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どうして私がラスボスなんだ【更新停止中】  作者: 月草ユズ
今日から私も悪役令嬢?
22/34

【22】あなたは一体だれですか

 

 追走部隊はオリオンの持つ手掛かりを元に西へ西へと移動していた。しかしその間、いつもはいない場所でレベルの高い魔物達と遭遇してしまう。

 少数精鋭の魔導師達が敵を撃破しつつも戦況は厳しい状況にあった。しかし一刻も早く向かわねばならないということで、オリオンを含めた3人を先へと進ませ部隊は分断を余儀なくされた。


「?!」


「どうしたのオニーサ……んじゃなくてリオン?」


 驚き手元を見つめるリオンの異変に いち早く気がつくソアン。


「それ今追ってるご令嬢の……手掛かりの耳飾りだよね」


「あぁ。これに探索魔法をかけて追跡していたんだがーーーーーたった今その反応が消えた」


 リオンの言葉にソアンが眉を寄せる。


「それって……お嬢さんの身に何かあったってこと?」


「あるいは何らかの作用……妨害されているか、だな」


「……どちらにしても、いい知らせではないね」


 2人の様子がおかしいことに気づいた追走部隊の隊長が近寄って来た。


「ソアン、アスター殿、どうかしたか」


「おじさ……じゃなかったザック隊長、ちょっと緊急事態。お嬢さんの髪飾りの反応消えちゃったって」


「なに?!」


 ソアンの言いかけた失礼な呼び方に気づく間も無く驚きの声をあげるザック。普段ならここで蹴られている。(ソアン談)


「まあでも、ここもう奴さんの縄張りすぐそこみたいだし、追えないわけじゃない。

 ーーーお嬢さんたちの安否は心配だけどね」


 目を細めて行先を見るソアン。


「あれがなくて追えるのか?」


「たぶんね。方向は合ってる。この先に複数の魔力を感じるよ。あぁそれと、すぐその辺りの森から魔除け魔法が張られてるから、探索魔法も意味を成さなかったと思う」


「この先というと……カルミア領との境か」


 オリオンが頭の中で地図を描いて呟くと、ソアンがあれ?と声をあげた。


「カルミアって……今回追っているご令嬢の中にもいたよね?


 ーーーたしかラーナ・フォン・カルミア伯爵令嬢……?」


 ソアンが告げたその名に眉を寄せるザック。


「ーーーこう言ってはなんだが……カルミア家が絡んでいるとしたら事は厄介かもしれんな」


 その言葉に今度は2人が不思議そうな顔をする。


「なに、貴族界に伝わる古い言い伝えだ。2人はまだ若いから知らないだろうがな」


「それは一体どのような内容なのですか」


 苦い顔をするザックに対し冷静に問うオリオン。

 ザックは幾分考えた後、口を開いた。



「ーーーーーーーー」




 ◆





「一人で百面相をして……可笑しな娘だな」



 エミリアが顔を上げた先に見えたのは、真っ赤な瞳だった。アッシュグレーの長い髪を横でゆるく束ねた見知らぬ青年は、近くにある椅子に腰掛け不思議そうな顔でエミリアを見ている。え、いつからいたのこの人……?!


