10.お金は計画的に使いましょう
試着室でもみくちゃにされた俺は今日一番目のお店だと言うのに既に全ての体力を消費していた
そんな俺とは対照的にホクホクと満足そうな顔の三人、おばあちゃんに至っては十歳くらい若返っていそうな程だ。
師匠の隣に立つスピードと言いあの気配を感じさせない動き、いったい何者なんだ
そんなどうでもいいことを考えながら店の隅で座っている間も三人はワイワイと服を選び最終的には師匠の両手いっぱいに抱えるほど買い込んでいた。
あぁ、そういえば師匠は普段はいつも同じような黒い服を着ているが魔法を教える時はカジュアルスーツにメガネだったり、料理をする時はコックのような服を着たり所々場面によって格好を変えているから服が好きなんだろうな
ちなみにこれが日本ならその大量の荷物はどうする気だとなるだろうかここは異世界なのでアイテムボックスという不思議な袋があるから大丈夫だ。
これは袋に闇魔法がかかっており袋の中に別の空間を作り出す術式が組み込まれているのであんな大量の荷物もコンパクトになり運べるのだ。
ちなみにこの袋は一般にも出回っており入る量が増えるほど金額が高い
ちなみに師匠が使っているのは師匠のオリジナルの袋でなんと時間のたちが百分の一になる代物だ
お金を払い、いい笑顔で戻ってきた二人
「いやー、思ってたより随分と安くしてくれた。これもコハクのおかげだな。また来ないとな」
「でも確かにあのファッションショーにはそれだけの価値がありますね。その時はまた呼んでください」
そんな恐怖の宣言をされても困る
次は直ぐに自分で選ぼう
次の予定としては通り市だ
今日一番の楽しみだ、さっきのことは悪い夢だと思って忘れることにしよう。
「通り市って何がでてるの?」
「なんでもあるわ!食材にアクセサリー、骨董品なんかも置いてたりするけどそこら辺は日によってバラバラね」
「師匠は行ったことないんですか?」
「住みだした頃に一回来たことがあったような……」
まあ、それくらいならもうほとんど覚えないだろうな、覚えててもだいぶ変わってるだろうし
「エリはよく来るの?」
「ママの仕事の休みはよく来るわ!一緒に夜ご飯の食材を買いに行くの!」
「あれ?お父さんは?」
「パパはあんまり仕事の休みがないからなかなか昼間は一緒にいれないの、でも夜は沢山お話してくれるのよ」
とても仲のいい家族のようだ、師匠はパパという単語に笑っていたが父親の方と面識があるんだな
そんなこんなで歩いているとチラホラと道端にお店が増えてくる
昨日の露点があった通りよりもさらにたくさんの数が見える、確かにこれはすごい。
師匠もここまでとは思って見てなかったみたいで目の前の景色に魅入っている
「ね!凄いでしょ?ほら二人とも行きましょう!」
俺と師匠の手を引っ張りながら歩く。
「この辺は色んな食材が売ってるわよ、見たことないものもあるんじゃない?」
左右の露天に目を移すと、知ってるものから知らない魚や野菜が沢山あった、ひとまず目の前の店から攻めていくことにして、店番をしているおじさんに話しかける
「この野菜はどうやって食べるんですか?」
「お、こいつはな肉と一緒に煮込むと美味いぜ!こっちのは煮込みでもフライでもいける!」
茶色い実を持ち教えてくれる
それはぜひ食べてみないと!
