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デート当日。
大手シュミラクラデパートの前で一七時に待ち合わせてはいたが、緊張のあまり四〇分も前に着いてしまったレオンは汗だくの状態で立ち尽くしていた。
――こういう場合はどうすればいいんだ?
人には決して言えない経歴の持ち主である彼に、女の子と甘い逢瀬を楽しんだ経験など皆無だった。
作戦というか、仕事の一環でデートもどきを体験したことはあるが、他人の用意したシナリオに則った動きしかできていない。
任務を遂行することに集中していたため、内容もほとんど覚えていないのだから、経験値としてのポイントはすこぶる低いと言わざるを得ない。
折角デパートの前に居るのだから、プレゼントでも用意すればいいのに、そういった考えにも至らず、ただ待ち合わせ場所の前で棒立ちするのみである。
「お待たせしました」
そうして待つこと十数分。
息せき駆けてくるのは愛しの彼女――百合亜の姿だった。
着替える余裕がなかったのか、仕事着のシックなドレス姿だ。
「あ、いえ、というか……まだ約束の時間までは……」
結局、一六時三〇分を回ってしばらくしたところで会うことが叶ったレオンは、そういいながらも気分が高揚するのを感じていた。
「仕事を早く上がることが出来たので。でも、千蔵さまも早くいらしていたのですね」
「あ……お、僕の方も……」
背広姿の千蔵――になりきったレオンは感激したように、頬を紅潮させていた。
――やはり、ジョセフさんのおっしゃる通り。早くからいらしてたみたいで。
レオンの性格をよく知っているジョセフによると、「不慣れなことに対して人一倍用心するため、待ち合わせの三十分前には現れるだろう」とのことだった。
「ええっと、どうしようか、これから……」
そこでふと、映画のチケットの存在を思い出す。
ジョセフから受け取ったまま、中身を確認していなかったため、上映時間と何の映画なのかということも把握していなかった。
「……一八時上映とあるな」
映画の内容はともかく、映画館に向かうには早すぎるだろうと、デパート内の茶店に入ることにした。




