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どうして私がラスボスなんだ【更新停止中】  作者: 月草ユズ
今日から私も悪役令嬢?
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【28】もう、大丈夫です

 


「ラーナ様っ!」


 金色の髪をなびかせ、凛としたアイスブルーの瞳を持つその人は、まっすぐにラーナを見て名前を呼んだ。



 その表情は少しばかり驚きを含んでいたが、その場にいた者たちの状態をちらりと見て察したようで。そのまま一直線にこちらへと駆け寄ってくる。


 ソアンは痛みを訴えてくる腕を無視しながら、ぼんやりとその人を見つめた。あぁ、この魔力……このコが例の。いやいや、ていうか何あのお嬢さん、国でも随一のご令嬢じゃなかったっけ?足速くね??


「アリス?!」


 オリオンが驚きの声を上げる。あ、やっぱりそうか。自分のとは違う 金色に輝く長い髪に、意志の強い凛としたアイスブルーの瞳。まったく、リオンといい彼女といい、この国のお貴族様は美男美女ばかりだ。その上あのお嬢さんに至ってはめちゃくちゃな魔力量だし……。

 とまあ ちょっぴり血を流しすぎて思考が鈍るソアンを余所に、シリアスな雰囲気は続いていく。


「……にげ……て……」


 虚ろな瞳のまま、そう口を動かすラーナ。抵抗しているのだろう、その表情は苦しげに歪められた。対してその右腕は標的をアリスへと変更したようで、ソアンからゆっくりと離れていく。


 そして、地面を抉ったあの光の光線が今度はアリスへと放たれた。しかし、あろうことか彼女は避けようとしなかった。ただまっすぐに向かってくるだけ。幸いにも光線はアリスへと当たることなく、そのすぐ横を過ぎ去った。


 そんな状況に絶句するソアンがついついオリオンを見てしまったのは仕方ないと思う。だって彼女は女の子で、しかも公爵令嬢だ。普通、こんな危ないことなどしない。

 しかし旧知の仲なのだろうリオンは慣れているのか、苦い顔をしながら盾の魔法を待機させていた。



「ラーナ様」


 いつの間にかラーナの目の前へと辿り着いたアリスは、思いきりラーナを抱きしめた。


「もう、大丈夫です。」


 ふわりと暖かな力がラーナを包んだ。ラーナの瞳にうっすらと光が戻る。


「ーーーありす……さま……っ」


 そしてラーナの身体から力が抜けた。アリスは抱きとめながらもその場に一緒に座り込む。


「ラーナっ!!!」


 そんな2人に駆け寄るその青年は、ラーナとよく似た色を持っていた。それに気づいた彼女は驚き目を丸くする。


「お……にい、さま……っ」



 どうしてーーーー。



 何故ここに。何故そんなにボロボロなのか。

 ぐるぐると鈍った思考が渦を巻く。無理もない。

 ラーナが最後に兄に会ったのは学院に入る前のこと。その時の凛々しさは影もなく弱り切っていた。


 アリスは兄妹の再会に目を細め、そっとラファエルにラーナを託した。強く抱きしめられるラーナの目からは大粒の涙が溢れ落ちた。



「お兄様だめです……私から離れてください……この力は周りを傷つけてしまうのです……!」


 ふと我にかえったラーナは抱きしめる兄の腕を力無く押し返し、離れようとする。


「ラウスに術をかけられたのか」


 忌々しげに呟くラファエルの瞳は、今までにないほど憎しみを帯びていた。その言葉に戸惑いつつも こくんと頷くラーナ。


「私が愚かだったのです……!未熟な私のせいでアリス様や殿下を……!」


「咎められるべきは私の方だ。ラウスの暴走を止められなかった私の責だ」


 そうして自分を責めだす兄妹。それに口を挟んだのはソアンであった。


「んーと?取り敢えずなんでかそのコの暴走は一先ずおさまったみたいだし?その黒幕っぽい人を止めたらいいんだよね?」


「「……。」」


 全くもってその通りである。こんなところで言い争っている場合ではない。


「その方の仰る通りです。ーーレン、ラーナ様を操っている魔法はあなたに解ける?」


 後方にいるレンに問いかけるアリス。


「ーー無理だな。おれではその娘を壊してしまう。術者をなんとかする方が手っ取り早いだろう。それまではこのままお前が抑えておけ」


「……わかったわ」


 アリスは先程ラーナを抱きしめた時、自身の魔力を流し、ラーナの魔力を一時的に抑えていたのだ。しかしそれもその場凌ぎでしかない。


「ラファエル様、ラーナ様をお願いします」


 アリスの言葉に頷くラファエル。それからアリスはソアンへと向き合った。


「追走部隊の方ですね。少し失礼します」


 断りつつも問答無用でソアンの赤く染まった左腕をそっと持ち上げるアリス。するとふわりと暖かな緑の光が傷を覆った。どくどくと流れていた血があっという間に止まり、その傷を小さくしていく。その様子にソアンはどこか他人事のように感心した。なんと鮮やかな魔法だろう。あんなに痛みを訴えていた左腕が嘘のように治っていく。


 しかし少女の額に汗が滲み、顔色が青白くなっていくのが分かったソアンは、素早く空いていた右手でアリスの手を掴んだ。ーーだめだ、このコは魔力を使いすぎている。


「もう、大丈夫だから、これ以上はーー」


 言わんとしていることが伝わったのか、アリスは回復魔法をやめると眉を下げて へなりと笑った。


 ーーあなたは優しい方ですね。


 ぽつりと呟いたアリスに目を丸くするソアン。それはこっちの台詞だ。自分は殿下の命令で動いているにすぎない。しかし彼女は違う。自らの意思で危険な救出劇に乗り出している。


「君はーーーー」


 ソアンが口を開いたところで、また大きな揺れが一行を襲った。ふらつくアリスを咄嗟に支えるソアン。


「ごめんなさい、怪我をされてるのに」


「大丈夫大丈夫。それよりこの揺れは一体……」


「この奥からだな。」


 真っ赤な瞳を細めて遠くを見るレン。確かに大きな魔力の渦を感じる。


「エミリア様……」


 ぽつりと呟くアリスの言葉に反応したのはラーナだった。


「まさかエミリア様もここに……っ?」


「確証はありませんが恐らく」


 そんな、と顔を更に青ざめさせるラーナ。また自分の所為だと考えているのだろう。そんな彼女を連れて行くのは危険か……でもあまり離れてしまうと抑えている魔法が発動してしまう。どうしたものか。


「ラーナ様はラファエル様とここで……「私も参ります!」」


 苦渋の決断を告げようとしたアリスの言葉を食い気味に遮ったのはラーナであった。先程までとは違う、強い意志を持った瞳がアリスを捉える。ここへきてラーナを操っていた魔法が、彼女の意思も相まって完全に抑え込まれたようだ。


「私は今ここで、逃げるわけには参りません」


「ラーナの言う通りです。身内の不始末は自分達で決着をつけます」


 操られ、閉じ込められ、憔悴している筈のこの兄妹は、それでも尚立ち上がろうとしていた。それを止めることはアリスにはできなかった。



「それでは……行きましょう」



久々の投稿です…!

いつもお読みくださりありがとうございます!!

オリオンが最近空気な件。。割と好きなキャラなんだけどなぁ。ソアンも捨てがたいけども。

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