18(ボック視点)
ボック視点ここまで長くなる予定はなかったんです
僕は暴れる狼となったエリちゃんを前に拳をかまえる
あまり長引くと魔力量的にも体力的にもこっちの不利だな
既にもう一度エリちゃんによる攻撃をくらい気を失っている、コハクくんもいない今、一発でも攻撃を食らうのはまずい。
コハクくんは一体何者なんだろう?
あの歳で魔力を扱えてしかもさっきの身のこなしに一瞬発動させようとした魔術多分僕より強いだろう。
コハクくんは残って一緒に戦うと言ってくれたが今はあの男を捕まえることが真っ先に優先すべきことだ。
足元の固定が壊れそうだ...
エリちゃんを大人しくさせるには手段は二つしかない、一つは魔力を全て使い切らせ意識を奪うこともう一つは心臓を止めることつまりは殺すということだ。
えりちゃんの顔を思い出す
「それは出来ないなぁ」
魔力を奪う算段ならもうついている、僕の体は魔法が使えない、正確には使うのに他の人の何倍も魔力を使うため僕一人では使えない。
そう、僕の体は魔力の燃費がとんでもなく悪いのだ
ただし他の誰かの魔力を受け取り必要量集まれば魔法は使える
これを逆に相手の魔力を奪い僕自身が魔力を暴走させれば相手の魔力をすぐに枯渇させることが出来るだろう。
しかしこれをするには欠点があり、ひとつは先ず相手の魔力を奪うには体を密着させないといけないということと相手の魔力を僕のからだを通して枯渇させる以上僕の魔力もなくなる。
最悪死ぬかもしれないな……
魔力が無くなれば意識を保っていることは出来ない、しかし、エリちゃんを魔力切れの状態にするには魔力が切れた上であの暴れる狼にしがみつかなければならない。
魔力枯渇だってすぎれば死ぬリスクはある、だがどっちにしろ彼女は今止めなければ後に来る冒険者や衛兵によって討伐されることになる。
俺だってそんな彼女を見たあとにのうのうと生きていける気はしない、それにここで引いたらダグマさんとラビッテさんに申し開きもできないからな。
「覚悟ならもうとっくに決まっているさ、エリちゃん今助けます」
狼は遂に足元の岩を壊し先程よりも怒った表情でこちらに走ってくる
あのスピードで暴れる狼の背中にしがみついて魔力を暴走させるなんてどんな無茶ぶりだと思うが嘆いても仕方がない
そのままこちらに向かってくる狼の元へ同じく走る後一歩どちらかが踏み出せばぶつかる距離にいる、右から大きな手と鋭い爪が襲いかかってくるので間一髪のところでその下を潜り後ろ蹴りを腹に向かって入れる。
コハクくんの蹴りほどの威力は無いため吹き飛ばすまではいかないが数歩下がる、そのすきに俺も大きく後ろに下がる。
しかしあまりダメージは見込めなさそうだ。
「鈍ったなぁ、こんなことならトレーニングは続けておけばよかったな」
そんな今更な嘆きを聞いてくれる相手は今はどこにもいない。
腹じゃダメだ、しがみついた時に暴れられないよう腕を取らなければ……
狼は数度お腹をさするとこちらに向かって吠えまた同じように向かってくる、しかし先程と違うのが爪に魔力が集中されており爪が赤く長くなっている。
こちらに向かいながら爪を何度か振ると足元の地面にしっかりと爪痕が残っていた。
射程が伸びたか、あれを避けるのは簡単じゃないぞ。しかし攻撃を受けすぐに爪を伸ばしたり本能で戦っているのか?
