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どうして私がラスボスなんだ【更新停止中】  作者: 月草ユズ
今日から私も悪役令嬢?
24/34

【24】平和的解決を試みようとしたんだよ?

 

「裏切りの……カルミア家」


 ザックから話を聞いたオリオンとソアン。


「まあこれも古い言い伝えだ。どうしてそう呼ばれるようになったのかも今となっては定かではない」


「ふーん。でももしそれが本当なら、今回の件もカルミア家が何らかの目的で事を起こしてるってこと?」


 ソアンの問いに対し、その可能性は否定できない、という顔をするザック。


「話を聞く限り、逆恨みって線も否めないけど。でもそれならどうして自分の一族のご令嬢まで攫ったのかな?共犯ってこと?」


 そこまで話が展開して初めて、オリオンが口を開く。


「ーーーーカルミア嬢は共犯というよりは、犯人に利用されたようだ。アリスの書き置きには《ラーナの回収》と書かれていた。おそらくはそういうことだろう」


 書き置きを発見した時にはすぐに言葉の意味に気づかなかったが、今ならば納得がいく。


「アリスって……あぁ、今追ってるレイウェル公爵令嬢のこと??」


 ソアンの言葉に頷きを返すオリオン。


「なるほどねぇ。自分とこのお嬢さん利用してうまーく回収して収めるつもりだったのか。なにそれ、めちゃくちゃあり得るじゃん」


 納得顔のソアンだが、すぐにまた あれ?と疑問を浮かべる。


「でもなんでえっと……カトレット嬢?まで攫ったのかね」


「ーーーーーまだ何かをするつもりなのだろう。それを防ぐために我々は動いている」


 ザック隊長は真剣な眼差しを森の先へと向けた。



「それじゃあ……まあそろそろ行きますかー。」


「ソアン?」


「これでも、有能な魔導師なんでね。ここまで対象が近くなればなんとかなるよ。リオン、その耳飾り貸して」


 ソアンの言葉に、オリオンは手に持っていた耳飾りを渡す。……方向性は合っているにしても、この先には複数の魔力があると言っていた。一体耳飾りの探索魔法なしでどうやって追うのだろうか。


