17(ボック視点)
次まで一旦ボック視点が続きます
その日はいつも通り本屋を営業していてもうそろそろ店を占める時間かなと考えながら店番をしていた。
人の成長は早いものでこの前までハイハイしていたエリちゃんはもう一人で走り回り友達を作っている
最近はご飯もエリちゃんが持ってきてくれる。彼女はたまに面倒そうに持ってくるがそれはしょうがないだろう、俺だってきっと彼女の立場だったら面倒に思っていたはずだ。
しかし俺にとってその時間が最近友達と遊ぶことが増えなかなか会えないエリちゃんと接することが出来る唯一のタイミングなので毎晩持ってきてもらっている。
しかし何故かその日は日が暮れてもエリちゃんがこなかった。彼女が熱を出した日などはダグマさんが来るのでこんな時間まで誰も来ないというのは初めてで、ふと嫌な予感がしたため急いで店を閉めダグマさんの家に向かうと道中こっちに向かって走ってくるダグマと会った。
なんだ、エリちゃんが体調を崩してダグマが来るのが遅れていただけかと思いダグマさんに声をかけようとすると思いもよらなかった言葉が飛んできた
「おい、エリが料理を持って行ってから帰ってこないんだが、お前のところで休んでいるのか?」
俺は一瞬言葉の意味が分からなかった
うちに向かってから帰ってきてない?嫌な予感に心臓を打つ音が早くなる
「エリちゃんはうちにまだ来てないぞ、帰ってきてないってどういうことだ!?」
「なんだって!?じゃああの子は今どこに!?」
「長々と話してる場合じゃない!ラビッテさんは家にいるのか?」
ダグマさんは娘が居なくなったことが信じられないようで慌てているため、切り替えさせる
「あ、あぁ。家で待っといてもらってる」
「なら、ラビッテさんにはそのまま家で待っててもらおう。もしかしたら帰ってくるかもしれないからな」
「もしかしたらってどういうことだよ」
「エリちゃんが家出たのはどのくらい前だ?」
「一刻半ほど前だ」
「ならまだ日は出てるか、俺は一度家にエリちゃん用の手紙を置いてから街の東側を探すからお前は衛兵に知らせに行って捜索隊を出してもらってこい!」
「わ、わかった!」
そう返事をしてダグマは走って衛兵の詰所のある方へ走っていく。
そこからしばらく子供が入りそうな小道なんかを探しながらひたすら走って街中を探すともう既に日は落ちているため後ろ姿からは分からないがおそらく太った男とエリちゃん位の女の子が横並びに歩いている。
こんな時間に散歩?
怪しく思い距離を取りながらつけていると、突然女の子と男が何か話したかと思えば女の子が叩かれ倒れ込んでいた。俺はすぐさまその現場に向かうがしっかりと距離があったため少し時間がかかる
くそ!なんでもっと近くで追っていなかったんだ!
女の子はすぐその男から逃げ小道に入る、太った男は歩きながらそれについて行く。
もしあそこで撒かれたら厄介だ!間に合ってくれ!
俺はさらに足に魔力を込めスピードをあげる、男たちの曲がった小道を曲がるとそこには男がにやけヅラをしゴミ箱を開けようとしている姿がある。
その箱の中にエリちゃんかわからないが女の子が隠れているのはすぐにわかった。
俺はそのまま勢いを殺すことなく男の横っ面に目掛けて拳を振り下ろす。男は反応することも出来ず奥にあった瓶を割りながらころげ倒れる。
そのまま男は気絶しているようで動く気配は無い。
改めてゴミ箱の方に意識を向けると中からカタカタと震えているような音がする。
驚かないようゆっくりと箱の蓋を開けるとそこに沢山見たはずのしかし見た事のない顔をしたエリちゃんが居た、僕の顔を見ると虚ろになっていた目に少し光が戻る。
よかった、君にとって僕は少しは安心出来る大人だったようだ。
しかし困った。ここからどうしたらいいだろう、ダグマさんを呼ぶべき?
いや、まずはこの男を縛って詰所に連れてくか?
