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「なぁにやっちゃってんの、ダサいなあ……」
くぐもったような男の声。
助かったと、胸を撫で下ろした鹿島は声の方を振り返る。
「申し訳ありません。とんだ失態を。こんな筈では……」
「うん、そうだね。油断しちゃったのかな?」
黒い仮面を着けた黒服の男が応えた。
「そ、そのようなつもりはございませんが……。今後は一層気を引き締めて……」
と言ったところで、何か硬くて冷たいものがこめかみに触れた。
「――っ! な、なにを……」
「きみのやったことはさぁ。露見しちゃうわけなんだよね。まあ、うまくもみ消す手段がなくもないんだけどさ、一度さ、ネズミを取り逃がしてこんなことになった以上、今後はもうやりにくいでしょ?」
黒い皮手袋を嵌められた指が、その引き金を引こうとする。
「も、もう一度チャンスを……‼」
「だってさあ、きみ、世の中ナメすぎなんだもん。詰めも甘いしね。経験上、こういうことで大目に見てうまくいったってケース、ほとんどないんだよね」
「な、に……を」
「間引きだよ」
男の声が低く響いたことで真剣味を帯び、鹿島の血の気が引いた。
「ま……そんな……わ、た……しは」
「役立たずは間引かなきゃ。きみもよく分かってることだよね?」
「ま、び……く? そんな……わた……しは……間引く側であって、間引かれる方では……」
ガタガタと震えながら鹿島が消え入りそうな声でそう漏らした。
「間引く立場、か。傲慢だねえ。だからこんなことになっちゃったってわけなんだろうけど。もう少し謙虚さがあればなあ……ボクからしてみれば、きみのことも大した駒だとも思ってないんだよ。もうちょっと自分を客観視できる能力があれば長生きできただろうけどねえ」
「――ぶ、分不相応な発言を……申し訳ありません。今いちど――もういちどチャンスを……っ」
ただひとことそう言い残したところで、鹿島は動かなくなっていた。
「聡明な医者だって割には面白味のない最期の台詞だよ。つまんないねえ……惜しいなんて欠片も思わない」
男は鹿島の遺体を蹴り、転がした。
「ただ、トカゲのしっぽは然るべきタイミングで切った方がいいとは思ったんだよね」
そう呟いた男は、聖歌229番『驚くばかりの』を口笛で奏でた




