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呼び出しに応じる気にならなかったらしい有馬五郎は、車待ちをしているところで背中に銃口を当てられていると悟り、小さく両手を挙げた。
「……なんのつもり? えらく物騒なことね」
紅を引いた艶やかな唇をゆがめる。
ハスキーで声は低いため、中性的といえなくもなかった。
「やり手の詐欺師だとは聞いていたが、まさかあんたが有馬五郎だとはな。変幻自在ってやつなのか?」
一見したところではカップルのように見えなくもないほど密着したレオンが低く呟く。
「誰に依頼されたの? こんなところで撃ったら騒ぎになるわよ」
しかし、修羅場には慣れているのか、動じる様子はない。
「そうだろうな。一応本人確認のつもりだ、これは」
「今ここで殺るつもりはないってこと? ただ、アンタの面が割れたのはまずかったわね。アタシ、一度追われた相手に捕まったことはないのよ」
「――⁉」
一瞬の隙をついて、彼女の履いたパンプスの踵からなにやらガスが飛び出した。
「ごほっ……なに……」
それをよけきれなかったレオンがむせながら、後ずさる。
「アタシの後ろを取れるなんて、なかなかの逸材みたいじゃない。それに免じて致命傷は追わせないであげる。じゃね」
そう言い残すと、有馬五郎は車に乗り込み、その場を去った。
「まっ……て……くそ……」
レオンは胸を押さえてその場にうずくまっていた。




