罪なんかではなかった。
「どこにも、どこにも行かないでぇ」
まずは謝らなきゃ行けないのに私の口から出たのは懇願だった。しかし私の口からはそればかりが溢れ出す。
「もう勝手な、ことはしないがら……先生の、言う、ことはちゃんと聞くから...いかないで..……」
これじゃあ嫌われてしまう、謝らなきゃなのにどうして……
「大丈夫だよ、エリちゃん」
先生の声だけが私の中に響き渡る。
「俺はどこにも行かないよ、君が望むかぎりずっとそばにいる」
「ほんと……?」
そこには以前も私を助けてくれた時と同じようなどこか不器用なそれでも精一杯の優しさが伝わる笑顔があった。
その言葉に笑顔にまた涙がこぼれる。
「ど、どうしたの?!やっぱりまだどこか悪いんじゃ……?」
先生が心配そうに私を見るけどそうじゃない。
だけど私も間違ってた……私が言わなきゃいけなかったのは...
「先生...助けてくれてありがとう」
「いいんだよ、君が無事で本当に良かった」
「「エリーーーーー!」」
お父さんとお母さんが走ってこちらに来る。
しまった、何も言わずに来たんだった...!
しかし二人の姿を見て思い出す。
「先生!コハクは!?ツクヨさんは!?」
コハクたちの姿はどこにもない。
彼らが助けてくれたのも何となくわかる。お礼を言わなきゃなのに。
せっかく出来た友達なのに……!
しかし先生はゆっくりと森のある空に向かって指を指すのでつられてそちらの方に目を向けるとだいぶ小さくなっているが二人らしき人が空を飛んでいる。
私は直ぐにその場から立ち上がり精一杯の声を上げる。
「コハクーー!ツクヨさーーーーん!ありがとぅ!!」
二人には聞こえているのかどうかも分からない。いやこれだけの距離だきっと聞こえてないだろうな。
でも大丈夫、コハクはきっとまたこの街に来てくれる。
少し前なら嫌われたかなともう会えないかなと不安になっただろうけど今ならわかる。
コハクとはまたきっと会える。
そうしてコハクたちが見えなくなるまで見送ろうと空を見上げていると二人のところから光の玉が二つ飛び出し空をのぼりぶつかった途端周り一体に風が大きく吹く。
なに!?
思わぬ出来事に目を瞑ってしまうがすぐにゆっくりと目を開くと満点の星空がそこにはあった。
いや、今は昼で目の前には青空が広がっているため星空では無いのだろうけど同じくらい、いやそれ以上にキラキラと光る何かが空を舞っている。
すごいきれい……
私以外のその場にいた全員がその光景に目を奪われる。
キラキラとしたものがゆっくりと私の目の前に降りてくる。
なんだろうと手を伸ばし触れてみるとそれは氷だった、私の手に触れた瞬間溶けてしまったがそれほど小さい氷が星屑の正体だった。
これが魔法……
公園でおじさんに見せて貰っていた魔法とは比べることも出来ない程それは綺麗で壮大で奇跡のようなその光景に見蕩れてしまう。
『魔法を見せて貰ってもいいですか?』
『もちろん、そのくらいいいよ』
私とツクヨさんたちのやり取りを思い出す。
私すら忘れてた約束覚えててくれたんだ……
「先生、綺麗だね」
隣にいた先生にそういうと
「興味を持ってしまうからと遠ざけていましたけどお勉強からなら初めてみますか?魔法を」
想像もしてなかった先生の言葉に驚き反射的に先生を見てしまった。
「いいの?」
「実践はまだですよ、まずは理論からです」
「うれしい!先生大好き!」
嬉しさでつい先生に飛びついてしまうと、横からお父さんが騒ぎ出す。
「おいボック!そこ変われ!エリー?魔法なら俺も教えれるぞ?」
「あなたもたいして魔法は使えないでしょ?エリ?私の方が二人より教えれるわよー?」
「二人ともまだ実践はダメですよ!?」
「「分かってるからそこを変われ!」変わりなさい!」
目の前で三人がワイワイと騒ぎだしなんだかその光景に嬉しくなる。
コハク、ツクヨさんありがとう
もうすっかり姿は見えなくなってしまったけど、私はそう気持ちを込めて空の向こうにいる二人に向けて手を振り続けた。
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