9.なんでもいいはやめましょう
とりあえずその日は宿で食事を取ったあとお風呂に入ってそれぞれベットにもぐった。
それなりに色々あったので横になるとすぐに眠りにつくことが出来た
いつの間にか俺は何もない白い空間に立っていた
ここはどこだと周りをキョロキョロと見回すと一人の女の子がたっていた
真白だ
すぐに真白の元に向かおうと走る
「…………」
彼女は何かをつぶやくが、こんなに何も無い空間なのにそれがなんと言っているのか聞こえない。
こんなに走っているのに振り向いて俺と反対方向に歩く真白に追いつくことが出来ない
待ってくれ!
俺、君に伝えなきゃ行けないことがあるんだ!
名前が出来たんだ……
遠くで彼女が振り返り、初めて話した時のような笑顔をしていた
「またね」
彼女の方から眩い光におおわれ目を開けていられなくなる
待って、真白!
目を開けると天井が見える
夢か……
だけど今まで見ていた彼女の夢とは違うことがひとつ
久々に笑顔を思い出したな、今までは血を流し倒れる君しか思い出せなかったのに
またね、か。もしかしたら君もこっちに来てるのかもしれないな……
それは都合のいい夢か
自分の甘い考えに苦笑していると急に横から話しかけられる
「おはよう。なんだい、起きたと思ったら急に薄ら笑って。その年でもう変な夢でも見てたの?」
この人にはリテラシーというものが搭載されてないんだろうな
「おはようございます、師匠。ちょっと昔の友達と会っただけですよ」
前世の話と伝わったのだろうそれ以上話の深堀はされなかった。
「今日は約束があるんだからそれま程々にして支度しな、食堂に行くよ」
「分かってます、すぐ準備するので少しだけ待っててください」
顔を洗い手洗いうがいだけ済ませ師匠の元に行き、食堂に向かった
この食堂は朝メニューも魚だらけのようで二人で焼き魚と魚の出汁を取ったスープをシェアしながら食べる。朝から一人一匹は多かったのでシェアすることになった
「そういえば今日はエリが案内してくれることになってますけど集合時間と場所とか決めてないですね?」
「そういえばそうだな?案内してもらうわけだしもう少ししたら家の方に伺ってみるか」
「ですね、にしても気になるのがエリはここが魚だらけの宿屋と知ってるのでしょうかね」
冒険者からの評判と言っていたから泊まったこと自体はなさそうな感じだったが
「どうだろうね、あの感じなら知ってておすすめしていそうだし知らずに直感でここを引いてるような気もする」
どちらも有り得るから答えは結局出ない、まぁ後で会うことだしその時聞いてみようと話していると宿の入口の方が騒がしかった
「昨日ここを案内した二人に街を案内する約束をしてるの!」
「ですのでまず確認を取ってから呼んできますので」
「大丈夫です!部屋さえ教えてくれればこのまま行きますから!」
なんだか聞き覚えのある声と宿屋の主人の声がする
師匠と顔を見合せ声のする方に向かうと想像通りの姿がそこにはあった
「なにしてるの?エリ」
「コハク!聞いてください、この人がコハクと知り合いだと言っても通してくれないんです」
「そりゃ宿屋からしたらホントかどうかも分からないんだから当然だよ」
プンスカと怒るえりにそう伝えるとうっと怯む
「宿屋の主人も仕事中なんだから迷惑かけたらダメだよ。今謝っときなさい」
「うー、ご迷惑かけてごめんなさい」
師匠と俺も一緒にご主人に謝罪する
「いやいや、分かってくれればいいだ。」
と快く許してくれた、いい人だ
「とりあえず俺も師匠もまだ朝ごはんの途中なんだ、エリはこんな早くに来て朝食は食べたのか?」
「パンを食べてきたわ!今日行きたいところもうちょっと聞きたいから一緒にいていい?」
もちろん断る理由は無いので頷いて、元の席のところに向かう。元々四人席に座っていたのでエリが来てもまだ座れる
テーブルにつくと師匠が果汁ジュースをひとつ頼みエリの前に置かれる
「え、そんないいですよ」
エリは手を振って断るが師匠は気にした様子もなく
「私たちが気にするんだ、遠慮せず受けとっておくれ」