「それじゃあそのふたつを四つずつください」
「はいよ!一個おまけして五個ずつ入れてやるよ」
それはありがたい!お礼を言って他のお店にも回る、そんな様子を少し離れたところから見る二人
「さっきの服屋とは打って変わってとても楽しそうですね」
「ははは、さっきはちょっとやりすぎたね」
「にしても買いすぎじゃないですか?いいんですか?」
「いいんだよ、あの子には今は楽しんで欲しいからね」
辛いことが多かったあの子には、生きることは楽しいんだと教えてあげなきゃいけないからね
そうして、買い物を楽しむ我が子同然の弟子を眺め
「いや、あれは買いすぎだな。あのままじゃ野菜コーナーだけで渡したお金を使い切りそうだ」
と目を輝かせながら色んな店の人に話を聞きながら野菜を買いまくる弟子を止めるために足を動かす。それに、あまりこの少女にコハクのこと深堀されても困るからね
「ですよね!行きましょう、ツクヨさん!」
そんなツクヨの考えは知らずコハクを止めるべく二人で彼の元へ向かう。
どうもいつの間にか買いすぎていたらしい。二人が止めに来たことで気づけた。
あぶない、あぶないこのままではお肉まで行けないところだった。
そこからは師匠とエリが両脇にいるので暴走して買いまくることは無かった、しかし三人で魚介類を見ていると後ろの方から気になる声が聞こえてきた
「今日はなんと!ベアコングの肉が入ってるよ!どうだいどうだい!栄養価も高いし美味しいよ!」
ベアコング?クマなのかゴリラなのか分からない名前だ、気になって声のする店に向かうとそこには六メートルはありそうな大きなクマがいた
でかい……
「珍しいね、ベアコングがこんなところに出回るなんて」
師匠は知っているようで店主に話しかけると
「おう、なんでも山の結界を超えて来たみたいでな街の警備員とたまたま近くにいた凄腕の冒険者が倒したところを俺が競り落としたって訳よ」
「師匠これがもしかして」
「あぁ、実物を見るのは初めてだったな。これは魔獣だしかもベアコングは山の奥に住んでいるからなお珍しい種類だ。本来人里になんて降りてくるはずないんだがな」
師匠は思うところがあるようでふむと考え込んでしまった。
「私もここまで大きいのは初めて見たわ!こんなのと戦うなんてコハクたちはほんとにすごいわね」
「いや、俺はだってこんなのとは戦ってないよ」
戦ったのはせいぜい二メートル位の大男だけだ、それも冒険者になる前だけど
「おいおい、話もいいけどどうなんだい?買うのか?」
店主は困ったような表情をする、まぁ店前で買わずにこんな話に花を咲かせていては迷惑だろう
「師匠、いくらか切りとって貰いますか?」
「ん?あぁ、そうね。主人、胸のところを五キロと適当に十キロほど貰えるかしら」
胸のところが美味しいのだろうか?
「お客さん、よく知ってるね。ここがいちばん上手くて栄養もあるからな!ちょいと待ってな、すぐ切り分けっからよ!」
名前にコングがついてて胸が美味しい……
このクマはドラミングするのかもしれないな
それからはベアコング以上に目を引くものはなかったが色んな食材に出会うとこができた
家に帰って料理するのが楽しみだ
「あの、私までベアコングのお肉貰っちゃってよかったんですか?」
師匠はあの後別に胸と別の部位を分けてもらいエリに渡していた
「いいさ、案内料みたいなもんだよ」
「そんな、後で魔法を見せてもらえるので十分なのに」
「ま、この前エリのお父さんには少しばかり世話かけたからね。賄賂だよ、賄賂」
あの日エリのお父さんがいたのか
「わかりました、ありがとうございます。でもこれ以上はもう受けとりませんからね」
そう言いながらエリも自分のアイテムボックスに肉を仕舞う。
「それでいいよ」
師匠としては魔法を少々見せた程度ではお礼にならないと思っているのだろう、落とし所としてはいいとこだ。
「さて、次は本屋だね。何か面白い本があるといいんだけどね」
「うーん、順番間違えたかも。本屋を最初にすればよかった」
まぁ、思っていた以上に服屋も市場も盛り上がったためエリの中でハードルが上がっているのだろう
「もう既に十分なほど収穫があったんだ、そこまで考えなくていいよ」
「ならいいんだけど」
途中屋台で色んな具材を煮込んだ鍋があったので三人分頼み小さい器によそってもらったのでそれぞれ食べながら本屋に向った。
いつの間にかもう10話目なんですね、読んでくださっている皆様ありがとうございます。これからもコツコツ書いていこうと思うので応援よろしくお願いします。
今回も読んで頂きありがとうございます。
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次回も是非よろしくお願いします( ´ ▽ ` )




