要塞
森から戻った俺たちはイリスの家の構造について話し合っていた。
「なあ、オズ。イリスの家って俺たちみたいな簡単な家でいいと思うか?」
「ふむ、そうだな。イリスは鈍くて戦えないからな……その辺も考えた方がよいか」
「そういうのは普通私がいないところで言わないかしら?それにポンコツの貴方たちに言われたくはないわよ」
イリスが呆れた目で見てくるが、やはり家の構造は俺たちと変えた方がいいよな。
モンスターが近付いてきたら俺たちは気配で分かるが、イリスはわからない。
1番最初にやられるのは間違いなくイリスからだからな。
「そうなると今切ってきた木の量で足りるかどうか危ういな」
「ところで貴方たちはどちらか風魔法は使えないのかしら?」
「我は魔法が苦手でな。身体強化しか使えないのだ」
「俺は上級までなら使えるぞ」
「ならなぜ風魔法ではなく斧で木を切るの?」
ん?イリスは何を言っているんだ。
「木こりといえば斧だろう?斧を振るのがかっこいいからに決まっているだろう」
「うむ、我も身体強化で木を倒せなくはないが斧を振りたいのだ!」
「聞いた私が馬鹿だったわ」
安心してくれ、風魔法でないと切れない場合はちゃんと使うから。
それにしてもまずは隠し扉とかが必要だろうか?迎撃システムとして矢が飛び出すトラップや落とし穴も作るとして、防犯のために結界の魔法陣も仕込んでおくべきか。
イリスには申し訳ないのだが、やることはたくさんあっても作業は余裕がある時にしか出来ない。この世界のルール第2条だからな。
構図が決まった俺たちは家を造り始めた。
その間イリスは聖女の祈りで野菜を増やしつつ、畑の拡張をお願いしてある。きっと聖女に治癒ではなく畑の手伝いをお願いしたのは俺が初めてだろう。
聖女の初めてを俺が貰ったのである。大事なことだからもう一度言おう。
「イリスの初めては俺が貰った!」
「何を馬鹿なこと言ってるのよ。余計なことを言っている暇があるのなら手を動かしなさい!」
後ろからスパーン!と頭を叩かれたのだが、元勇者の俺が避けきれなかっただと?
「さては……お主なかなかやるな?」
「トマトを収穫してもあげないわよ」
「すみませんでした」
本当にそれだけは勘弁してくれ。
今度はトマトが欲しくて号泣する羽目になるぞ。
俺はふざけるのを辞めて、作業を再開した。
オズには木で家具を作って貰っている。ベッドに使えそうな藁などが何もないから木の寝台だが、きっと心優しい聖女は堅くても許してくれる。
許してくれなかった時はそうだな……男2人で下敷きにでもなるしかないか。
決して、他に目的がある訳ではない。善意からの提案である。
「ふふん、ふふーん♪」
「また変なことを考えていそうね」
「勇斗は少し変わり者だからな」
「あなたには言われたくないと思うわよ?」
「……む?」
こうして俺たちの家造りはこだわり過ぎて、また2週間近くかかってしまったのだった。
◆◆◆
「俺、この世界に来て1ヶ月以上経つのに家しか造っていない件について」
「む、それはよくないな。ようやくイリスの家も完成したのだ。今日は何もしない日とやらでいいのではないか?」
あれから2週間近くが経ち、イリスの家が完成してお披露目した日はてっきり喜ばれるかと思っていたのだが、正直イリスの反応はイマイチだった。
「私はどこかのダンジョンか要塞にでも来たのかしら?」
そう呟いたイリスは俺たちが考えた落とし穴やトラップの撤去と、オズがイスに施した玉座みたいな模様やテーブル、寝台を掘った模様は派手過ぎてもっと落ち着いたのがいいと言われてしまい、結局オズの家の家具と交換するという形になった。
唯一許されたのは結界の魔法陣だけだった、解せぬ。
という出来事が昨日あったのだが、今日は何もしたくない。
俺はオズに言われた通り今日1日は何もしない日にしようと決めたのだった。