「なるほど、この魔力がお嬢さんの魔力かぁ。やっぱり何かに遮られてる感じがするね。ということは……こっちだね」


 アイスブルーの瞳が進行方向よりやや東側を見つめた。


「そんなにはっきりわかるのか??」


「耳飾りの魔法が切れてるから少し薄いけど。これかなり長い間身につけてたみたいだから、お嬢さんの魔力が残ってる」


 言われてみると確かに、装飾品に興味を示さないアリスが珍しく幼い頃からつけていた記憶がある。


「ーーーーそれで、お嬢さんがいる方向はこっちなわけだけど……たぶん攫われた方はそっちじゃない。このまま森を抜けた先にある魔力の方だと思う」


 ーーどうする??とアイスブルーの瞳がどこか試すようにオリオンをみた。


「今回の目的は攫われたご令嬢の保護だ。もしアリスなしに追えるのであればそちらを優先する。それで良いでしょうか、ザック隊長」


 オリオンの真っ直ぐな瞳を見て頷くザック。その様子にソアンは少しばかり面白そうに目を細めた。



 ーーーそんな時だった。


「!」


 突如として放たれた攻撃にいち早く反応したソアンとオリオンは、瞬時に盾魔法でそれを弾いた。


「突然何事……って弓矢ぁ??」


「ただの弓矢だな。魔法の痕跡はない」


「ふーん。あぁだから感知できなかったのか」


 自分達の盾に弾かれた矢の残骸をみて分析する二人。そんな様子にザック隊長は呆れた顔をする。


「……お前達、そんな呑気に話している場合か」



「そこの者達!何者だ!」


 弓矢が弾かれたのを見てざわめきつつ、何人かの武装した兵士が草むらから現れた。


「こいつら今弓矢を弾いたぞ」


「ではこの中の誰かが主様の仰っていた……?」


「いや、しかし先程のような眩い光ではないからな……」


 ざわざわ。放った弓矢が弾かれたことを奇妙に思った彼らはこっちまで丸聞こえで相談しだした。


「隊長、向こうも呑気に話してるので問題ないと思いますー」


「……」


 追い討ちをかける少々呑気な状況に頭を抱えるザック。そんな彼を半ば同情するように眺めるオリオンであった。


「とまあ冗談は置いておいて……僕ら決して怪しい者ではないんですー」


 ひらひらと手を振って何も持っていないことを示すソアン。その様子に更にざわめく兵士たち。


「た……確かに何も持っていないようだな……」


 しかし先程のは一体?という一人の呟きを全無視したソアンは困ったような表情を浮かべて言った。


「そうそう。僕ら旅をしてるんだけど、ちょっと迷っちゃって。おにーさんたちは??」


 ちょっと迷っちゃったで済まないくらい侵入している自覚があるオリオンは、流石にそれではうまくいかないだろうと内心つっこんだーーーのだが。


「なんだ、そうだったのか。それは災難であったな。我らは主様の為探し人を追っていたのだ」


 ……なんでだ。(おそらく)敵ながら、もう少し疑えと言いたくなるオリオンを余所に、彼らの会話は続く。


「へえ、どんな人??僕ら見たかな?」


「それがよくは知らないのだ。眩い光を纏う人物だと、そう聞いたのだが……」


「そっかあ、それなら流石に僕らもわかるよね。でも見ていないからもっと奥の方じゃないかな??」


「そうかもしれんな。よし、もう少し先を見てみよう。あぁ、先程はすまなかったな。この先は領主様のお屋敷だからここから東へ行けば街にも出るだろう」


「ほんと?ありがとー」


 にこっと笑うソアンに気を良くした兵士は何事もなかったかのように踵を返す。かと思いきや。


「おい、ちょっと待て。そこの者、そのフードをとって見せろ」


 黙って見ていた一人の兵士が低い声で促す。一瞬にしてその場が静まり返った。


「隊長さんよ、あまりに人が良すぎやしないかい」


 兵士というより破落戸の方がしっくりくるその男の言葉に警戒する一同。


「明らかに怪しい身なりの連中。旅人にしちゃあ装いが不十分だ。そしてこの時期このタイミング。我らの計画を阻む者と考えるのが普通だろう」


 そう言ってギロリとこちらを睨みつける男にソアンはぼそりと呟いた。


「ーーーなぁんだ、1人はまともな人がいたのか」


 そうして にこりと笑うとフードを外した。真っ白な髪がさらりと顔にかかる。その色を見た男は驚きの表情を浮かべる。


「その色……お前まさか…………」


 何か言いたげな男に、ソアンは少しばかり殺気を放ち黙らせる。そして面倒そうな顔をすると、左手を兵士達に向けた。


「ちょっと黙ってて。」


 言葉と同時に突風が吹き荒れ、兵士たちを包む。その直後ばたばたと倒れていく彼らを見ながら、ソアンはふうと息をつく。あらかた片付くと腕を下ろし、疲れたと肩を回し始めた。


「お前……それが出来るなら最初からやれば良かっただろうに……」


 半ば呆れ気味なザック隊長の言葉に、ソアンはくるりと身体を向けると面白くなさそうに言った。


「いやほら、平和的解決を試みようとしたんだよ?これでも」


「出来てないけどな」


 ぴしゃりと言うザックに顔を晒すソアン。そんな彼らにオリオンは疑問を口にする。


「今のは一体……?彼らはどうなったんだ?」


「んー、ちょっと眠ってもらっただけ。半日くらい目が覚めないと思うけど」


 にこーと笑って言うソアンの目はあまり笑っていなかった。



「さて、結構時間くっちゃったし折角だからこの人達の服拝借して領主とやらの屋敷でも目指しますか」


 今度こそ楽しげに笑うソアンを筆頭に、一行は領主の屋敷を目指すこととした。


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