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見合い相手は殺し屋でした⁉ 幸せを掴むスリリングなメソッド。  作者: 八波琴音


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 鹿島が隠し通路を使って現場に到着すると、各々心を病んでいる女性の中に、呼び鈴を鳴らしたかと思われる少女が、天井を指さしていた。

「せんせー、あっち、なんか、光った。こわい、モノノケ?」

「光った? 何か音はしたかい?」

 座敷牢に見える病床の鉄格子ごしに、現れた鹿島が訊いた。

「わかんない、でも、かしゃ、とかなんか音がした……」

「ひひひ、カメラのシャッター音に似てたね……うふふふふふふ、うちがべっぴんだから撮られたかね。ひひひひ」

「……カメラ?」

 鹿島は眉間に皺を寄せた。

「そうか。残念だ。ここの実験は中止しなくちゃならなくなった」

 鹿島は壁際のレバーを引いた。



 遠くの方でどん、と大きく何かが落ちるような音が響いた気がした。

――なんだ? もしかして、さっきの呼び鈴で……? 何かあったのか?

 天井で這いつくばったまま、ジョセフはびくりと身体を震わせる。

「ドブネズミ、聞こえるか? 何のつもりか知らんが。ここへ入ってタダで済むと思うなよ?」

 数メートル先の天井の板が外れて穴が開き、低く、冷たい声が天井裏に響く。

 華族の患者に対するような温かで優しげな医師の声色の名残はない。

――間違いなくクロ。わっかりやすいな。

 しばらくすると、何かが投げ入れられるのが見えた。

――や……べっ……!

 そこから、もくもくと煙が立ち込める。

 人体に有害な燻煙剤でも焚かれたかと、慌ててマスクとゴーグルを装着し、侵入場所を目指して進んだ。

 が――

――嘘だろ……。

 侵入経路を気取られたのか、天井裏に入り込む際に使った、板が外れる箇所が塞がれている。

 思わず、がんがん床を殴ったが、その程度の力では空きそうもない。

――っていうか、この下に敵さんが待ち構えてる可能性を考えると、別ルートで逃げるしか……。

 が、振り返るともうもうと煙が立ち込めている。

 持参したマスクの効果は一時しのぎであって、タイムリミットは一時間程度といったところか?

――完全に封鎖されちまったら、間違いなくあの世行きだな。

 視界もひどく悪いため、下手に動いてしまってはどの位置にいるのか分からなくなりそうだ。

――こんなところで野垂れ死ぬのもみっともねえし、イチカバチかでどっかに穴開けて――

 そこからしばらく移動したところで、「ジョセフさん」という女性の声が聞こえた気がして、煙の中を見回した。

「⁉」

 煙が風に流されるよう、ある一方へ吸い込まれているのが分かった。

「ジョセフさん、早く。ここから出られて下さい」

 視界の悪さから、どこから声を掛けているのかはっきりしなかったが、どうやら、百合亜が外から天井裏に穴を開けたか、出入口を見つけてそこを開けてくれたらしい。

「お嬢……?」

「早く! 今なら周囲に人はおりません」

「あ、ああ」

 鹿島に百合亜が捕まり、罠を仕掛けられているのではないかという疑いがなくもなかったが、なんにしても天井裏から出なくては話にならない。

 思い切ってジョセフは穴の方向へ向かうと、そちらに足を向け、ゆっくりと飛び降りた。

「……ぉごっ」

 屋根裏の高さからの落下ということで、それなりの衝撃を受けたジョセフはじ~~んと痺れる脚を押さえた。

「大丈夫ですか?」

 鹿島医院の正面玄関の左側面辺りで、周囲には確かに百合亜の姿しかない。

「――ぼけっとしてる場合じゃねえやな」

「―――⁉」

 ジョセフの言葉のあと、背後に複数の影が現れる。

 振り向くと、三匹の猟犬の姿があった。

「お利口さんなお犬様の方が、人間よりもよっぽど優秀かもな」

「ジョセフさん?」

 ひやりと冷たいものが背中を駆け巡った気がして、百合亜はジョセフを見た。

「まあ、それも嗅覚に置いて、ってことだ」

 ジョセフは何やら掌大の袋を取り出し、それをあさっての方に向かって投げると、その方向とは反対側の塀の方へ向かって走り出した。

 猟犬たちは混乱したようにぐるぐる走り回っていたが、やがてジョセフの放った袋の方に向かって駆け出していった。

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