ちらりと周りを見てなにか使えるものがないか探すと石像が持っている槍が目に入る。
あれは使えそうだ
狼が爪を剣の束のように振り下ろしてきたので体ごと大きく横に跳び避け石像まで走る。
狼が追ってきているのが音で分かるが後ろを振り返っている余裕は無いのでそのまま石像にとびかかり何とか槍を手に入れることが出来たが後ろを振り返ると目の前で爪を振り下ろしてきていた。、
咄嗟のところで槍を盾にし防ぐが衝撃を流しきれず体が後ろに飛ぶ。
今度は壁にぶつからず途中でしっかりと着地できた。
その後何度か爪を振り下ろしてくるのでそれを槍を使って流し受けその隙をつきなんとか、左腕に一撃入れることが出来た。
狼の左腕は肘のところが紫色になっており曲げることが出来なさそうだ。
なんとかここまでやれた
行きも絶え絶えになりながらも魔力切れになる前に狼の四肢のうちのひとつを奪うことは出来た。
どうせ魔力切れにはなるんだ、それまでに何とか両腕抑えたかったんだがな、そこまで上手くは行かないか……
しかしこの後が大変だ。どうやってあのスピードで動く狼の背中を取り上手く掴み掛るか…
狼も片腕をやられたことで先程より興奮しているが走り回ったりはしていない。しかしこちらをしっかりと睨みつけてきている。
僕ももう走り回ったりするほど魔力は無い、狼の虚をついて一瞬で後を取るには……
少し考えひとついい案が思いつく。
多分これを失敗したら今までのが全て無駄になるな
しかしやるしかない!
勢いよく狼の元へ走る、狼も爪をかまえこちらに向かってくる。狼と距離が一メートルくらいになった時中間くらいの地面に思いっきり槍を突き刺し棒高跳びのような感じで狼の後ろに立つと残された全魔力を使って狼の背中に飛びつき両腕でしっかりとしがみつき足も体にまわししがみつく。
するとボックの体から大量の魔力が噴出される。
狼は吸い上げられる自分の魔力に驚き急いでボックを振り落とそうと体を降ったり動く方の手で背後にいるボックに手を伸ばしたりと暴れるがボックは捕まらないよう手を離さないようしっかりと掴む。
頼む、早く尽きてくれ!
まだなのか!
まだ実際は十秒程であったがボックの体感としては既にもう数分以上たっているように感じるほどであった。
その間も狼は暴れ壁に背中からおもいっきりぶつかり挟み撃ちとなり口から血の味がする液体が溢れるが離さずしがみつき続ける。
何度も壁にたたきつけられるがギリギリのところで意識を手放さないようにしなんとかしがみつく。
狼もこれでは無理だと諦めたのか魔力が切れかけてきたのか動きが先程よりも鈍くなってきており、遂に立ったまま暴れなくなる。
ついに切れたか……
もう既に意識の半分ほどはないがそれでもなんとか狼の状態を確認しようとする。
その瞬間ボックの右腕が宙を舞う
狼は自分の体ごと爪を伸ばしボックの右腕を吹き飛ばした、一瞬何が起きたのか分からなかったがここのままではバランスが取れず後ろに倒れてしまう。
そうなれば魔力を枯渇しきれず今までのことが無駄になってしまう………
ボックには既にその時そこまで考えることは出来ていなかったが、この男も既に意地のみで耐えているため残った腕で狼の魔力を使い筋力を上げ狼の胸と肩の間を貫き落ちないようにしがみつき、さらに上がりきった魔力出力を上げる
「うがあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「グガガガァァァァァア゛ア゛ア゛」
広場には二人の叫び声だけが響き渡る
ついに耐えきれなくなりボックは狼の体から落ちる
しまっ...た。もう一回……
何とかもう一度飛び掛ろうと思うが体を起こすことすら出来ずにいた
しかしそれを嘲笑うかのように狼は自慢の魔力を使い体の傷を修復する
だめ、でしたか。すいません……コハクく、んダグマさん……ラビ...ッテさん…………………助けられ、なくてすいませ…エリち……ゃ…
もう指一本動かすことができないボックは諦めここを託したコハクや彼女の両親そして彼女自身に謝罪を送るり、目を閉じる。
何より彼女に僕を殺させてしまうのが申し訳ないですね。
しかし自死しようにも舌を噛み切るほどの力も残っていない、このまま狼に殺されるのを待つことしか出来ない。
そう思いただ目を閉じ命が終わる瞬間待っているがなかなか狼からの追撃が来ない。
うっすらと目を開け狼の方を見るとオオカミが淡く光徐々に小さくなっていた。
ぼーっと見ているとその狼はどんどんと見慣れた少女の姿になっていきいつもの姿まで縮むとそのまま前に倒れてしまった。
本当はそれを支えてあげたがったが意識を集めることで精一杯のボックには何が起きているのかすら分からなかった。
しかし今目の前で起きている出来事こそがたった一つ望むものだった
よかった……戻ったんだね……
俺はそのまま少女の隣で意識を落とした。
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