11.いらないと言われると悲しいです
本屋に着くとそこは綺麗な見た目をしていて最近できたことが分かる
「ついたわ、ここはちょっと前にできた店なんだけどお店の人が本に詳しいからどんな本を探してるか言えばとってくれるの」
わざわざ探さなくてもいいってことか
「二人ともどんな本が欲しいの?」
「うーん、俺は料理の本かな?あとはなんか面白そうなのがあれば、師匠は?」
「私もなんか面白い本があればって感じだね」
「料理の本以外は特にないのね」
えりは不満そうだこればかりは仕方がない、なんせ師匠は長い時間生きて既にあらかたの知識はあるみたいだし、俺も必要な本はだいたい師匠の家にある。
わざわざ買う必要が無い、ほぼ掘り出し物を探しに来た感覚だ
本屋に入ると店員らしき二十代くらいのボサボサした髪の男性が寝転んで本を読んでいる。
あれ?店開いてたよな?
男はこっちに気づくと慌てて立ち上がる
「うわ、すいません!あれ?エリちゃん」
「ちょっと先生!恥ずかしいとこ見せないでくださいよ!」
「いや、ごめん。もう今日はお客さん来ないかなと思って」
いや、お客さん来なくても床には寝るなよ
にしても先生?話し方もなんだか親しそうだ
「先生って、二人も師弟関係みたいな感じなの?」
師匠も気になったようで聞くと
「いえいえ、そこまでじゃないですよ。たまに公園で子供たちに文字の読み書きを教えているんです」
「でも先生ってばお仕事はできるのに他のことがてんでダメなのだからパパママから頼まれてお手伝いをたまにしてるの」
「ハハハ、ラビッテさんとダグマさんにはお世話になってます。ところでエリちゃん、お二人は?」
「女性の方がツクヨさん、こっちの子はコハク昨日知り合って今町を案内してるの」
「ツクヨさんといえば魔獣殲滅の?いや失礼、初対面なのにお恥ずかしい姿お見せしました。私はボックと申します、一応ここの店長させてもらってます」
「わざわざご丁寧にどうも、エリちゃんのおすすめで来ました。なんでも特徴さえ言えばすぐ見つけてくれるとか」
魔獣殲滅?なんだそれと思いながら「どうも」と挨拶しておく。冒険者ギルドでも有名みたいだったしその辺のことだろう
「いやー、仕事だけが取り柄なんでそれでなにかお探しの本でもあるんですか?」
ちらりと師匠がこちらに目線を送るので
「料理の本となにか面白い本もしくは珍しい本なんかがあればな」
我ながら適当な条件だとは思うがこれしか言いようがないから仕方ない
ボックさんはそれに対し嫌な顔はせず
「料理の本でしたら沢山ありますがジャンルや難易度選ぶことが出来ますよ」
「ジャンルは問わないので家で再現できるレベルの料理が載っている本だと嬉しいです。」
「魚料理がいいと思うわ」
エリは黙ってて欲しい
そう気持ちを込めてエリの右頬を軽くつねる
「いひゃい、いひゃい、魚料理も必要でしょ!」
「魚に偏って欲しくないんだよ」
まだ、不満そうなエリはほっといてボックさんにあるか尋ねると
「大丈夫ですよ魚料理もそれ以外もいくつか該当するのを持ってきますね、珍しい本はないですけど面白い本なら幾つかあるのでお持ちしますね。ツクヨさんは如何します?」
「私が欲しいのもだいたいコハクと一緒なので」
「わかりました。ではお持ちしますので少々お待ちください」
そのままボックさんは店の奥に行きすぐにたくさんの本を抱えながら戻ってくる
めちゃくちゃ早いな
店のどこにどんな本があるか全て覚えているというのは本当らしい。
「先に料理の本をいくつか持ってきましたのでこちらからお選びください」
そう言うとまたすぐに店の奥に行ってしまう。
「思ってた以上にたくさんありますね」
「料理をする人は多いからね、当然その分著書も増えるんだよ」
読む人が多い分種類も増える当然の話だ
「これとこれと、あれもね」
隣ではエリが本の山から魚料理の本だけ取り出し分けている
怖いって……
三人で本を選んでいるとボックさんが戻ってくる、先程とは違い手には四冊の本を持っており、ひとつずつ目の前に出す。
「お待たせいたしました、面白い本と言うのでまずこの『タンディー領の不思議解明!あの空に浮かんでいたものとは!』ですね。実際にある都市伝説を現実的に考え実際どうなのか真面目に書いてある本です。つい読み込んでしまいますね」
こういう本はどこにでもあるんだな、前世でも俺を育てた男のテーブルにあったのを見かけたことがある
「そしてもうひとつが『世界で誰も知らない!秘伝!お金の稼ぎ方!』これは面白いですよ」
めちゃくちゃ俗っぽいやつが来た!
