【11】今は休戦協定中なの
ーーーと、言ってみたものの。
悪役令嬢って具体的に何をするのかしら。……え?ラスボスじゃないのかって?そこはあれだ、ラスボスは最後まで出番がないのでそれまで兼任だ。
とまあ冗談は置いておいて……
いろいろ思い返そう。前世のゲーム達の彼のご令嬢方はどんなだっただろうか。
ふむ、なんか何かにつけて主人公にちょっかいかけるかまちょだった気がする。でもそれじゃあ今回の敵には効果的ではないだろう。あとは……そう、徹底的に嫌がらせしたり陥れたりしていた。うん、徹底的に……ね。
「やっぱりそれかしら。」
「??」
アリリエスの意味深な呟きに頭をかしげる今回限定の相棒エミリア。何を言っているかよく分からなかったが、アリスが満足気に微笑んだので彼女もつられて微笑んだ。この両者の微笑みの意味には天と地ほどの差があるが、一見すると可憐な花園に見える。
「エミリア様、今回の件……何としても犯人を見つけますわよ」
「はいっアリス様!」
◆
「あれ、カトレット嬢のこと避けてたんじゃなかったのか?」
不思議そうに聞いて来るのは、腐れ縁もとい幼馴染のオリオン。先日悶々と悩んでいたのを知っているのは彼くらいだ。アリス達が最近一緒に魔導師コースを受講しているのを何度も見かけたので不思議に思ったのだろう。
「あぁ、今は休戦協定中なの」
にこりと笑って答えるアリス。休戦協定って。そんなに楽しそうに言うことか。
「そ……そうか。それより最近は魔法の暴発に巻き込まれていないのか?」
深く触れない方が賢明だと思ったのだろう。オリオンは話題をずらしてきた。勘のいいことだ。
「そうなのよ……折角ーーーいえ、何でもないわ」
「なんだ??ーーーまさか自分達で対処でもしようとか考えてないよな」
ジト目で見てくるこの心配性な幼馴染にアリスは軽く肩をすくめた。
「そんな大袈裟な事はしないけれど。ちょっと犯人が分かるようにするだけよ」
「犯人が分かるようにって、一体どうやって……」
「あら、それは秘密よ。敵を欺くならまずは味方からと言うじゃない。情報はできるだけ流したくないの」
ごめんなさい、と困ったように言うアリスに、何も言えなくなるオリオン。そんな風に言われてしまえば仕方がない。
「ーーーアリスの力は確かに強い……でも危ない事には変わらないんだ。あんまり無茶するなよ」
少々呆れたようにしながらも、心配そうな瞳で言うオリオンに、アリスはまた困ったように微笑んだ。まあそう心配してくれるな、そんな調子では将来禿げてしまうよ。
ーーその原因を作っている大半が自分の所為だとはあまり考えないアリスであった。
さて、幼馴染をかわしたところで、本題に入るとする。
オリオンが言っていたように、最近急に例の暴走事件に巻き込まれなくなったのだ。折角エミリアと準備をしていたというのに、だ。まあ準備といっても彼女が反対魔法の練習をするだけで、アリスは本を読むくらいで実践は何もしていなかったのだが。
「……勘付かれたのかしら?」
でもどこから?相手にはこちらの内情が筒抜けだとでもいうのか。だとすると逆に敵は絞れるわけだが……。
「アリス?」
考え込んでいるとオリオン(まだいた)に名を呼ばれ顔を上げる。
「あぁいえ、あなたがさっき気にしていたように、最近魔法の暴走事件が起きてないのよ」
「ふーん。あれだけ集中的に起こっていたものが突然終わるというのは不自然だな……。先生が解決したのなら報告をくれるだろうし。
あとはアリスとカトレット嬢が何かしようとしているのを察知した可能性があるってことか」
オリオンは基本頭の回転が早い。流石は公爵家のご子息だ。……たまに若干勘違いもするが。
「ええ。でもあなたにさえ言わないくらいだから、何をしようとしているかなんて誰にも伝わらない筈なのだけど……」
「ーーーアリスがそうでも、カトレット嬢が誰かに話してしまったってことはないのか??」
エミリアが……ね。彼女には悪いが考えられなくはない。良くも悪くも真っ直ぐな性格の主人公は、知らずの間に情報を引き出されている可能性がある。
とすると彼女が警戒せず、そこそこの話ができる人物ーーー。
「そうね、ちょっと調べてみるわ」
アリスは今回のこの事件に誰が関わっているのか何となくだが想像はついていた。ただ……完全に白か黒かが分からないでいた。あの人がこの件に関わっている原因も謎のままだ。いっそ強行突破してみようか、そんなことを考えていた矢先だった。
「アリス様!!!」
エミリアが物凄い剣幕で駆け寄って来た。最近折角お行儀が良くなってきたばかりだというのに。一体何事だろうか。
「アリス様っ……たっ大変っ、あのっ」
きょとんとするアリスを前にエミリアは混乱しているのか言葉を紡げないでいる。そんな彼女に内心苦笑すると、優しく肩に触れた。
「エミリア様、落ち着いてください。さあ、ゆっくり息を吐いて」
エミリアの呼吸に合わせて、肩に触れた手から淡い光が彼女を包む。回復魔法をこっそり使っていると落ち着いてきたのか、今度はしっかりとアリスを見た。
「アリス様、レオン様が…………」
「レオン様??」
そういえば最近講義で見かけない第二王子。その名前を口に出し言い淀むエミリア。表情は少し青ざめていた。吉報でないことは確かだ。
「レオン様がお倒れになりましたっ」
「えーーー?」