「先程からここにおったが。気づいていなかったのか」


「……?!」


 おかしい。心の声と会話が成立している。


「え……っと、私いま口に出してましたっけ……?」


「口にせずとも全面的に顔に出ておるわ」


「そ、そそそんなはずは……!アリス様に認めていただこうと訓練しましたのよ……!」


「知らん。少なくとも今はその成果がないようだな」


 なんてことだ……。というか なにこの人。見た目好青年のわりに意地悪な人だ。突然のことに相手のペースにのまれてしまった。いかんいかん。



「ーーーあなたは一体だれですか。ここはどこです」


 エミリアはその赤い瞳をしっかりと見て言う。その顔を見てふと目を細める青年。



「ーーーふむ。我の名は……ロウレン。ここはカルミア家当主の別邸だ」


 その言葉にゆっくりと目を見開くエミリア。


「カルミア……?ってたしか……ラーナ様のお家……?!」


 どうしてそんなところに……?と頭にハテナを浮かべるエミリア。


「お主……さては阿呆(あほう)だな」


 呆れた顔でエミリアを見ると彼は言葉を続ける。


「己の置かれている状況を鑑みればわかること。現に先程は理解していたではないか」


「だってその、さっきは目が覚めて知らないところで……腕も縛られているし。誘拐かと思ったけれど」


 ここが青年の言う通りカルミア家だというのなら話は変わってくる。きっと何か事情があるのだろう。


「それが阿呆だというのだ」


 はぁと溜息をつくロウレン。いやちょっと待て、だからどうしてさっきから考えていることが伝わってるんだ。


「お主は理解しているだろう。否定したところで事実は変わらん」


「っ」


 ロウレンに言われていることが本当は分かっているのか、エミリアは何も返せない。


「そ、そういうあなたは一体何者なのですか」


 苦し紛れだが、なんとか口を開いたエミリアは気になっていた点をつっこんだ。この男もだいぶ怪しいのは確かだ。誘拐犯という可能性だってある。


「さっきから言っておろう。ロウレンだと」


 思いの外頭が悪いのか?とぼやく青年。失礼な。


「あなたの名前はわかりました……!

 そうではなく、あなたは私をここへ連れてきた人なのか、そうでないのなら どうしてここにいるのか聞いているのです!」


 頬を膨らませ言い返すエミリアにふと面白そうに笑うロウレン。


「先程の言葉にそれほどの意味が込められていたとはな」


「と……とにかく、答えてください!!」




「ーーーーそれを答える道理が我にあるのか?」



 ふと笑うのをやめると、目を細めてエミリアを見た。

 その言葉にエミリアは一瞬にして押し黙ると目を閉じ首を振った。


「ーーーありませんわ。私が知りたかっただけですもの」


 しゅんとして大人しくなったエミリアに、再び面白そうな顔を浮かべるロウレン。


「冗談だ。お主は本当に顔がころころ変わるな」


 そんなロウレンの様子にきょとんとするエミリア。一体なんだというのだ。すると彼はふわりとエミリアのそばに立った。


「ここに他所の人間が来るのは珍しいからな。気まぐれだ、付き合ってやろう」


 なんだかよく分からないが、教えてくれる気になったらしい。エミリアは真面目な顔をすると続きを待った。


「ーーーひとつ、お主をここへ連れて来たのは我ではない。ふたつ、我がここにいるのは本意ではない。しかし外に出ることもできぬ。みっつ、お主をここへ連れて来たのはこの家の主の手の者だ。お主はその者の陰謀に巻き込まれた」


「それって……」


 ロウレンから与えられた情報に頭を悩ませるエミリア。やはり自分は拐われて来たのだ。そしておそらくは彼もーーー。



「私はどうにかしてここを出なければなりません。ロウレンさん、あなたも協力してくれませんか」


 エミリアがロウレンに手を差し伸ばした。





 ーーーつもりだったのだが。


「ああもうっ私ったら腕を縛られているんでした……!」


 折角良さげな感じだったのに!台無しだ!

 そんなエミリアを見たロウレンは一瞬きょとんとした後、堪えきれず笑った。


「お主やはり阿呆だな」


「笑ってないで これなんとか出来ないんですか……!」


「できんな」


 即答!!諦めるの早いな!!

 どうしようこのままでは逃げることもままならない。


 一人悶々と悩んでいると、突然ロウレンが扉の方に目をやった。今までになく鋭い視線を向ける彼を不思議に思い、エミリアは首をかしげる。



「ーーーーすまない、我はお主の力になれぬようだ」


「え……?」


「これを持て。少しは役に立つであろう」


 ふわりと自らの首にかけていた首飾りをエミリアにかける。よく理解できない彼女をよそに表情を険しくするロウレン。


 そして部屋の扉が開かれると同時に、彼の姿はエミリアの目の前から霧のように消えた。



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