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どうして私がラスボスなんだ【更新停止中】  作者: 月草ユズ
今日から私も悪役令嬢?
20/34

【20】だれかいるの?

 


 ーーーその頃、問題のアリスはというと。



「オリオン……気づいてくれたかしら。」


 途中で馬を調達し、森の中を駆け抜けているところだった。外用の服とはいえ馬に乗るべくして作られたものではない。よって、走りづらい。が、しのごの言っている場合ではなかったアリスは馬に申し訳なく思いながらも そのまま走り続けていた。


 ふと思い返すのは出る前のこと。我ながら適当な書き置きを残したものである。オリオンのことだ、色々と汲み取ってくれるだろう。この件が解決したら何かご馳走してあげよう。うん。


「魔法の追跡は順調だし……ってあれ、止まった?」


 あれからエミリアの髪飾りはアリスを導き続けていたのだが、それがここへきて突然動きを止めた。馬の足を止め、確認してみるも魔力が尽きた感じではない。しかしまだ森の中だ。


 アリスが不思議に思っていると、突然馬が落ち着きをなくし騒ぎ始めた。


「わっ……まって、おちついて……!」


 急にどうしたのかとアリスが馬を宥めようとする。しかしそのまま馬はアリスを振り落とし、駆け出してしまう。咄嗟に受け身なるものを取ってみるも、呆気なく背中を打ち付けた。痛い。草むらだったのがまだよかった。いたいけど。

 しばらく悶絶していると、何かが近くにいる気を感じた。



「ーーーだれかいるの?」


 呼びかけに応える声はない。オリオンたちにしては早すぎるし馬の様子もおかしい。敵さんだろうか。……そうなるとちょっとマズイ。時間がないからと突っ走ってきたがその後の救出方法はまだノープランだ。



 《ーーーーナーーオイーー》



「ーーーえ?」


 よくは聞こえなかったが、何かのノイズが聞こえた気がした。アリスが音の方に顔を向けると、そう遠くない距離に黒い影が見えた。



 真っ黒な影に浮かぶーーー赤い、目。


 ソレが何かなどわからないが、人ではないことは確かである。叫び声など出てこなかった。咄嗟に周囲を見渡し、武器になりそうなものを探す。……って、あるじゃん武器。持ってたよ私。



 ーーここは魔力のある世界だ。


 アリスは手を前に向けてイメージをする。黒い影だから……光?とりあえず盾の魔法を創り出す。相手の強さもどれくらい盾がもつのかもよく分からない。けれどこんなところで足止めをくらっている訳にはいかないのだ。


「そこを退いてくださる?エミリア様とラーナ様が待っているの」


 って思わず話しかけてしまったが言葉は通じないか。人じゃなさそうだし。なんなんだ一体……。



 《ーーーターーーミツケーータ》



「……!!」


 喋った……!?なんか言って…………え、みつけた??

 なんか聞きとれてしまったその声のような音に驚いていると、後から内容がじわじわ迫ってきた。みつけたってなに、みつけたって。



「え……っと、…………みつかった?」



 いやそうじゃなくて。なんとなくマズそうな雰囲気に、アリスはじりじりと後退しつつ逃げ道を探す。

 手掛かりにしていた髪飾りも反応ないし、エミリアの様子が気がかりだ。とりあえずこいつを撒いてから考えよう。



 アリスは盾の魔法を解くと、力一杯光の矢を放った。




 ◆




「この反応はーーー」



「主様、ヤツが現れました!

 ーーー?!これは一体……」


 主様と呼ばれた男は少し驚いたような顔をし、目の前の丸い珠を眺めていた。


「その光はなんです……?あの娘ではなかったのですか……?!」


「ーーーこちらも現れたのだ。あの者も力持つ者だが、それ以上が釣れたようだ」


 そう言って面白そうな顔をする男は、ゆるりと立ち上がると窓の外を眺めた。少し離れた位置に見える、眩い光の道筋。余韻が残るほどの魔法。余程魔力が高いとみえる。やはりあそこにいるのが()()だ。


「では、あそこにいるのが言い伝えに聞く……」


「ーーーまだ確証は持てないがな。その為にまいたエサだ」


「しかしこれで我らの雪辱も晴らせるというもの。この日をどんなに待ちわびたことか……これも主様のお陰です」


 悔しげな表情の側近に真剣な眼差しを向ける男。

 ここにいる者の想いはみな同じだ。この時をどんなに待ったことだろう。はやる気持ちを抑え、指示を出す。


「総員、あの光の跡を追え。そして必ずや彼の者を私の元へ連れてこい。くれぐれも死なせるでないぞ」


 ーーまあ……この調子ではあちらから来るだろうがな。


「はっ!」


 命令を下すと男はまた面白そうに丸い珠に映る光を眺めた。そこへ従者の男が駆け込んで来る。



「ーーー主様、先に捕らえた娘が目を覚ましました」


「そうか。本物はあちらが有力だが、こちらも候補者の1人……確かめておくとするか」


 ふと笑うとゆるりと立ち上がり部屋を後にする。

 向かうはもう1人の候補者のもと。



 ◆



「ここはーーーー」



 頭がぼんやりとする。確か自分は医務室で寝ていたはず……?しかしここは違うようだ。簡素な室内は見覚えのある景色とは だいぶ違った。

 ズキリと痛む頭を押さえようとしたが上手く腕が動かず、そのままぼやっと辺りを見渡すエミリア。

 目を覚ます前のことを考える。



「確か殿下をお救いした後……アリス様が倒れてしまわれて……それから私もなんだか熱っぽくて……?」


 そうだ、不甲斐ないことに熱を出して寝込んでしまっていたのだ。先生は魔力がどうのと言っていたけど……。でもそれがどうして景色が変わっているのだろうか。腕も思うように動かないし一体なんだというんだーーー



「って……私腕を縛られているの?!」


 今更気づいたエミリアは思わず叫んだ。あまりのことに驚きが隠せない。別段隠す必要もないのだが。

 エミリアの腕はしっかりと縄でぐるぐる巻きにされていた。



「えっと…………これはもしかして誘拐とかいう状況なのかしら……?」



 ーーーいや、何故に私。そりゃあアリス様とか殿下とかなら分かるけど!いや駄目だけどね!


 エミリアは学院では一般的な、いやそれより少ない一般人だ。お貴族様などと一緒にされることなど烏滸がましい。え?自分を卑下しすぎだって?だって普通に平凡に生きてきた自分が誘拐なんぞされると思うだろうか。それほどまでの異常事態に驚いているのだ。


 別段容姿端麗でもなければ身分が滅茶苦茶良いわけでもない。実はどこかのお姫様で……なんてこともないーーーはず。


 あぁでも間違いなくこの状況は……。



「またアリス様にご迷惑をお掛けしてしまいましたわ……」


 一人しょぼくれるエミリア。折角アリスに認めてもらおうと……頼ってもらおうと奮闘してきたのに。なんということか。


 物凄く頭の切れる彼女のことだ。きっと今頃この状況を察知して何らかの手を打ってくれていることだろう。これは自惚れなどではなく、確信である。

 そしておそらくこの状況は殿下をも悩ませてしまっているに違いない。


 自分がこの学院に来てから関わってきた人達はそういう人なのだ。誰であろうと放っておけない。


 普通誘拐でもされれば恐ろしさに震えることだろうが、このエミリア・カトレットという少女は少し……いやだいぶ普通とは違っていた。



「一人で百面相をして……可笑しな娘だな」



「?!」


 エミリアが顔を上げると、見知らぬ男がそこにいた。


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