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「例の医者な、おかしな場所で野垂れ死んでたって。呼び出した挙句に惨殺とはおまえさんらしくねえな」
あの日から二日が過ぎ、レオンらしからぬやり口に苦笑いしつつ、ジョセフは自身の古書店に現れた彼に苦言を呈した。
「実は――トドメは刺していないんだ。最終的に狙撃してヤツを仕留めるつもりで離れたところから様子を伺ったら……もう。……おそらく、俺たちのあとを尾行けてきた者がいて……そいつがこの件に便乗したんじゃないかと思う」
「おまえさんの依頼者と同じような被害者の身内か?」
レオンは「分からない」とかぶりを振った。
「こめかみには銃で撃たれた痕跡があった。だから、素人がやったわけじゃない」
「う~ん、じゃあ、おまえさんの同業者の仕業って可能性もあるな。別口のさ。便乗するなら便乗させてくださいって一声欲しいもんだけど、まあ、それにしても相当恨みを買ってたんだな、鹿島の野郎」
「……そうだな」
鹿島を撃った者の存在を不気味に思いながらも、レオンは自分がとどめを刺さなかったことに妙な安堵感を覚えていた。
――こんなことは初めてだ……。やはり、大切な人が出来たからだろうか。
百合亜の存在を噛み締めながら物思いに耽るも、レオンはジョセフのひとことで現実に引き戻される。
「同業者なら、一度挨拶してみてえけどな。いい取引先になるかもしんねえ」
「……信用に足る人物ならな……」
「それはそうと、今後は依頼人の情にほだされることなく、ひっそり殺れよ? 分かってるとは思うけど」
「ああ、斡旋屋にも絞られた。おかげで減給だ」
「青年実業家になり切るのも金が必要なんだろ。余計なことは慎めよ」
「分かっている……」
――本当に大丈夫か?
憮然として応えるレオンに対し、色々言ってやりたいことはある。
だが、これ以上の警告は煩わしく思われるだけだろう。
本来自分はそういうキャラクターではないし、レオンとの良好な関係が崩れるのもよろしくない。
人知れず嘆息したジョセフは、
「あ、そうだ。明日はデートだっていってたな」
何かを思い出したように、ぽん、と手を叩くとなにやら封筒を取り出した。
「なんだ、これは?」
「俺からの餞別だよ。どうせ、どこに連れてくかなんて考えてないんだろ? 映画のチケットだ」
「……あ、ああ……」
言われてみればそうだ。
二人で食事をして散歩をする程度にしか考えていなかった。
『仕事』目的で女性と過ごしたことはあったが、純粋な付き合いは初めてだ。
「デートってんなら、相手を楽しませないとな。愛想つかされちまうぞ」
「こいつも情報料に上乗せされるのか?」
チケットを持った手を見せながら、レオンが訊いた。
「そこまでがめつくねえよ、餞別っつったろ? せいぜい楽しんでこい」
「あ、ああ……恩に着る」
素直に頭を下げながら、レオンは封筒を懐に仕舞った。
――俺の勘が正しければ、このチョイスで間違いない筈だ。
ジョセフは人知れず、したり顔で頷いた。