世界で誰も知らないなら誰が本に書いたんだ
「タイトルの矛盾が既に面白いですし、中身も浅はかすぎて面白いです。結構売れてます」
そういう楽しみ方をするのか……
確かにそこまで言われると読んでみたい気はする
「最後にこれです『ケンディの冒険譚 上』普通に面白いです」
最後に王道なのがきたな、まぁあ実際面白いんだろうけど前二つがトリッキーすぎて弱く感じてしまう
ん?最後?さっき4冊に見えたのは気のせいか?
師匠は二番目のお金の稼ぎ方の本を手に取る。
エリは最初の本に興味があるようだ、まあ好きそうだ。
俺はそこまで興味は無いが余った一冊をとろうとすると
「ちなみに、別段面白い本ではないんですけど全然売れない本がひとつあるんですけど珍しくはあるのでお持ちしました」
やはり四冊あったのは見間違いじゃなかったらしい
けど面白くなくて売れないなら珍しくても別にいらなさそうだな
「ちなみにこれです」
ずっと差し出した本の表紙は何も飾り気なく『転生』と書かれていた。
転生……
「中身は自称転生者の一生の日記みたいなもので転生について研究していたらしいんですけどホントかどうかも分からないし、面白くもないので売れないんです」
その本から目を離すことが出来なかった。
密かにずっと考えていたことがあったからだ。
俺はこの世界に転生したことに当然不満は無いが一つだけ気になり続けていることがある。
真白の存在だ……
あの時俺たちはほぼ同時に息絶えたはずだ。それなら彼女も転生している可能性があるのではないか
一度師匠にそれっぽいことを聞いたことはあるが確率は薄いと言われた。仮に転生したとしてこの世界かも分からないしそもそも人である確証もないのだ。
その時は確かにそうだと思ったがどうしても考えを辞めることは出来なかった。
本を手に取りじっと見つめていると後ろから師匠が肩に手をおき心配そうな顔をしている
俺がまた倒れないかと心配なんだろう、師匠に「大丈夫です」と伝えると横で
「まぁ、転生なんてありえないわよね。ホントなら王様とか貴族様は毎回してそうじゃない」
転生は一般的には都市伝説レベルだ、師匠は長く生きている分何度かあったことがあるらしいが普通の人達からしたら転生者と会うなんてすごい確率なんだろう
まぁ、隣にいるんだが
とりあえずいくつか選んだ料理の本とその後持ってきた四冊は買うことにした。
都市伝説の本はエリが好きそうだったのであげた。本当は『ケンディの冒険譚 上』もあげようとしたがいらないと断られた
ケンディ……
この本は俺が帰ってちゃんと読もう
そこでふと少し気になっていることを聞いた
「そういえばエリ、たまに公園で魔法を教えて貰っているとか言ってたけどそれもボックさんなの?」
するとエリは焦った顔をする反面ボックさんは目を鋭くしエリに向かい怒りだす。
なんだ?言っちゃまずかったのか?
「エリちゃん!もうあそこに魔法を教わりに行っては行けないと何度も言っているでしょ!」
「うぅ、だって私も早く魔法を使えるようになりたいんだもん。みんな行ってるし、先生はまだ早いって教えてくれないじゃない」
「当たり前です!まだ君が魔力を使うには早すぎる!」
「おじさんは早い方が上達も早いって言ってたもん!実際少しづつだけど使えるようになってきたし、先生は魔法使いじゃないんだからほっといてよ!」
そう言ってえりは本屋から飛び出す
「エリちゃん!」
ボックさんもそれを追おうとするが師匠が一旦それを止める。
「ボックさん、その件について少々教えて貰っても?」
そう言って師匠はギルドカードをボックさんに見せる
「Sランク冒険者!いやしかし、エリちゃんを追いかけないと」
ランクに驚いていたが飛び出したエリが心配なのだろうチラチラと入口の方を見ている
俺も師匠と一緒に話を聞きたいけどここは仕方ないな
「エリは俺が追いかけますよ、なのでボックさんはここにいてください」
「頼んだよコハク」
「わかりました」
師匠と短くやり取りをしそのまま入口から店を出てエリ向かった方に俺も走る
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