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「ジョセフさん、あれって……」
鹿島医院から数十メートル離れた民家の屋根の上で、百合亜が振り返った。
「嗅覚の優れた敵さんには効果てきめん。攪乱アイテムってヤツだ。ヒトの戦闘員でも現れりゃやばいって思ってたけど、鹿島の秘密主義っぽい気質のお陰で助かった。ってか、お嬢、あんたかなりの健脚っつーか、類まれなる運動神経の持ち主っつ~のか……」
忍者さながらの常識破りな動きで民家の塀と屋根を飛び越えながら、それなりの速度で進んでいたジョセフは、大した遅れを取らずについてくるお嬢様に対し、ここでもまた驚いていた。
「体力づくりは基本ですから。毎日トレーニングは欠かしませんわ」
息を切らせずジョセフに続きながら、百合亜は長いスカートの裾を掴んだ状態で不敵に微笑んだ。
「……いったいどうなってやがんだ?」
正直、ジョセフは百合亜が足手まといになり、すぐに追い詰められるだろうと予想していた。
さらにはそこからどう逃げ出すか、脳内シミュレーションまでしていたが、どうやら杞憂に終わりそうだ。