はっ!男に叩かれてたよな!け、ケガしてるかもしれない
いろいろと安心と焦りと不安感と心配が混ざり結局よくわかなくなり
「よかった!エリちゃん!怪我してないかい!?怖かったろう?あぁ、どうすれば、ひとまず僕の家に行こう」
なんとも我ながら情けない第一声だったとは思う
しかし逆にその情けなさが安心に繋がったのかエリちゃんは怖かったと泣き出したので優しくだきあげ抱きしめる。
ここまでしてやっと自分も、エリちゃんが攫われかけていた事と間一髪間に合ったということに実感が湧き心から良かったと思った。
先程見つけた合図は空に向かって送っておいたのでそう時間がかからずこちらにダグマさんと衛兵たちも来るだろう
その後エリちゃんになぜここにいるのかを尋ねられ軽い説明したあとこんなことがあったんだもう料理を持ってこさせるのは辞めさせようと泣く泣く決心していると、彼女は泣きながらなぜ攫われることになったのかを説明してきた。
理由としてはまぁ、ほぼ俺のせいみたいなところがありそのせいでエリちゃんは怖い目にあい自分のせいだと思っている。
このままではこの子に良くないと思い俺のせいなんだよと言おうとしたが、話を聞くまでは気づかなかったが彼女は未だその小さな体に料理の入っているであろう箱を布でくるんだものを抱えていることに気がつく。
あんな目にあったのにそれだけ大事に持ってたんだな
俺はそれを見ていいことを思いついたと泣きやみ落ち着き始めた彼女をおろし地面にそのまま腰かけ膝の上に誘う。
彼女は少し緊張しながらも膝の上に座る、確かご飯を食べる前に攫われているはずなのできっとお腹がすいているはずだ。大好きなお母さんのご飯を食べれば少しは安心するだろうと思い箱の蓋を開け彼女の口に料理を運ぶ。
俺はエリちゃんにお腹がすいたとは言いはしたが実際は心配過ぎて全くお腹は空いていなかったが。
お腹は空いていたのだろう、料理を口に近づけるとすんなりと食べ飲み込んでくれる。
きっと安心したのだろうそれにまた少し泣き出したが口元に料理を運べば食べてくれるのでダグマさんと衛兵たちが駆けつけるまで2人で静かに食事をすることにした。
それから彼女はしばらくは家から出らなかったが、いや出して貰えなかったというのが正しいだろうな。
ダグマさんの怒っているのか安心しているのか泣いているのか分からない説教に後日されたラビッテさんのガチ説教を食らっていたので俺としては少し気の毒に思えた。
ラビッテさんの説教は怖いからな……
まぁ、今回ばかりは二人に心配をかけたんだ多少はしょうがない。
そうして日数が経つとエリちゃんはよく俺の店に遊びに来るようになった。
することがない日は家事を手伝ってくれたりする。
どういう心境の変化だろうか?
この前助けたことで懐いたのかな?
それは俺としても嬉しいことなのでそれからは以前よりも楽しい日々を過ごしていた。
エリちゃんが最近公園で男に魔法を習っていると教えてくれた。
しかしこの歳の子は普通魔力を感じられないため教えてもしょうがないはずだ、魔法の歴史や理論などなら分かるが、実践を?そんな子供達を集めて無償で?
少し怪しげに思った俺はひっそりと調べることにした、案の定男は怪しくその男を調べても大した情報は出てこなかった。
それどころか街の領主邸から調べるのを禁止されてしまった。
なんにせよいいことは無いのでエリちゃんにはもう魔法をならいに行ってはダメだと伝える。ちゃんと歳が来れば僕がいくらでも教えてあげられる
いや魔法に関してはラビッテさんの方が適任か。
僕も魔力は使っているとはいえあくまでメインは拳闘士だったためラビッテさんほど繊細に魔力は扱えない。それに体質的に魔力を使うには俺には問題もあるしな
しかしどうもそれに納得いっていない顔をしているエリちゃん。
「そんなブスくれた顔をしてもダメです、もう少し大きくなったらしっかり教えてあげるから」
彼女は嫌々ながらもこくりと頷いてくれた。
そこから半年ほど経つと今度は二人組を連れてきた。最近ちょっと面白い本を見つけたのでそれを床で読んでいるとあらわれた二人、エリちゃんに紹介してもらうと背の高い綺麗な女性がツクヨさん、ローブを着ていて容姿ははっきりとは分からないがエリちゃんと同い年くらいの少年がコハクくんと言うらしい。
ツクヨさんの美貌にも驚いたがそれよりも二人の魔力や動きの洗練度には驚きすぎて一瞬声が出なかった。
只者では無いことは明白だ
その後ツクヨさんには一瞬でエルフとばれた、ここ十年誰にもバレていなかったのに。
しかし嬉しいことに公園の謎の男について一緒に調べてくれることとなった。
正直彼女が今でもこっそりとならいに行っているのは何となく分かっていた、しかし止める手だてがなく、両親に報告しようかとも考えたがまだ余計な不安感だけを与えたくなかったので、まだ何も言っていない。
だからここで捜査が進むのは素直にありがたい
そういえばコハクくんはどんな外見をしていたっけ?
そうして次の日、本格的に調査に乗り込む計画を軽くたて二人と分かれる、コハクくんはエリちゃんと話してきたみたいでこの後来るそうですといい宿に帰っていった。
彼女が来るならそれまで店を開けておこうと思い待っているが何故か一向に彼女は来なかった。
昔のことを思い出し嫌な予感がして、店の見えるところに貼り手紙をしダグマさんの家に向かうことにした。
そこからが以前見た、いやそれ以上の悪夢の始まりだった
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目の前には魔法によって固定された魔法を今にも破りそうな勢いで暴れる大きな狼の姿に変えられたエリちゃんがいた。
正直この狼が彼女だなんて信じられないがそう言われれば暗いためしっかりとは見えないが狼の毛色はなんとなく彼女の髪の毛と同じ色をしているように見える。
「つらいよね、まってて今助けるから」
そう言ってボックは重たい腰を上げ気を抜けば垂れてしまいそうな両腕をかまえる。
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