そこまで言われたらエリも断れず「いただきます」と飲んでいた。
「ところで今日行きたいところ食材を買いに行きたいというのは聞いていましたけど他にはなにかないんですか?」
「うーん、あと服屋に行って琥珀の服を買うのと出来れば本が沢山売っているようなところにも行きたいね」
服か、俺は着れればなんでもいいが確かにもう少し数があると着まわせるのでありがたい。あと本屋は俺も見てみたい、主に料理の本。魔法の本は師匠の家に沢山あるが料理の本はもう少し欲しい。
「服屋と大きい本屋さんですね、わかりました!任せてください!」
とエリが胸を張ると「くぅー」と小さくお腹の虫が鳴いていた。顔を赤くしお腹を抑えるエリに師匠もふっと笑い魚のスープを一人前頼んでいた。
さっきのジュースと同じようなやり取りを二人でしていたが最終的には目を煌めかせながらスープを飲んでいた。
ちなみにこの店のメニューが魚だらけであることは知らなかったらしい。
直感タイプか、通り市も魚だらけじゃないだろうな……
そんな不安を感じながら朝食を3人で食べ街へ出ることにした
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
三人で街を歩く、最初は距離的に一番近くにある服屋に行くことになった。
「そういえば二人はどういう関係なの?親子にしては似てないし、驚くほど美形という点は似てますけど、でも昨日は手をつなぎながら歩いてたし……まさか年の差!」
「俺が倒れているところを師匠が拾って助けてくれたんだよ、そこから色々あって魔法を教えて貰っているんだ」
変な想像しだしたのでその想像はしっかりと切り捨てさせてもらう
「一緒に暮らしてるんだからほぼ養子兼師弟関係だね」
まぁ、師匠の家でお世話になって名前まで貰っているんだ親と言っても過言ではないだろう
親か、まさか俺に親ができるなんてな
「そうなんですね、なんだか物語みたいで素敵ですね!」
「そういえばエリの家族はどんな感じなんだ?兄弟とかいるのか?」
「うちは普通の家ですよ、兄弟はいないけど、そうだ!お父さんとお母さんは冒険者ギルドで働いてるんですよ!二人とも冒険者だったらもしかしたら会ったことあるかも」
「へぇ、それは興味深いわね。両親はなんて言うの?」
「お父さんはダクマでお母さんはラビッテと言います」
熊とうさぎかお母さんの方が心配になる名前だ
しかし、なるほど両親が冒険者ギルドで働いているから冒険者の評判に詳しかったのか。
すると名前を聞いた師匠は面白いものを聞いたとでも言うように悪い顔をしていた。
知ってる人だったのだろうか?
それからたわいない話をしながら歩いていると店の外にまで服が置いてるお店があった。
店自体に年季は入っているが服はどれも綺麗に整えられていて良い店というのが素人目にもわかるが盗られたりはしないんだろうかとも思うがこういう店は前世の日本でもあった。そういうものなんだろうと思い店に入ると、おばあちゃんが「いらっしゃい」と奥から声をかけてくる
「コハクは服の好みは何かあるかい?」
師匠に聞かれるが服なんて動きやすければなんでもいいと思っているのでそのまま伝えると
師匠とエリそれから奥にいたおばあちゃんの目までがきらりと光る
え?なに?
「いやいや、そうだろうと思っていたよ。ふふふ、どれだけこの日をまちわびたか」
「えへへ、コハク。ちょっと着てもらいたい服があるんだけど」
「ふぉっふぉっふぉ、色々試着してくれるのかい?安くするよ」
いつの間にか二人の隣に立っていたおばあちゃんを含めにじり寄ってくる三人に俺は抵抗する暇も与えられずあっさりと捕まってしまった。
試着室に拉致された俺はこの後一時間弱ほど着せ替え人形とさせられた
試着室から開放された俺はもう二度となんでもいいと言わないとそう深く誓った。
今回も読んで頂きありがとうございます。
どんな評価、感想でも励みになりますので良ければお願いします。
次回も是非よろしくお願いします( ´ ▽ ` )




